KA

発声のポイントは、発声時の口の開け方、特に下顎の使い方であった。
見ていると、どうも開け方が直線的に、下にばっくりを開けてしまうようである。やや前に出すように開ける感じである。

これが、太く当たるか、あるいはスカスカするか?の二者択一的な声になる原因の1つに思えた。
これを、なるべく後ろに引くように開ける感じにしてもらった。
具体的には、下唇を中に入れる感じで顎を下げると、意図したとおりになる。
下顎を後ろに引き入れるように開けることで、喉が上がらないことと、軟口蓋が自然に上がることが一挙に出来る。
この時、上あごも上げる意識を持てば満点である。

なかなか器用な方で、すぐに効果が表れた。
具体的には、響きが特に2点C以上で、共鳴が出やすくなった。
響きが鼻腔に入り易いため、軟口蓋が上がり易く、喉も自然に下がるため、喉と軟口蓋の下がり上がりのバランスが一発で取れやすくなるのだと思う。

この発声が今回は非常に効果的で、どの曲においても大きな効果を表したと思う。
あとは、以前から言っていたブレス時の胸郭の開きと持ち上げである。
このブレスと声の出始めの準備、あくび状態。そして声の出始めを高い軟口蓋辺りからということを守ってもらった。

練習曲のリュトゲンの7番。連続する3連符のメリスマである。低音は1点Cから高音は2点Eまで。
およそ1オクターブ半で、全体に女性としては低めの音域である。
この練習曲は、課題はいろいろ出来るが、発声で得られた成果が、即応用出来て良かった。

曲はリディアから、
中低音の声は以前に比べると、かなり良い声で声量も出るようになったと思う。
発音もほぼ問題はない。
後は中高音域の声。まだ今日の発声を反映までは行かない。
今後、反映させられるようになってほしい。

アヴェ・マリア
一番練習したのが、高音が出てくる、後半のフレーズ。
2点Aや、2点hの発声で喉が閉まってしまう傾向が強かったが、今回は、口の開け方の工夫を教えることと、低音発声の処理、特に響きを低音側に落とさないことで
逆に頭声を出しやすくなるように練習した。
成果はあったと思うが、まだまだ高音は後ろに引かないで出せると思う。

SA

発声は下降形で2点Dから。
彼女は、この2点C~Gの間はもっとも響きが良く出る。
後は、出来れば1点F~2点Cの間でもう少し響きが前に出ると良いのだが。
口を縦にしないこと、あまり開けないことがコツである。
低音発声の声の共鳴点は、中高音や高音とは明解に違うので、同じ考え方で対処しても逆効果である。
低音発声でスカスカしてしまうのは、そのことが原因の一つと思われる。

曲はシューマンのリーダー・クライスからIn der Fremde
全体に、声の響きは密だが、やや細く締まり気味の響き。
Ichで出るIの母音の2点Esの響き。口を丸くしてほしい・・・。
全体にもう少し喉の開いた響きである。

また、違う言い方をすれば、あまりレガートにこだわらないで、彼女の独壇場だるドイツ語の美しい発音と語りを活かした歌い方の方が良いと思う。
それは、一言で言えば歌い過ぎないこと、シラブル(母音)やリズム感を活かした歌い方である。

特に付点8分音符を次の16分音符にみっちりつなげないで、言葉の語尾の子音をはっきり言って切ってしまうくらいに歌うことである。
その方がこの曲の特徴的なリズム感が表せるし、朗唱の雰囲気が良く出てくるからである。

信時潔は、与謝野晶子「いずくにぞ」から。
歌詞が非常に明瞭になった。
音程感、特に1点hの音程が上ずらないように注意。
最後のフレーズの特に入りの響きが不安定にならないように注意を。

「茉莉花」は、フレーズ毎に練習。特に第一テーマの繰り返しの終わりに出てくる、半音階になるナチュラルになる経過音の音程、間違えやすい。
また、、中間部のさびの重要部分である「ごくひのうれひ、ゆめのわな」の半音階の音程関係に注意を。
あとは、確実に歌うのみである。
実際に歌い通すことになったら、テンポや歌い方の変化に表現を加えたいが、今は譜読み、特にちょっとした音程に十分注意をしてほしい。