SY

発声練習の声は、かなり力強く活き活きと響いており、調子の良さがうかがえました。
曲として、フォーレの「イヴの唄」を1曲目~3曲目まで練習しました。
以前も全曲取り上げたことがありますが、再度やることになりました。

今日は発声そのものを取り上げずに、ひたすら通して歌うことだけに集中しました。
歌いこみをまず増やすことで、以前歌った経験を思い出すきっかけになると思いました。
発音もほぼ間違っていませんが、改めて良い発音を目指してほしいと思います。

特にこの曲集のメロディは、フランス語の語りの抑揚が出ないと、ニュアンスに乏しい地味な旋律なので、
フランス語の読みを起伏を付けて出来るようになることが、とても重要です。

ところで、1曲目は長大な曲ですが、拍子とテンポが変わります。
特に3拍子から2拍子になったときに、一拍の長さを良く考えておかないと、2拍子のテンポが速すぎておっつかなくなります。
拍子の変化は、先を考えたテンポで入ること、計算されてください。

2曲目は音域の低いフレーズと高目との対比が際立っています。
それだけに、特に低域のピッチに充分注意してください。低域のメロディを正確に出さないと、この曲の美しさが出て来ないのです。

3曲目は明るくソフトな美しさが際立ちます。シンコペーションのリズム感の柔らかさを良く感じて、ソフトな声質が包み込むような
表現が出来れば完璧です。

UM

イタリア古典から
Tu lo saiそして、Sento nel core
2曲とも、ほぼきれいに課題をクリア出来たと思いました。

欲を言えば、まだ声帯の開いたミックスした響きがあることが、高音へのチェンジの未完成を表わしていると感じましたが、今は無理せずこの発声で少しずつ声帯伸展を促す方向に移行して行けばよいと思います。

最後にRidente la calma
さすがにこれは難しそうでしたが、それでも、以前に比べると高音へのチェンジ近辺の声質の喉っぽさは影をひそめています。
おおよそ滑らかに5線の中から上までのフレーズを歌えるようになったと思いました。

しかし、中間部はチェンジと高音発声をある程度意識して、課題に挑戦してほしいと思います。
それは、前3曲でも同じことですが、2点Cくらいからの発声で声帯を開いて息を通して発声する、というイメージではなく、むしろ息を通すのではなく、鼻腔を共鳴させる、鼻腔を響かせる方向をイメージすることです。これは口先をなるべく開けない方が上手く行くでしょう。
その上で、軟口蓋から声を出だすことです。

この方法で、いつもの母音の響きよりも密度の濃い、倍音の強い前に通る響きが実感出来れば良いです。
もう一点、この発声を意識するために、子音を利用することも大きな意味があります。

たとえば、Tu vieniのTなどは口先を開けないで、舌先でしっかりTを発音することをきっかけにして軟口蓋から響きが出だすこと、が実現出来ると、大きな意味が出て来ます。

そしてこの曲の最高音が出て来る、繰り返される同じ形のフレーズ。
この高音は、叫んでしまうようです。

練習したのは、フレーズを歌いながら、最高音の発声に対して口を縦に開けようとすることによって、喉を上がらないように処すことと同時に、声を前に出そうとするのではなく、うなじから後頭部にかけて廻すようなイメージを持つことです。
このことで、うまく支えのある頭声の高音が出せるようになって来ました。
単に力でエイッと出すのではない、柔らかさと響きのある高音発声です。

次回もこの方向をじっくりレッスンしましょう。

AS

フォーレ「秘密」「ゆりかご」「悲しみ」
いずれも5線の中の音域は、特に声の課題を感じることなく終わりました。
ただ、発音はまだ修正が必要です。
ほとんどの場合が、読み音間違いではなく、発音の体裁品質です。
特に、語尾のEは、あいまい母音ですが、Uのように口をすぼめて狭くしないこと。
大概が、その前の母音から口の大きさをあまり変えないで、舌の動きだけであいまいで少し弱めの響きにして納めることが、フレーズ終わりのEのあいまい母音の発音のコツです。

なぜか?というと、狭くすると響きが強調されて聞こえてしまうからです。
語尾のあいまい母音は、強調されてはいけない響きなのです。
かといって、聞こえないのも良くないのですが。

フランス語の詩にとって、この語尾の扱いは非常に重要です。
特にEで終わる女性韻は、詩の持っている雰囲気なので、歌で処理する場合に工夫する大きく余地が残されています。

デュパルクの「哀しい唄」
これはオリジナルですが、予想外に高音発声に苦戦しました。
ほとんどが、ファルセットになってしまいます。
特に跳躍幅が大きいフレーズは、ほとんど高音側がファルセットになります。

喉を締める、と言うと語弊がありますが、声帯を閉じるために高音発声する寸前に、一瞬息を止めるような意識を持って見ることを、
指示しました。
で、このために子音の発音を利用するわけです。

例えば、Tant de baiserと2点Aの発声をする場合、ブレスをすると同時にTの子音発音で舌を動かそうとする瞬間に、喉が閉じるイメージです。
この時に、喉が太くなって息を吐こうとすればするほど、ファルセットになってしまうでしょう。
息を吐こうとするのではなく、息を止めると声が出る、くらいのイメージです。

ただし、この時、声の出始めの場所は、軟口蓋からです。
そうしないと、喉にもろに来る可能性があります。
あるいは、逆に喉のさらに下の鎖骨のくぼみです。
いずれも、喉から離れた場所です。