2017年4月25日の声楽レッスン
TH
このところの厳しい?レッスンの成果が急激に出てきました。
声の音程感が高めになり、すっきりした明るい声になりました。
いままでの喉を意識して落とした暗い声は、彼女の場合はその意味が感じられないもので、デメリットでしかなかったと思います。
それでも、彼女の場合は素直な喉で癖が悪くつかなかったのが幸いして、ちょっとのことで、とても改善できたのは、資質だと思います。
ドナウディのSpirate pur spiraet
良く歌えています。あとは口の開け方や喉の開け方に工夫をして、声の共鳴を意識した発声によって、声のスタイル感をより出して行くとよりクラシカルな雰囲気が出せるでしょう。
Ombra mai fu
出だしのOは、母音なので出しにくいですが、母音のアタックほど少しの呼気を止める間があることで、やりやすくなります。
そのためには、口先をあまり開けないで喉の奥を少し飲み込むような感覚で出だすと良いでしょう。
あとはこの曲の最高音ですが、彼女の場合は換声点から上を軽く細く出すようにフレーズの声の配分を考えました。
というのも、換声点から上になると、喉を下に押し込んで太く出そうとする声が、乱暴な印象を与えるからです。
「サムソンとデリラ」は、本来太いアルトやメゾが歌う曲ですが、彼女が歌うのであれば声質を作らないで、
ピッチの良い明るい声で表現する方が良いと教えました。
オペラそのものをやることはないので、この曲のメロディの美しさが際立てばそれで良しとする考え方によります。
また、太く出すと、彼女の暗く太く出す悪い癖が出てしまうからです。
モーツアルトのNon mi dir を練習しましたが、どうもメッツァヴォーチェが苦手のようです。
側で声をよく聴くと、声の出し始めがとても良い柔らかいピッチの良い声が出ますが、無意識に息を押してしまうようです。
この曲の冒頭は、特にレガートなメッツァヴォーチェが必要になります。
フレーズも長いですから、呼気を保つ腹筋を意識してください。
MYM
今回は、彼女が自分でやる発声方法を尊重して練習を始めました。
やってみると、なるほど喉を押さないで丁寧に出していることと、そのために問題になる換声点の発声で力みが軽減している感じでした。
実際にドナウディのO del mio amato benを歌ってもらうと、喉仏の上からあごの下にかけての「おとがい」の大きかった膨らみがかなりなくなっていました。
本人の自発的な練習で、ここまで出来るようになったことは大きな進歩だと思います。
その上で、声の出し始めを息を意識して漏らすようにして出し始めることで、声帯の柔軟性を高音まで持たせようという発想は良いと思います。
ただし彼女の発声の課題は、息が持たないということも大きいのです。
声を丁寧に出し始める点は良いとして、息漏れで対処しないで声帯を合わせる点を教えました。
声を出すのではなく息を小さく少しだけ吐くときに、声帯が合わさる音がかすかに聞こえるような呼気の方法を教えました。
この感覚を基に、声の出し始めで息漏れを出さずにきれいに合わさった声で出し始めること。
それが出来れば、後のフレーズを自由に息で歌いまわせるはず、なのです。
この声の出し始めの無駄な息漏れを減らすことと、歌うときの呼気のコントロールが上手く行くと、ブレスが続くのです。
恐らくブレスが続かないのは、息漏れよりも、横隔膜のコントロールが出来ていないせいだと思われます。
身体の使い方を細かく説明すると混乱し勝ちなので、側腹から腰を膨らませるように息を吸って、その膨らんだ部分を保持するか逆に拡げる様にフレーズを歌うという方法を練習しました。
腰から側腹にかけてを手でしっかり押さえて、少し前屈みになった姿勢で歌ってみます。
これは、彼女の癖である胸呼吸を少しでも軽減させる意味もあります。
胸を高くした姿勢は、胸呼吸になりやすいからです。
この方式で練習した結果、Vaghissima sembianza は、高音5点Aがピッチが良くなり安定してきましたし、ブレスも伸びてきました。
この側腹から腰にかけての膨らみを意識し保持する方法は、以前も取り上げましたが、バスローブやナイトガウンのの腰ひもなどを利用してお腹の下部をきつく縛って練習する方法も、体感を覚えるのに良いでしょう。
側腹から腰を膨らませたり、歌うときに膨らませるようにすると、上腹部が自然に前に出ます。
これは、横隔膜が良く収縮して、内臓が下に押し下げられる結果なのです。
従って、ブレス時や歌っている時にお腹を前に押し出すこと自体、が良いという意味ではなく、前述のお腹の使い方でブレスができると、自然に前に出るのが良いという理解が正しいわけです。