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発声練習では、声を集めてコンパクトに出すことを指示。
全体に息が強い発声のため、声の出だしで少し息漏れ傾向であること。
ブレスが短めで、声質がやや息の多い声質、という印象による。
ブレスが短いのは、息もれがあるからという理屈もあるが、本人の喉の持つキャパ対して声量を出し過ぎ、という面もあろうか?
また、声量は声質に影響があるから、その面でも、コンパクトに出すという言葉はイメージ的に良いと思う。
野球でも、手首のスナップを効かせてボールを投げると、意外と遠くに飛ぶ。
思い切り振りかぶって投げたりしても、肩が痛いだけで遠くに飛ばなかったりする。
声も同じ理屈がある。
身体の使い方として、適度な力加減と、声の出し具合のバランスが大事ということ。
最後に呼吸の身体の動きについて教えた。
丹田にすこし力を入れること。
逆に見ると腰が入った姿勢になること。
膝がゆるゆるしていないと、この姿勢、立ち方は出来ない。
重い荷物を持とうとする時の体制の取り方に似ている。
ブレスすると、側腹部が少し拡張するので、歌いだしからその状態を維持するようにしていると、前腹部が自然にへこんでくる。
これに任せていれば、息は自然に上に吐出する。
この側腹の拡張しようとする意識が、呼気の微妙なコントロールを可能にする。
高音発声でエネルギーを使うときには、この側腹の力加減を強めに意識するし、弱声であれば、動かさないように意識することで、声帯は余計に開かないから、息もれはない状態で歌えるだろう。
後は、重心を片足で取ってみること。あるいは歌いながら片足から片足に移動させて歌うこと。
などなど、彼女の歌う息の集中力に必要なこととして指導。
歌は、ヘンデルのRejoice greatelyを練習。
少し気になったのが、メリスマの声質。
Hが混ざって素早く歌えて音程も良いが、響きがスカスカすること。
もう少し口奥の軟口蓋から上の部分で共鳴させるように、口奥を作ること。
そのことで、ブレスももっと持つようにならないか?
あるいは、メリスマの音程感として、5点Cから下に降りる際に、声質が微妙に変わるのはチェンジのせいだが、これをなるべくなくすこと。
このことは、最後にモーツアルトのアリア、Ruhe sanft,mein holdes lebenでも練習したが、やはり中間換声点の問題のためだが、下側の声ではなく、換声点の上側の発声で取る方が良いこと。
この出だしの声質をどう出せるか?が最初の長いフレーズを歌いとおすために、とても重要。
次の小節のSanftを歌うSol→miの跳躍時に、今は息を使いすぎている状態。
息をあまり使わないで音程跳躍を歌うためには、上のmiは、軟口蓋を上げようとしないで、むしろ口を開けないようにして音程を口奥を使ってはめるように意識すべき。
更に高音発声に行く時には、喉元下の鎖骨の間のくぼみを、軽くしっかりアタックするように指示した。
これも無駄な息を使わないで、コンパクトに発声するイメージである。
口の開け具合は、喉が苦しくない範囲で、開けすぎないように。
この開けすぎない、という意識は、気を付けないと、喉を力ませてしまうので、練習の中で探していくべき。
ヘンデルのLascia ch’io pianga
これも高音区のE che sospiriの特に5点Gの発声は、口をあまり開けないほうが良い。
その方が、声の響が鼻腔共鳴を伴う様な響きになり、明るくなる。
全体的には、テンポをゆったりさせて、Pの声質を研究してほしい。