ME
伴奏合わせ。初めてのピアニストだったが、抜群にうまい方で、ほぼ問題なく、合わせは終了。
タッチの確実さ、音楽構成の確かさ、などなど、どのくらい合わせたのかわからないが、安心して任せられる型であった。
歌の方は、特にフォーレの「9月の森の中で」は、良い声で問題なく合わせられたが、発声練習なしでの1曲目ということもあってか、
声が口先から、という印象。
もう少し喉が開いた、胸側の共鳴が微妙にある深みのある声が欲しい。
特にoeの発音、Eの発音が、浅くなりがち、あとは語尾のeのあいまい母音。
いつも言うようにPの響きも、抜くのではなく、きちんと響かせることを最低限確保しよう。
抜いてしまうと、ホールでは響きが届かないから。
「蝶と花」は、声に勢いがあったので、前述の声の問題は感じられなかった。
テンポ、構成、ともに良かった。ただ、低音が響きが散ってしまう。
顔を前に出さないで、顎を引くようにして喉が上がらないように。
その上で、響きを高く、1オクターブ位上の声を出すポイントで出すと、響きが集まって、低音でも通る響きになる。
グノー「宝石の唄」は、これも伴奏合わせが良く出来ていて、とても良かった。
演技力も抜群で、感心した。なかなかこの曲を演技を意識して歌えないものである。
その上で、間奏のUn poco piu Lentを十分にやってもらうことにした。
全体にテンポが一定でメリハリが感じられず、一休み感が欲しかった。
声のことはほとんど現段階では言うことはない。
出来れば、最後の最高音は一息で歌ってほしかったが、無理は禁物であろう。
AY
軽く発声練習をして、早速合わせに。
「薬屋の唄」やや喉の高い発声だが、気分は良く出ているし、歌唱が安定しているので、No problemとした。
エルヴィラのアリアは、前回に比べるとテンポアップした分、高音が安定してきている。
ブレスに無理がないのと、勢いが加勢しているのだろう。
それでも、また歌手のテンポが優柔な印象である。
揺れ動くエルヴィラの心情とかあるかもしれないが、ここではそのような要素は排除したほうが、声のために良いだろう。
音楽なので、一つの表現を徹底する方が、全体がまとまって安定するもの、声がしっかりしなければ、何をやったとしても
届かないと思う。
彼女の場合は、このしっかりした声ということを、表現の基礎として確立してほしい。
柔らかさとか、小さくとか、という部分、大切な要素であるが、それがややもすると、発声の悪いほうにつながってしまうからである。
その意味で、出だしのMi tradi quell alma ingrataのフレーズも、Mpなどのダイナミックや演技よりも、
はっきりしっかり、強く歌うべきである。
また、後半のメリスマ続きの部分もすべてその通り。
その意味で、ピアニストさんは、楽譜に記されている(私の楽譜には)フレーズのスラーを尊重して
8分音符で拍を打たないで、フレーズで流れるようにアルペジョを弾いてもらえればありがたい。
そうすれば、歌手さんの歌の進行が加速されるから、である。
NS
今日は発声練習から、微妙にポイントが高かった。だが、高音が出しやすいのだろう、特に修正せず、ポイントをそのままにした。
1曲目、フォーレの「出会い」これも発声練習の通り、喉のポイントが微妙に高かったが、最後の高音の響き、発声が良かったので、今回は不問にした。
今からポイントをいじると、本番に間に合わないだろう。
ただ、音楽表現が決まらなかったので、次の「カディスの娘達」に移った。
ここでは、声のことはポイントをいじらない、ということで、高音が最初は良かったので、これも声は不問にした。
その代り、音楽構成がやや平板で退屈なので、構成を指導した。
出だしのフレーズをもっとよく歌いこむ。そのためには、テンポがやや重いくらいで良いだろう。
また、そのためには長い前奏で、イメージを良く出してもらう必要がある。
タンバリンをたたき鳴らすジプシー娘が見えるような前奏の音楽をお願いした。
それはリズムの歯切れ良さ、である。
出だしの確か3度?の和音の連続のタッチが奇麗に決まることは大切であろう。
そして、歌の出に入る、分散和音のジャラン!の歯切れの良さも大切である。
歌は、ゆったりと民謡調で入る。
その上で、中間部は、演技を良く出して(音楽を壊さない範囲で)歌うべきだろう。
そのためには、声を張り過ぎないで滑らかに、歌うこと。
最後の3点Cは、全回共、成功したので良しとしたい。
途中、2点Aに突然上がる声のポイント。
背中だけ開くと、喉が高いポイントに行かないので、喉を切り替えて高いポイントで出すと大成功だった。
ここは大切なので、定着させてほしい。
最後に再度、フォーレの「出会い」
テンポを微妙に遅くして、歌を徹底的にレガートにまっすぐに歌ってもらった。
感情の主眼としては、ハッピーではなく切なさを前面に、ということで、大成功であった。
その人の声、あるいはピアニストの力量、さまざまな要素を現実的に捉えての、音楽作りだった。
これで決まりだと思う。