UM
発声練習をすると、以前のように換声点の喉の突っ張るような響きが気になりました。
ファルセット的な響きと胸声の中間のような、いわば喉っぽい響きです。
舌が奥に入ろうとしているのではないか?と思い、舌先に少し力を入れるように、あるいは舌先を少しだけ前に出すようにしてもらいました。
これは、たとえば、ドミソのフレーズであれば、最高音のアタック直前に、この意識を持つことです。
このことで、舌が奥に入らないで、発声するため、響きが滑らかになります。
これは効果がありました。
イタリア古典歌曲集から、Tu lo saiから始めました。
この曲では、出だしの2点FでのTuと言う声が、少し力んでしまいます。
声の出し始めのきっかけは、子音のTの発音ということを決めます。
その上で、口はほとんど開かない口を突き出したUの母音にするため、響きを鼻腔に入れるように発声します。
鼻腔発声というと、鼻声みたいですが、そうではなく、母音発声の時に使う場所を、日本語の発音と違えることが目的です。
このことで、喉を締める発声から解放されるようになります。
例えば、Tu lo saiを日本語に置き換えて、カタカナにすると、トゥ、ロ、サーイですね。
発音してみると判りますが、母音ごとに下顎を動かしてしまうはずです。
これは、日本語発音時のいわば自然な動きなのです。
しかし、声楽でメロディの響きを滑らかに歌ったり、母音の響いを母音の違いで際立たせないようにするためには、
これが障害になります。
これを治すために、下顎を動かさないで発音・発声する練習をします。
例えば、Tu lo saiであれば、最初に口をとがらすようにUの母音だとすると、後のLo とSaiは、上唇を上に上げるようにするだけで、
母音の形が聞こえてきます、
下顎は全く動かす必要はありません。
ただこのような発声をする場合に、子音の処理に工夫が必要です。
舌先を使う場所を、前ではなくかなり奥を意識しないと、出来ないと思います。
例えば、Tuという発音のTにしても、口先ではなく、舌先が触りだす場所は、かなり奥になるはずです。
このことで、子音の処理と軟口蓋の動きとが連動するわけです。
Sento nel coreでは、上記の鼻腔共鳴の練習の一環として、子音発音を利用することを推し進めました。
SentoのS、CertoのCeなど、しっかり出す必要と共に、出す場所が大事です。
最後にLascia ch’io piangaを練習しました。
当初練習したころよりも、チェンジ領域の発声に無理がなくなりましたが、まだ力みが残っています。
恐らく本人は、もっと楽に出来るようになりたいのでしょうが、最初から楽には行かないです。
もし楽にやりたいのであれば、ファルセットを覚えると良いですが、現状では発声そのものが力んで強く出してしまう癖があるので
これはもう慣れるばかりでしょう。
ひたすら弱く弱く、軽くしてファルセットが出来るように練習することで、いつの間にか、力まない楽な発声になっているはずです。
SM
プッチーニのマノン・レスコーから「この柔らかなレースの中に」を練習しました。
当初、発声練習が安定した中低音発声でしたが、2点Cから上の声がやや太いのが気になっていましたが、これがやはり高音のピッチに影響を与えていました。
出だしInquelle の発音、quelleのところが不明瞭になる点、くれぐれも注意してください。
オーディションレベルでは、発音も厳しく精査されるでしょう。特に有名なアリアなので。
また、この出だしからa una carezza, voluttuosaのところまでがとても重要です。
ここまでのリズム感、ブレスの場所、などは徹底して今日練習したことを守ってさらっておいてください。
音程の良いメッザヴォーチェの出だしと、クレッシェンド、そしてスビートピアノというダイナミックの変化が、このアリアの感情を表現しています。
歌手が役柄のキャラクターになり変わって意味を出そうとするのではなく、書かれている音を声で表わせば、結果的に登場人物の感情が表現される、と考えてください。
楽譜通り、あるいは正しいリズム感や正しいメロディを守ることは、そういう意味があると理解してください。
後半の高音の処理も、徹底して丁寧にピッチを合わせることを訓練して下さい。
力まないで、頭声だけの発声でピッチの良い発声が出来ることを目標にしてください。
あとは本番で、間違って力んでしまったとしても、実際は自然に下の声とミックスしたバランスの良い高音発声になる、と思えば良いのです。
FY
少し気になっていた中低音の発声をもう一度、さらい直しました。
気になっていたとはいっても、悪いというほどのこともないのですが、将来を見据えると今のうちにという感じでしょうか。
彼女の発声の口元を見ていると、下顎を微妙に下にずらすように下げて固定して歌います。
この固定している様が、素朴な喉の使い方としても硬いかな~?と言う気がします。
微妙に声帯の開いた響きで、良く云えば喉が開いた力まない響き、イタリア的な嗜好でいうとメッザヴォーチェ的な感じでしょうか。
これが高音発声に良い影響を与えるのは、転換が容易で、換声点を過ぎた辺りで楽に綺麗な音程の柔らかい響きが出せます。
軽い発声法と云えば云えますが、恐らくもっと高い高音を伸ばそうとすると無理が出そうな気がします。
中低音から、声帯を綺麗に閉じた密度のある響きのある声を心がけることで、高音発声にも良い影響が出ると思いました。
練習方法はハミングで中低音の声の響きを確認し、その声の響き感覚を母音でも実践します。
それで、ハミングをやりだした所、口を閉じましたが舌根を下げて喉を下げる様を見て、なるほどと思いました。
やはり、喉を意識して下げていたようでした。
喉を下げないために、奥歯を噛みしめてハミングをやると、喉の自然な合わさりのある響きになります。
この感覚を大事にして、母音発声の準備をするために、口を開けたハミングに切り換えて、練習しました。
今は声のチェンジ以降はやらずに、チェンジ前までで響きを確認します。
体調があまり芳しくなかったので、徹底出来ませんでしたが、温かみのある血色の良い中音域の声が聞こえるようになりました。
口を開かないと、軽い響きですが、これで口を開けると、自然な共鳴が付いて、適度に深みのある声にもなります。
最後にSe tu m’amiを練習し、イタリア語を読んで終わりました。