OM

伴奏合わせでした。
マノンのアリアは、1曲目の「私まだぼんやりているの」では、アーティキュレーションについて。
Je という言葉は大事な言葉で、短い音符になっていても、テヌート気味に処理したほうが良いです。
このオペラは、リアリズム演劇の要素が強いオペラなので、歌うときにも演技を強く意識しないと歌が活きてこないです。

相手がいて語っているとしても、相手に向かって語って(歌って)いるのか?
あるいは、夢見がちに一人独白に浸っているのか?
という違いを、良く演技として表現してほしいです。
それは、音楽にテンポの違いになって表現されているわけで、演劇性が音楽になっている、という見方をすれば、自然にわかると思います。

全体に歌いすぎるために、テンポが間延びしています。
速く歌うところと、遅く歌うところの差をはっきりと。
全体的にはさっさと歌うべきでしょう。

特に、2曲目の「わたし、そんなに美しいかしら?」では、演説口調でどんどん喋り進んで行く、機敏さ、積極性がほしいところです。
語りの調子には、必ず強声と弱声がありますから、その違いも意味を以て表現してください。

いずれも高音発声は大変良く出来ています。

ドビュッシーの「悔悟」は、声が伴奏ピアノと合っていて、美しいメロディが楽しめますが、フランス語がほとんどわからない歌になっているため、フランス語の美しさが表現されていない点が惜しいです。

同じくドビュッシーの「アリエルのロマンス」は、これもきれいに歌えていますが、アンサンブルをもっと煮詰めてください。音楽の変化に応じて、テンポの緩急がもっと表現されて良いと思います。
声よりも発音が目立つ歌い方の方が、この曲には相応しいです。
確かに音域は高いですが、それほど張る必要はないですから。

モーツアルト「夜の女王」大変良く歌えています。
最高音の6点Fは、確かに完璧ではないですが、息の強さと口の開け方で、まだ開発の余地はあると思います。、

HA

イタリア古典歌曲集のAddio Corindo
音楽的な全体は、とても良くまとまって来ました。
イタリア語のアクセントをもう少し意識したアーティキュレーションが出来た歌い方になると、より立体的な深みのある歌になると思います。

新曲のミュージカルナンバー「あなたを見つめると」とても素敵な歌で、歌詞を訥々と語り聞かせるタイプ。
こういう曲をピアノ伴奏で、200人のホールで聴かせるには、日本語の歌い方に工夫がいるでしょう。

アーティキュレーションと言いますが、楽譜に書いていないが、強調する部分を探し出して、テヌートなり、スタッカートなり、あるいはコンマで切るようになどなど、歌詞が理解できるように音符の扱い方に工夫をすることで、言葉が浮き彫りになります。
もちろん、音楽のテンポも重要ですし、声質も、表現内容によって変わってきます。

それから、低域が多いので、これも発声は工夫が必要。
響きが潜らないように、高く集めた声を意識してください。
声量で押すと、ますます声が潜ってしまいます。

プッチーニ「つばめ」から「ドレッタの夢」
前半はしっかりと演説口調と、夢物語の独白、という2種類の歌声を使い分けてください。
後半のアリア部では、メッツァヴォーチェが中心です。
メッツァヴォーチェは上手に歌えます。
高音発声で張るときは、高音に昇る前から喉に準備して、口を縦に良く開けて吐き出すようにして歌ってください。
高音だけを処理しようとしても、逆に声が余計に裏返ってしまうと思います。
前段階からの準備、がキーポイントです。

TNA

フォーレ「レクイエム」のPie Jesu
Pの声が歌声の意識が弱すぎて良く響かないです。
歌声として解放的な響きにならない点も同様な点になります。

この理由が、どうも前回指摘したお腹の使い方に集中してしまった点にあるようでした。
腹筋を使おうとするあまり、結果的に息が吐けない歌声になってしまいました。
お腹を使う意識は横隔膜の働きをより強める意味がありますが、下手にやると息が入らなくなります。

そこで、まずはお腹を緩めてお腹を出すように、楽に入れる方法を取ってもらいました。
これで、まずは楽に息が入るようです。
息が入るようになってから、息をコントロールする方法を覚えることにしました。

楽器としての声は、最低限の響きが必要ですが、これを最初は表現とは分けて考えないと、なかなか身に付かない面があります。
難しく考えないで、まずは普通に声を適度に張って歌うことを基準にしてください。

トスティの「夢」
歌声で息をしっかり吐き出せるためには、まずは口を縦に開けましょう。
そのことで、自然に歌声に息が伴うため、結果的に高音発声も楽になってきます。
お腹は、今は緩めて下腹部に自然に入るようにして、楽に入ることだけに集中してください。

最後に「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」この曲を歌う頃には、声も練れて来て、ほぼ目的とするものに達していたと感じました。
やはり感情移入というものは、良い面に働く、と彼女が歌うこのアリアを聴いて感じるところです。
歌詞の内容の変化で、テンポが変化しますが、概ねテンポが速くなるところ、アクセルを踏んで一気に高音に昇って行くところなど、改めて良く意識しておいてください。

ST

イタリア古典で、基礎をみっちり練習してきましたが、その成果が出てきていると感じたレッスンでした。
5線の中の声質が、滑らかで艶やかな良い声が聴かれるようになりました。

換声点の発声も、成功率が上がりました。
この点については、発声練習時に、ハミングで口奥を伸縮するために口を柔軟に開け閉めして歌う練習をしました。
一種のストレッチのようなものですね。
カミーユ・モラーヌ先生にも「歌う前のマッサージ」と良く言われたものです。

特に換声点の喉のひっかかりみたいなものが、自然に無視できるような感覚を養うのに、良い練習方法だと思います。
要するに、声の音程や響きと口奥の歌う肉体感覚を一体化させることで、滑らかで自然な換声点の通過を促すのでしょう。

Gia il sole dal Gangeは、最初の通しで、何か元気のない歌になりました。
こちらが伴奏を弾いていると、後からついてくる感じでした。
このため、伴奏をつけないで目を見開いて人の顔を見据えて歌う練習をしてもらいました。
このことで、自分の意識を高めて伴奏に依存しない歌い進める力を意識に昇らせてもらいました。

具体的には4小節一息で歌うことです。
楽譜には、初心者用に(V)という具合に、カンニングブレスが記入されていますが、これを利用してのんびり歌ってはいけません。

この練習の必要性は、特に本番であがり症の人には大切だと思います。
何となくピアノ伴奏をバックに歌声を出す、ということは、ややもすれば他力本願になってしまうからです。
歌う、ということは、自分の意思をはっきりさせて、広い場所で訴える、ということが基本です。
綺麗に歌うという意味は、技術的な問題であり、精神的には、綺麗に歌う以前に、しっかりはっきり積極的に意思表明する、と思って行動することになるためです。

特にこのGia il sole dal Gangeは、意志の強い明快で軽快な意識を持たないといけません。
自分でテンポをしっかり決めて、さっさと歌い進む意識をしっかり持って歌ってください。

Pur dicesti,O bocca bella
これが、声がきれいな声質になり、またピアノ伴奏のリズムの緩急のつけかたで、かなり印象が変わってくるでしょう。
このルバート的アドリブ的な要素が出てこないと、ただのソルフェージュの練習曲になってしまいます。
前述のように、歌い手も自分で歌い進む意識は明快に持たなければいけませんが、この曲の場合は、伴奏者が音楽的な動きを感じないと、良い演奏につながらないでしょう。

Sebben crudele
これも、Gia il sole dal Gangeと同様に、カンニングブレスを入れないで、一気に1フレーズ歌うことを基本にしてもらいました。
これをやってもらうだけで、歌声のフレーズがしっかりする感じです。
サビの部分、中高音域の声は、喉の締まりが気にならなくなりました。