TH

体験レッスンでした。
音大を出て20年ほど経っているとのこと。
ブランクが8年あるとのことでしたが、良い歌声でした。

声の印象は、ややメゾ的な喉のよく開いた少し暗めの声でしたが、その個性は魅力的だと思いました。
充分に、音楽的な表現が出来る歌声を持っていると思いますが、本人は細かいビブラートと暗めの声が気になるようでした。

深めの暗い声の理由は、喉を良く開ける発声だからと思いました。
そのために、4点Gくらいから下の音域では、やや息混じりの声になります。

ビブラートについては、喉の使い方に因があるかもしれないと思い、今回では声の響きを高く集める方法を練習しました。
要するに、喉を開ける意識だけなく良い意味で使うことによって息漏れをなくすと、結果的に震えが軽減するのではないか?という理屈です。
震えはビブラートにかぶさる現象ですが、息と喉との関係になるためです。

練習は、母音をIから始めてEAOUと同じ音程で移動する練習です。
Iで歌い出せば、自然に声帯は合わさる傾向ですから、他の開母音でも合わせる意味が解る、という練習法です。
彼女は唇が良く言えば自然ですが、やや喉を意識しているせいか、硬いので口角を少し上げて微笑むようにして歌うことで、自然に明るい高い響きになることを教えました。

後は、ハミングの練習方法です。
口を開けたハミングで、軟口蓋を意識して高く取ること。
そのハミングをやった後で、ハミング→舌をはずして瞬時に母音に変換する、という練習をして、母音が明るくなる方法をおしえました。
これは、上手く行く人と行かない人がありますが、彼女は一発で上手く行きました。
この理由は、元々喉を開ける方法が判って出来ているからです。

最後に、イタリア古典歌曲集のNel cor piu non mi sento、Se tu della mia morteの2曲を歌ってもらいました。
1曲目は、今回の発声で教えたことを中心に、ピッチの高い明るい声を目指しました。
2曲目は、何もしなくても良い歌声ですが、あえて今回の課題を練習することでピッチの良いすっきりした歌声になりました。
感情表現の暗い曲であっても、歌声の基本テクニックとして明るく通る声にすることで、ホールでも力まないで音程の良い音楽的な歌声を目指してください。

勘の良い方、という印象でした。
また、普段から良く研究もされているせいもあるでしょう。
少し練習を続けて行けば、急速に上達すると思います。
今後の発展が楽しみです。

MYM

発声練習は、軽く下降形から始め、上向形にしました。
換声点辺りが心配でしたが、何か力が少し抜けて来て、以前ほど喉を突っ張らせてしまう傾向が軽減去れているように感じました。
この感じが、後々の良い結果に繋がって行ったと思います。

今回のレッスンで有意義だったことは、この喉の突っ張りの原因が、軟口蓋を上げる意識に偏っていたこと、ということが判明したことです。
道理で、以前から口を開けなさいと指示しても、口が開かない発声になっていたわけです。

口が開かない発声というのは、下あごの動きが硬くなっている証拠で、

Ombra mai fuから
低音の4点Eから下の声は、はっきりと下の声区の声に返してしまって良いでしょう。
その方が息が続くと思います。

概ね上手く歌えていましたが、最後のSoave Piuの5点Eが、喉を突っ張らせて、音程がはまらない以前の癖が出たので、Uは狭い母音ですが、あえて口を開けるように指示しました。
Piuは母音がUですが、これを止めて、PIOのように、口を縦にはっきり開けるようにしてもらいました。
ここで、大事なことは、Soaveの最後の母音Eの5点Dの発声で、すでに口を開けて喉を開けた発声が出来るようにしておくことです。
この場合も、息で力任せに出さないように、力み過ぎに気を付けてください。
音程が合う程度の声が出ていれば、良しとしてください。

ベッリーニのMalinconia 
こちらも、テーマは同じですが、こちらの方が歌いやすそうです。
Allegroで、焦燥感のある歌になればよいからかもしれません。
高音は、ブレスポイントを間違えると出なくなるので、くれぐれもブレスを忘れないように。
忘れなければ問題ありません。
修飾音符も、正確に再確認しました。
良く練習しておいてください。

「お菓子と娘」
低音域は、ピッチの高い声、高く集まった声を少し意識するほうが良いでしょう。
同時に、レガートで歌えるように、喉奥で発音するような意識が必要です。
あとは、本人の歌心で良く歌えていると思います。

TF

伴奏合わせでした。
シューマンのIntermezzoから始めました。
最初に気づいたのが、音程跳躍の際に軟口蓋を上げようとし過ぎている顔でした。
実は以前から変わらないですが、歌うときに顔の上半分をひどく緊張させます。
また、高音に上がる際にも目をつぶってしまうことも、この軟口蓋を上げようとし過ぎていることが理由ではないでしょうか?

特に、2曲目のシューマン「詩人の恋」の「美しい5月」の最高音を発声する際に、どう考えても喉が上がり過ぎた声を聴いて確信しました。
そのため、唇を使って喉が上がらないようにする方法を教えました。
喉を上げないための練習方法としては、この発音時に下唇を意識する方法が、今回初めて成功したように思います。

今迄、音程が下がる原因として、太く当たること、胸声傾向の強い発声であることを指摘して来たこともあり、軟口蓋を上げる発声を練習してきました。
これは換声点の一つ前の低い換声点、4点b~hを境に高い5点Fの換声点の間で、最も問題になっていました。
この領域は、声量の扱い次第で、大分改善はされてきたと思います。

そして、高い換声点から上が、換声出来るか出来ないか?という点が最も大きな課題でした。
今回、喉が上がるこの領域を、下唇を下に向けて突き出すような方法を取ることで、喉を上がらせないで発声するのですが、
なんとか5点Gまでは出来ても、Aになると難しいです。
これは、鼻腔(あるいは頭部)へも向ける意識もバランスしないと、難しいでしょう。

シューマンの2曲、あるいはモーツアルトの「すみれ」は対応範囲でした。
ドナウディの「限りなく美しい絵姿」は、5点Aになります。
これは、かなり難しかったです。鼻腔および頭部を意識するバランスが必要になります。
頭部や鼻腔にバランスを取るため二は、上唇を上にめくれ上げる方法があります。
これは、次回試してみたいと思います。