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フォーレの「リディア」から始めた。
中声用で始めたが、喉が温まっていないせいもあり、やや出しづらそう。
それでも以前に比べると、雲泥の差で楽に中低音が出せている。歌、音楽に無理が感じられない。
高声用で歌ってみるとのことで、やってみれば、やはり声は俄然調子がよい。響きが伸びる。
この曲は一般受けするという意味でも、高声用のほうが、いわゆる「声楽的」であろう。

次に歌ってもらった「ある日の歌」は、高声用で始めたのだが、同様に「声楽的」という意味でコンサート向けの気がするが、絵葉書的な美しさ。
どちらかといえば、小さめのホールで良いピアノと伴奏者を使えば、中声用のオリジナルキーの方が、更に音楽的でオリジナリティがある演奏に近づけるだろう。
フォーレのピアノ伴奏に特有のシンプルでたっぷりした響きと、彼女の中低音の良い声が、フォーレらしいいぶし銀の音楽世界を描出させている。
この1曲目は失恋の歌ではなく、逆なのだが、恋のせつなさを表す意味では、低めの抑制的なオリジナルキーで、ゆったり歌うのが、向いていると思う。
フォーレらしい内省的で繊細な感情表現の音楽は、高声用で声がびんびん気持ちよく出てしまうと、かえって微妙な切なさが殺がれてしまうのである。

ラヴェルの「ギリシャ民謡」1曲目の「起きて!可愛いうずらちゃん!」は、前回指摘した点が改善されて、力強さが声に現れ素晴らしかった。
この路線で5曲全曲歌ってほしい。いわゆる女性らしい歌声、歌い方ではなく、男性の歌、表現として女性が歌う色気や魅力を表現出来るであろう。

最後にヘンデルのATLANTというオペラのアリオーゾ、Care selveを歌ってもらった。
12/8拍子で、気品溢れる音楽である。
しっかりした声で美しく歌えているが、もう少し声そのものの魅力を聞かせるようなテクは出すべきだろう。
最低限、綺麗なPPの声とクレッシェンドを組み合わせたり、トレモロもはっきり出したり、長く引っ張る声は、クレッシェンド、そしてビブラートを明快に。
などなど、練習した。
PPの声は、声の響きそのものは良いので、共鳴腔はもっと広く大きく作れると更に良い。中で共鳴していれば良いので、前に出そうとしないほうが良いだろう。