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レッスンも終わりそうな頃、モーツアルトのツェルリーナのアリア2曲を歌っていて、
歌い難そうな様子、それは、ブレスが持たない様子や歌っていて苦しい様子を見て思った。
多分喉が負担に感じられたのだろう。

そこまででも、コンコーネの15番の1番を何度も練習していた。
この練習曲自体は、良く練習されていて、前回よりも中低音の声がクリアにはなっていた。

当初、中低音の喉、声帯の当たり具合をしばらく練習すれば解決できるだろうと考えていた。
中低音の響きの密度が少し薄いこと、そして揺れが気になることに関してである。

しかし改めて良く観察してみると、呼気の使い方や歌おうとする筋肉エネルギーを、下に向けて踏ん張っているように感じられた。
そうだとすると、確かに重心が低くなり、声を出す力は瞬間芸で出るので声は当たりやすいが、疲れやすいのではないだろうか。
従って、当たりやすい母音をIにして練習すると、一見良さそうだが、外見以上に負担になってしまうのだろう。
それほど力を使っているように見えなかったが、予想を超えて力みがあったのだろう。

すぐに練習方法の指針を変えなければ、と考えた。

今日は、最終的にハミングを練習してみたことと、中低音は、喉を完全に下ろせるように、胸に当てるようにして練習してみた。
何より、最も基本的なところで、喉をリラックスさせる状態を作る方法を知ること。
その上で、上に昇る呼気を作ること、それを使えること。
そのための身体の使い方を考えたかった。

この状態は、呼気だけではなく、ブレス(吸気)との関連があるから、総合的に捉えないといけない。
ブレスで横隔膜を拡げる意識でそのまま歌に入って拡げ続けていくように、である。
いや、拡げ続けるというと、また力みすぎてもいけないので、拡げる状態を維持する、でも良いだろう。

下腹部最下端の丹田がしっかり締まっていることと、そのことでへそから上は、ゆったりさせて置くことが出来るなら、自然にブレスすれば否でも横隔膜が自然に反応するブレスになるはずである。
また、呼気(発声)に関しては、声を出せば自然にお腹は付いてくる、と考えるほうが、お腹に不要な力みが出なくて良い結果につながるだろう。
下腹部、丹田さえしっかりしていれば、という条件付きで。

と考えてもらいたい。

ここから下は、誰にでも共通のことなので、長くなるが付記しておく・・・・

ブレスに関して、もう少し詳しく書くと、例えばへそが口になって、その口から息を吸うように入れることで、胸が膨らんでいくイメージである。
へそから息を吸おうとイメージする場合、下腹部が前にだら~んと出っぱるだろうか?出っぱらないと思う。

むしろ少し引き締まるであろう。
そして入った息で声を出そうとする場合に、自然に横隔膜が拡がるということになる。

吸った息が更に上に登りたがっている状態が、ブレスし終わった状態である。
そして声帯は弁であり、弁をほんの少しだけ開くと自然に声が出る、というイメージだ。

これを風船とすれば、空気を入れる口(声帯)を上に向けて指でつまんでいる状態である。
指を少しだけゆるめると、外に出たがっている空気と指でつまんでいる空気取り入れ口のゴムが薄く振動して、び~っと音がするが、これが発声した状態である。

ただし、風船の下半分を少し手でギュッと握るように持たないと、中の空気は上に昇り難い、とイメージするわけである。
これが出来ていないと、出て行く息に流速がつかないのも、わかるだろう。

今日、練習したように、丹田をしっかり締めておいて、息を入れるということで、実は声帯がしっかり閉じるのである。
例えば重いものを持つ時に、どうするだろうか?
声帯が閉じていないと、腰に力が入らないだろう。

逆に言えば、腰に力をたくわえないと、声帯が閉じないから、息をためて力を使えないはずである。
声楽の身体使いは、イコール重いものを持つ回路、といっても過言ではない。

多くの人が下腹部を締める引っ込めると思っていながら、実はもっと上のへそから上を引っ込めて固くしているということである。
決して胃の部分を固くするのではないことだけは、覚えて頂きたい。