GH
明日の本番直前で伴奏合わせのレッスンとなった。
この期に及んでは、大きなことは言えないし、また大きな問題も特にはない。
改めて、それぞれの曲でどのような課題があるか?明日までに出来るかどうか?というよりも、今後の参考にしてもらおうと思ったことを言った。
シューベルト「冬の旅」の「あふるる涙」歌声はとても安定していた。
そして、前回指摘した言葉のニュアンスが良く吟味された声になっていた。
歌詞の意味と声とが良く一致することを考えることは大切だ。
ピアノは、単純な音型だからこその印象的な3連符などの形をもっと強調した方が、印象的と思った。
「春の夢」これは、前回も指摘した、冒頭の楽しげなメロディ、リズム感をもっと出すこと。
2節目の鋭さ、激しさや上手い。
3節目の入りで、ブレスタイミングが妙に速いのが気になった。
発声を気にするあまり、音楽的な雰囲気を無視してしまう点に注意を。
あくまで、音楽的な要素があった上での発声である。
「老楽師」伴奏のテンポだけ、思い切りゆっくりへ、と指摘。
この曲は、「冬の旅」全曲をやって締めくくりになって意味が出てくるので、単体でやる場合に、
特徴がないと、良く分からない曲になり勝ち。
その点では、前奏で相当ゆっくり弾くことで、雰囲気を強く醸し出すことが必要だと考えた。
日本歌曲は、「初恋」中間部の「初恋の~痛み~を遠く遠く~」で、歌があまりにIn tempoになり過ぎて、
抒情が感じられない。こういう伴奏が単にアルペジョだけのところは、自由に歌うべき、特に長い音符を長く、
16分音符は「こぶし」と考えるのが良いだろう。
「城ケ島の雨」良くまとまっていて、感興のある歌に仕上がった。彼のキャラクター声とピッタリ合っている。
「落葉松」これは、歌うむずかしさを特に感じた。
ただ、彼は、非常にバランス良く淡々と歌えていて好感が持てる。
余裕があれば、歌詞の意味をもっとメロディラインに活かすように歌えれば更に素晴らしいだろう。
WN
発声練習は20分近く時間をかけて、喉を温めた。
喉の温まりが遅い、という本人の弁もあるが、それ以上に大事なことは発声だと思う。
ソプラノは声帯を太く使いたがらないものだが、単純に言えば低音発声の必要性と、高音の声の張りを考えると、
太くというよりも、喉を上げないポジションによる中低音の発声を覚えておかないと、声量のある声が出て来ない。
また、このことは根源的に声帯全体を使いきる、という発想に立てば当然のことではないか?と思う。
Le colibriは、譜読みは比較的に順調で、良いスタートだった。
主にフランス語の発音、特にOEの発音は大事ということ。FleurとかMeurの母音の開き。
そして、やはり喉のポジションをいしきすることが大事。
特に中高音のチェンジ近辺の声の処理に注意を。
Nuit d’etoile こちらは、典型的なソプラノの曲なので、彼女の場合は楽に出せるが、それだけにチェンジ近辺での喉の締まる響きに注意。
そのために、喉が高くなり過ぎないよう、オクターブ下で歌ってみて、その喉を意識して歌ってみること。
フランス語はEtoileやVoile、などの語尾のあいまい母音が、強拍にかかっても、絶対強調しないように処理すること。
また、チェンジをまたいで低音域に入るため、響きが落ちないように気を付けること。
語弊を恐れずにあえて言わせて頂ければ、彼女の喉はすでに高音発声のスタイルが出来ているので、低音発声の開発をしっかりしたとしても、高音が出なくなるという心配はまったくないし、むしろ、もっと声量のある高音発声に繋がって行くと考えている。
MM
母音Iとハミングを中心に、母音Aでも練習。
モーツアルトのGiunse alfin il momentoから。
最初の通しの声が、ポジションが高く響きが薄くて不安定だった。
横隔膜の上に声を乗っけるように、という抽象的な表現であったが、指示した所、すっかり声が安定して、良く響く声になった。
喉で喉を下げないようにすること大切だが、だからといって喉が高く不安定で良いということはない。
声のキャラクター、レッジェロとかスーフレットとかいうことは、この際、発声の基本とは関係なく考えるべきだろう。
この曲を歌う以上は、まず歌う人の最善の声で歌うべきであり、キャラクターは口先で作るのではなく、演技で自然に出て来る、と考えるべきと話をした。
そうでないと、軸がぶれてしまっては、何を基準に勉強すれば良いのか?分からなくなってしまうからである。
最後のページの高音の練習をした。2点Aに昇る瞬間、喉下にチェンジ(入れるでも当てるでも良い)するように発声を教えた。
響きを上に意識すると喉が上がってしまうからである。
この喉下に入れる発声の場合、力んでは駄目。ほどほどの当て具合を見つけると上手く行く。
ヴェルディ「運命の力」Pace
結局、チェンジ近辺の発声が中途半端だったことが、このアリアの歌を中途半端な印象にしていた、と思った。
L’amai gli e ver!からのフレーズで、喉を上げないポジションできれいに当ると、後がうまく行くと考えた。
やはりこれがチェンジ前の領域で、不安定になる場所だからだ。
それと、中間部の後半のInvan la Paceの2点hの発声。
これも「喉で切る」発声で、当て具合をバランスよく出来れば、上手いメッザヴォーチェの高音が出せるようになる。
かなり進歩して来た、と今日の結果を聴いて思った。
後少しである。
最後の最高音は、Maledizioneの2点Fの発声で、上手くチェンジのつぼに入っていれば、そのままで、最後の2点bの発声は必ず上手く行く。
喉を上げないようにし、口を開けることで軟口蓋を上げられれば、良いはず。