HM
10月3日のプログラム全曲を伴奏合わせとなりました。
バッハのBist du bei mir
全体にテンポが速いというか、ビート感が強く、少し落ち着き感がない感じでした。
これは、テンポ感でもありますが、3拍子を出すのではなくフレーズを滑らかにじっくり歌うほうが良いと思いました。
静かで知的なイメージを大切に。
ヘンデルのジュリアス・シーザーからクレオパトラのアリア
Piangero la sorte mia
まず、レシタティーヴォがまとまりがなかったのですが、後回しにしてアリアを作りました。
テーマの声は、厚みがある声と伴奏の和音も厚みがあったほうが良いです。
後は、ブレスの位置は単語内に置かないように。
例えば、Finche vitaのVitaの中に入れないように。
前半の最後のFinche vitaの最高音のフレーズは張った声ではなく、出来ればPで歌う方が効果的と感じました。
中間部は2拍子のテンポでなるべく素早く歌うべきでしょう。
レシタティーヴォですが、もっと感情表現を豊富に出すことと、抑制した声をもう少し使ってみてください。
ピアノ伴奏は、ヘンデルの弦楽器群が奏でる、華麗にして重厚な響きを彷彿とさせてください。
日本歌曲「からたちの花」
ブレスが多いためか、感情の波のようなものが感じられません。
もうすこし歌う言葉に反応する歌手の表情のようなものが、見えると良いのですが。
そのためにも、なるべく不要なブレスは入れないで歌うことが大切なことです。
逆に言えば、ブレスをしなくても歌えるテンポ感、あるいはフレーズの進み具合を意識する事。
例えば「からたちの花が」「咲いたよ」と2つに割るか?「からたちの花が咲いたよ」と1つで行くか?
「白い白い花が」「咲いたよ」「花が」が頂点になりますが、「咲いたよ」の動詞の言い方の中に、この詩人、あるいは作曲家の感情がこもっていると感じるか?
この曲は、このようにフレーズの形が同じですから、どこに力点を置いて、力点を強調させるか?ということを良く見極めなければならないでしょう。
ロッシーニの「約束」
良い声で歌えています。
フレーズの滑らかさと、最高音の発声について。
最高音は、口を開け過ぎないで、天井に反射させて前に声を出すようなイメージで歌ってください。
全体に声を大事に歌っているのは分かりますが、子音がほとんど無くなって聞こえます。
子音を出さないのがレガートなのではなく、子音をきちっと出して、そこから紡ぎだされる母音の響きを滑らかに歌うことが本当のレガートだ、と思います。
子音を出す方が息を使う感じがしますが、良いブレスが出来ることと、喉の使い方が良ければ、その程度のことでは息は揺らぎません。
モーツアルトの「魔笛」からパミーナのアリア「ああ、愛の喜びは消え」
憶測ですが、最初の通しは、ブレスを入れないようにするあまり、フレーズのおおきさが表現出来なかったのではないでしょうか?
ブレスを入れないことが、重要なのではなく音楽を本来あるべき姿で提示することが大事と考えます。
発声は、完璧なことはありませんが、最終的には発声の課題を隠すのではなく、課題を見せたとしても、音楽が本来あるべき姿になるような演奏を目指すべきでしょう。
朗々と、しっかりと、そして強弱のメリハリがはっきりした音楽を目指してください。
ヘンデルにしても、モーツアルトにしても、オーケストラの音楽によるオペラの舞台での歌唱、ということをイメージしたピアノ伴奏による演奏、となるべきと考えます。
歌曲とアリアの歌唱の違いは、ピアノ伴奏でも、違いを考えた演奏になるべきと思います。