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コンサートの曲目を選ぶため、様々な曲をざっと歌ってもらった。
武満徹から5曲、その中から3曲、翼、小さな空、さようなら 三月の歌、島へと歌った。
どれも良い出来で、選ぶのに困るが、「さようなら」は、もっともクラシックらしくない自由なフレーズがとても雰囲気が気に入った。
相変わらず音程の良い声で、低目の柔らかいメロディラインの歌い廻しはさすがと思わせる上手さがある。
また、声質だけというのではなく、表現をする意味と目的のある声の使い方になっている。
これは、本当に訓練の成果なのだろう。
ただ、その訓練はいやいや仕方なくやるのではなく、喜びを以て自分で考えて工夫する点があるから、良い成果になっているのだと思う。
こちらがピアノを弾いていると、声の扱いにおいて驚くほど繊細であることが分かる。
今日聴いた中では、低目のキーでもその中での高音を、もう少し聴かせても良いのではないか?と思うことが時々あった。
低音の柔らかさと高音の張り、という対比が、ほんの少しだけ出せれば、表現として完璧なものになるだろう。
サン・サーンスやワーグナーのフランス語歌曲が珍しかった。ベルリオーズの「薔薇の精」はアリアのようで、フランスロマン派の匂いが
ふんぷんとして、素晴らしい。バシュレの「しっとりとした夜」も、世紀末のミュシャの絵のようだった。