HN
3か月ほど間が開いたが、レッスンを再開した。
今日のテーマは、引き続き発声の換声点領域の発声の特訓となった。
これまで、高音発声に入るポイント辺りから、叫び声になり勝ちだったため、とにかく抑制する方向を作ってきた。
それは、ファルセットで出すこともあるし、あるいは喉を目一杯開いて、飲み込むように歌うなどなど。
これらの矯正で、叫び声はすっかり出さなくなった。
しかし、その代償として声の響きがほとんど出なくなってしまった。
声が小さく前に出ない。
このため、これからは、声を前に出すこと、吐き出すようにすること、という方向性を持って高音発声のバランスを戻したい。
曲はイタリア古典歌曲集から Tu lo sai を取り上げた。
やってみると、やはり口を大きく開け過ぎるため、喉が硬直してほとんど息が通らない声になっている。
これも、今までと真逆の発想にすること。
口をあまり開けないで、むしろ喉そのものを意識すること。
喉から離れようとしないこと。
当てるのは、換声点より上であれば、喉下を狙うと良い。
逆に低音発声では、声の響きを上顎で歌うイメージか、頬骨に当てる意識。
低音時のこの発声によって、フレーズを歌う際に高音発声に移行しやすくなるからである。
一つだけ本人にお願いしたいのは、言われた通りのことだけを正確にやろうとすることも大事だが、それ以上に大事なのは、自分で見つけてほしいこと。
その基準がもし判らないならば、自分の感覚として、良く響いた声か?
発声時に苦しくないか?音程が良いか?という3点を基準にすること。
まさにドンピシャの所は、本人が見つけるしかないのである。
私が教えられるのは、その周囲のこと。それらの情報と行為の中から、ドンピシャに当てるためには、上記の感覚を研ぎ澄まして見つけ出すのである。
SNM
伴奏合わせとレッスンの最後となった。
どの曲も心配な面は何一つないが、最後の詰めなので一応課題を提示しておいた。
1曲目のグノー「おいで芝生は緑」は、伴奏の速さに少し遅れている感じがあるので、食い付きが遅れないように。
声で歌い過ぎないで、言葉をしっかりつかんで歌うこと。
2曲目の「カディスの娘たち」は、これも前奏に比べて歌がゆっくり目。
ゆっくりなら、前奏は少しのんびり気味が良い。要は前奏と歌の整合性を取ること。
その分、中間部はゆったり感を出すこと。
3曲目、ラフマニノフのヴォカリーズは、抑制した声がやや気息的なこと。
多分イメージで歌っているのかもしれないが、実際はもう少し声の響き方だけに集中した方が、お客側からの声の評価は高いと思う。
実際のステージでは、きれいに声が通る方が音楽が良く伝わる、ということ。
歌いたいというモチヴェーションを刺激するイマジネーション通りの声と、オーディオ的に必要とされる声の要素は、必ずしも一致しないことが多い。
実際、気息的になるせいでブレスが短くなる、という要素もあるだろう。
日本歌曲、「宵待ち草」「からたち」は、良いと思った。「からたち」は、張った声のビブラートが良い表情を出していた。
最後の「咲いたよ~」の2点GのPPの表現が出来れば完璧だろう。
アリアは、特に「宝石の唄」のピアノのテンポと歌のテンポのすり合わせと、特にアリアの出だしの歌の表現について。
同じテンポでも興奮して素早く喋る所と、落ち着く所の違いを出すこと。
歌詞の意味の中に、そのことが良く表現されているので、改めて日本語歌詞を良く読んで、歌う時にどうそれを表現するか?
出してほしい。
ON
ドリーブの真珠採り「耳に残る君の歌声」
主に発音の指導になった。
ほとんど間違った発音はなかった。
フランス語は、Croire,Voir Soir,Voixなどのwa系は、半母音+1母音だが、2シラブル化すると言葉が判る歌になる。
例えばVoixは、VowAという具合である。
歌い出しの声が、喉が締まって不安定な印象だった。
美しいPによる声の表現をしたいところだが、現状の発声でPにすると余計に喉が締まるだろう。
Pの声ほど、完璧な声帯の張りと閉じが出来るように、また、いわゆる喉が上がらないポジションで歌えるようにフォームを作り直す必要が出て来る。
しかし、現状のフォームを変えると、せっかくのHiCが出なくなるので、あまり薦めたくない。
現状のフォームは、完全に喉を上げているため、恐らく声帯全部を使う高音発声ではないのだろう。
開いていると思う。
なぜならあごを上げれば、声帯の前側を引き下げて、声帯を伸ばす回路が働かないはずであるから。
この曲は繊細に歌うことも出来るが、しっかり張って男らしく歌ってもまた良さが出る曲ではないだろうか。
ST
モーツアルト
課題はチェンジ直前の音域で声が♭気味になること。
喉が詰まるというか、息の抜けが悪い感じ。
響きも大切だが、歌いながら息が自然に吐けているかどうか?
今回の練習方は、ハミングで音程を良く合わせておいて、母音に変換する、という作業で矯正をした。
この時に注意してほしいのは、特にチェンジ直前の2点C~Eで音程を上げるためにはどういうことをするか?ということ。
母音発声、普段の歌でも、この点を注意してほしい。
多分、歌う時に音程よりも声の響きだけに注意が行ってしまっていないだろうか?
もう一点、歌の中での課題としては母音のEの発声。
これが日本語の締まったエになりがちなこと。
思ったよりもAの発音に近い発声を覚えて欲しい。
Ridente la calmaを歌いだすと、全体に喉が締まり気味で喉の緊張が感じられたので、喉を楽に落とすように指導した。
声の響きを何でもかでも、高く出そうとするのではなく、まずは、出し始めをみぞおち辺りに感じることや、胸を軽く意識して出すような方向性。
これらのことで、喉がリラックスするからだ。
いくら高音発声だとかいっても、喉が緊張した状態では、本当の意味で良い声にならない。
なぜなら、声帯全体をきれいに使えなくなってしまうからである。
その人の本当の良い声は、その声を使いきることで完成するはずである。
上記の点をクリアできれば、Ridente la calmaもDans un bois solitaireも、かなり歌いこみが進んで
安定した美しい歌唱に近づいてきているな~と感じた。
Dans un bois solitair は、上記の発声の応用編となった。
すなわち、喉を下に引き下げようとする意識と、音程を出すために上に引き上げることとのバランスを取ることを体感してもらった。
換声点より後は、声が引っ込んでしまうが、今はこの点はペンディングにしておきたい。
喉があまり丈夫ではなさそうなので、時間をかけて開発して行きたい。