MT

プーランクの歌曲、ロベール・デスノスの「失踪」から始めました。
St.Martin Vin Copain,Pain,Matin,sain,Rien これらの語尾に共通するEの鼻母音。
これがほとんどAの鼻母音に聞こえています。
韻を踏んでいますので、ていねいに美しく処理してください。
もっと平たく深くないが浅くない、鋭くないが平たい感じ。
もちろん、強調する必要はありません。

全体の調子ですが、この詩が表している焦燥感を、どのように歌声に反映するか?という点、
まずリズムは、ゆったりのんびりしないほうが良いでしょう。後半の2連符は、急がないで。
テンポの違いの切り替えを良く出すように。

2つのアポリネールの詩。
1曲目の「アンナの庭」テンポが速すぎたので、テンポ設定をもう少し遅めました。
テンポの速さそのものが問題ではなく、この曲が表現しようとしているものを、どう出すかどうか?
ということです。
映画の場面が突然切り替わるような、素早い描写転換の面白さの切り替えの妙です。
声の表情の変化と、切り替わりの速さに、工夫を凝らしてください。

「さあ、もっと速く!」は、詩の訴える個人的な感情を自分に置き換えて、ストレートに歌声で表現したほうが良いです。
その意味では、クラシックというよりも、Pop、Chansonにより近い、と思ったほうが良いでしょう。

Le portraitは、ブリリアントなピアノ伴奏が目立ちますが、それに比して歌は、よりスタイリッシュな、実は秘めた情熱を表すように感じます。
声を強く出すと、ピッチが下がり気味になるので、あくまでピッチは高く、声の響きを丁寧に扱って歌うことを心がけるべきでしょう。
ピアノも強すぎないで、軽やかに丁寧に弾いたほうが良いと感じます。

AS

子音発音と弱声の発声と扱い方、フレーズのニュアンスなどを中心にしたレッスンとなりました。
フォーレの「秘密」から。
全体に子音の発語が弱く、子音発音が感じられない歌になっていました。
特に出だしのJeのJの子音がほとんど出ない。
母音先行型という感じでした。

この曲に限りませんが、声の響き、発声を考えるときに、母音単体、音程や音域だけで捉えないで、そこに子音という要素をいつも付随させるということも大きな意味を持つでしょう。
子音があればこそ、言葉が生まれる、と考えても過言ではないからです。

Chanson d’amour は、Jeという言葉の子音発音に注意してください。日本語の「じゅ」ではなく、あくまでJeという発音です。
イタリア語の同じような発音でGiaというのがありますが、このジャと違うのは、濁点の出方が柔らかいことです。

フォーレでもショーソンの歌でも感じるのは、基本的には良く歌えていますが、Les heuresもHebeにしても、どういう感情の立ち位置で歌っているのか?
感情のグレーゾーンはありますが、まずは喜怒哀楽、という4つの感情のどこに属するか?という考え方をした上で、自分の歌声の課題を考えてみてください。
人間の歌声は機械ではないので、基礎的な歌声の技術と共に、歌詞を歌うと言う視点を忘れずに持ってください。

子音の発語を正しくきっちり行うことと、歌う感情の立ち位置をなるべく明快にすること、そのための声の強弱の扱いという視点を以って、更に歌い込んでください。

TNA

フォーレの「レクイエム」Pie Jesu
息もれ傾向と不安定な響きを直しました。
まずPなどの弱声指示に対しては、ただ小さく、弱くというイメージを捨ててください。
強い声に対しての柔らかい物言い程度で良いのです。

発声的には、喉をもっと深く位置しておいて音程を出すように歌うことです。
頭から声が出るイメージよりも、喉の更に下から出だすイメージです。

トスティの「夢」は、低域の発声に気をつけてください。
中低音の発声では、発音の際に下顎で発音しないで、上あごで発音することで、響きが高く明るくなる点を、意識してください。
逆に、換声点近辺になったら、喉が上がらないように対処してください。
下顎を降ろしていくのが簡単ですが、狭母音の場合は下唇に力を入れていくと、喉が上がりません。
また、声の方向も後ろに引くようにすることも、一つの方法になるでしょう。

蝶々夫人の「ある晴れた日に」
これも今日のフォーレのレクイエムのアリアの練習でやったように、声の出だしのポイントを深く意識しました。

特に出だしの母音は狭いUです。強く出す場合は、下顎も降ろして、母音をOにすると、喉が上がらない〈締まらない〉でしょう。

この喉が上がらないで、深いポイントで歌うことを覚えてもらいました。
最後の最高音は、それでも喉は上がりますが、ちょうど良いポイントに収まるようになったと思います。
それは、そこに至るまでの発声で、喉が上がらない発声が出来ているからなのです。

MM

イタリア古典歌曲集から、Se tu m’ami 出だしの5点Dの声が、ファルセット傾向が弱まり、ビブラートが付いてきていたのが進歩でした。
全体には、前回までに教えた発声方法が浸透して、良い歌声になったと思います。

Lascia ch’io pianga
レシタティーヴォを入念に練習しました。
アクセントを意識して強調するように歌うこと。
これがなかなか出来ません。
歌っていると、自分の歌声に依存してしまい、イタリア語のアクセントにマルカートをかけるような歌い方に、無意識に抵抗してしまうのだと思います。
楽譜に書いてることから外れたと思うくらいで、ちょうど良いのです。

Ave verum corpus
これも、基本的にはブレスが長く、良い歌声で歌えています。
最後の長いフレーズも、後一歩の感です。
大きい声を出さないが、密度のある声質で、息をコントロールすれば必ず一息で歌えますから、もう少し頑張ってください。
長いフレーズを一息で歌う練習を続けることで、歌声の息のコントロールを体が覚えてくれます。