AS

伴奏合わせでした。
オールプーランクのプログラム。
課題は、「失踪」でした。

速い3拍子(バル・ミュゼット)のメロディラインの1拍目に無意識の強調があるのか?どうしても小節線が感じられてしまいます。

例えば、Je n’aime plus la rue saint Martinををなるべく一まとめに歌おう、とすること。
その中でもJe n’aimeに強調は必要なく、plus la rueに息が乗るように歌うほうが良いでしょう。
彼女の場合は、リズムに乗ろうとしてしまうこと、言葉をはっきり言おうとすること、がかえって仇になって、結果的に123の1が強調されてしまうようです。
発音ですが、DepuisのDeがDuになってしまいます。
これなどは、喉が上がりやすい癖のせいではないでしょうか?

「モンパルナス」
これはとても良い演奏だったと思います。
中間部のVous connaissez de son paveには、歌う者が思い出して幸福な気分になっていることが、明解である歌声が望まれます。
そして、Et vous revezから徐々に悲しくなってくる感情を出しましょう。そのことが、PPからMfへと楽譜指示がある、プーランクのこの部分への解釈ではないでしょうか?

ルイ・アラゴンの2つの詩から「Cの橋」
前回、喉の上がってしまう高音を抑え込むのに、喉を下げすぎていて表現としておかしな点。
発声の課題をやり過ぎると、歌の表現から離れてしまうかどうか?くらいは、考えて対処すべきではないでしょうか。
その上で、声を出しすぎないことが、喉の上がりと関係あることが分かるかと思います。

声のフォームは良い状態になっているので、あとは、どうフォルテの声を出すか?PPの声を出すか?それが歌詞の内容とどういう関係か?ということを
改めて、考えてください。
Fete galanteは、出だしのOn voit des marquis sur des byciclettesからの2小節を速く歌いすぎです。
ここは、フランス語のシラブルを明解に歌ってください。
On voit des motsから先に進むほうに歌うべきでしょう。

SM

「月の光」は、前回に続けて、ピッチの正確さとリズムの正確さを得るために、ゆっくりのテンポを練習しました。
それが功を奏して、ピッチがとても良くなりリズム感も正確になりました。
それで、最終的には楽譜指示のテンポに戻して良くなりました。

「夜想曲」
こちらは、ピアノも声も小作りになってしまい、この曲の持っている自然の大きさのような雰囲気がかえって出ていませんでした。
問題は、声やピアノの表面的な音量ではなくて、音楽の持つ風景の大きさに感動している奏者の感覚だと思います。
ピアノもきちっと響きを確立すべきだし、声もそう。

「エロディアード」サロメのアリア
これは数をこなしただけあって、ほとんど文句なしの出来でした。
テンポの設定がどんぴしゃになったため、サロメの感情的な変化が音楽から良く表現できたと思います。低音発声も安定していました。

最後に指摘しましたが、どうも声の調節、それは強弱やピッチの正確さ、リズム感など、を指摘すると、根本的な喉の問題から離れて口先で調節してしまう感があります。
ブレスして喉の準備があって、良いフォームによって良い響きを出す、という最低条件の上で、良いピッチと良いリズム感で歌えるか?
ということを、いつも忘れないようにお願いします。

GH

モーツアルト「フィガロの結婚」伯爵のアリア
レシタティーヴォは、最初から声を飛ばし過ぎだったので、落ち着いて大きな声を必要としない表現との差異を指摘しました。
悪魔!と叫ぶまでは、小声で良いのではないでしょうか?むしろ、その方が人の耳目を集める演奏になるでしょう。

「プロヴァンスの海と陸」良く歌えていますが、まだ全体に声が高いというか、喉の開きが足りない感じでした。
最後に指摘して上手く行きましたが、それは発音時に下あごをあえて下ろすように発音することでした。
これなどは、普段私が言うことの正反対ですが、彼のバリトンの響きには必要でした。
また今まで彼が響きを上に乗せることばかりに集中していたせいもあります。
要するに今回の指摘で発声のバランスが良くなったと理解してください。
何事もバランスなのです。

「この道」は、最初のテンポが少し早かったので修正してもらい良くなりました。
「あ~あ!」の声が硬すぎるので、喉を良く開けて息混じりの柔らかい声を指摘しました。
あとは、急がないで歌うほうが、それぞれの単語のイメージが頭に浮かぶのではないでしょうか?
楽譜どおりに歌うことは出来ていますから、そこから一歩踏み出して、歌詞の意味を良く味わい、その世界に浸るように歌うと、良い演奏につながるのではないでしょうか?

ST

「フィガロの結婚」スザンナのアリアから始めました。
最初の通しでは、やや消極的な声の調子とともに、換声点当たりで引っかかりかけていましたが、レシタティーヴォの練習を徹底したところから声の調子が戻ったようでした。
恐らく、喉の温まり具合だろうと思います。
喉の温まりが進めば良いのは誰しも同じですが、逆に見ればあまり気にしないで積極的に歌うことも大事にすべきなのです。
誰しも完全な状態で本番には望めないからです。
そういう状況では、消極的にならないで積極的に前に出る方向に舵を取ることを意識するほうが、好結果を招くでしょう。

レシタティーヴォでは、イタリア語のアクセント位置で声をより響かせる意識を持って歌います。
楽譜には書いていないので、練習したことを良く覚えて置いてください。
音符だけ見ていても、このことは表現されていないのですが、それがあるのとないのとでは雲泥の違いになるのです。

アリアも同じで、ただメロディを何となくなぞるのではなく、アクセント位置の響きの強調と、高音への跳躍で積極的に響かせようと言う意識は大切です。
楽譜に何も書いていなくも、です。
そのことが、今の彼女の歌における、発声や歌いまわしなどのレベルにおいて有益な要素があるからです。

そしてモーツアルトのRidente la calmaを練習しました。
今までで、恐らく一番の良い出来と思いました。
積極的に声を出して、声質も良いしピッチも良かったです。
出だしのテンポが遅くなりがちな点、だけ気をつけて練習されてください。