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お疲れのようでしたが、とにかくも発声練習を軽くやって、アーンの「我が詩に翼ありせば」から練習を始めました。
前回より歌いこみが進んで、テンポ感の変遷や発音など、安定した演奏になっていました。
最期の最期のフレーズだけ、中低音の音程が上ずり気味なのを、何度も練習となりました。

これは、そこだけの問題ではなく、全体的な発声の問題ではないか?と思っています。
やはり彼女の課題は、声をおでこか鼻根に集めるように意識することが強過ぎ、結果的に喉を締めて緊張が強過ぎるのだと考えます。

まずは、この緊張をもっと緩めて、喉を脱力した、いわば悪く云えば響きの落ちた感じまで戻した方が良いと思います。
そのような矯正の中から、良い意味での声帯全体を使った、良く響く声が再生されると考えています。

レッスンでも話しましたが、あたかもギターのコマ留めの近くをつま弾くような感じになっていること。
もっと、共鳴穴に近いところでつま弾いた方が、弦の良い振動が得られて、楽に良い声、良く響く声が出る、というようなイメージです。

そのためには、声をおでこや鼻根辺りではなく、喉の下、鎖骨当りやむしろ胸辺りに軽く当てる感じでちょうど良くなると思います。
これは誰でも、という話ではなく、彼女のように高く前に集めることに偏って、喉が締まるタイプの人に有効ということ。

その後、同じくアーンの「5月」
これも、とても良い声できっちり歌えていました。
疲れを感じさせない声でした。
ただやはり惜しいのは、喉が締まって細くなってしまうことです。
これは発声の課題ですから、少しずつ治して行ければ良いですね。

あと、この曲は特にですが、ポルタメントの練習をしました。
ポルタメントを付けることで、いかにも世紀末の浮世絵などに影響を受けた、フランスのアート風な感じがレトロな味を醸し出します。
要所要所、練習をしましたが、難しいですね。
毎回毎回、意識して練習して見て下さい。

最後に信時潔の「我が手の花」を練習。
ちょっと「やばい」感じがあるこの曲の美について語りました。
今の日本の諸問題を想起させする、日本人の良い意味での生真面目さのようなもの、痛々しさに通じるエスプリを感じさせます。

大変良く歌えていました。
1番、2番、3番の違いが、これほど明快に積極的に語られるとは思いませんでした。
あとは、要所での日本語の発音、特に子音がもっとはっきりすると、歌詞がもっと伝わるでしょう。
特に「うすくれないを頬に残し」の「頬」は2音節ですが1音分なので工夫が必要です。
しかし、他の箇所も含めて、歌詞が良く判る歌になっていました。