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発声練習では、下顎を動かさない練習が効果的であった。
本人は感じているか分からないが、明らかに口蓋垂の上がった声の響きが感じられた。
彼女の発声は、声帯を良く合わせたきれいな響きだが、やや厚ぼったい当りのためか、
息の通りが自然にならず、結果的に♭気味になる傾向が感じられる。
声の方向を前ではなく、脳天めがけて真っすぐ上に意識することも良いだろう。

そして、発声練習でやったように下顎をなるべくさぼった発音にするために、舌を良く使うようにすることで、
特にロッシーニのDanzaでは、滑らかで素早い発音が活き活きと出来るはずである。
音程感も、2点Esで始まる音程がはるかに良くなる。
歌詞とメロディが切れ目なく続くので、カンニングブレスを入れる場所が難しいが、やはり長い音符の後がいれやすいだろう。
この曲では、おおむね4分音符である。

モーツアルト「フィガロの結婚」のケルビーノ、Non so piu cosa son cosa faccio も、同じテーマが大切なのだが、
こちらでは、今日は声のダイナミックの扱いをうるさく指摘。
楽譜を見ると細かく書いてあるのが春秋社の校訂だが、オリジナルはどうか?
この楽譜の強弱を見ると、言葉の意味と音楽との掛け合い的な要素で付いているようである。
イタリア語を良く読んでみると、アクセントが良く活かして付けられているので、逆にイタリア語を良く朗読して見ることで、
自然にこの強弱が出来るようになるはずである。
言葉を良く発音し、意味を良く出して歌うこと、が声を張り過ぎることよりも、重要な作品である。

どちらもテンポの速さが身上の曲だが、特にロッシーニのDanzaは、発音の滑らかさと素早さがとても重要なので、
歌うよりも読みをしっかりやっておくことが効果的な練習につながるだろう。