TSS

発声に関しての理解は、大分深まってきて、こちらの指示に対する反応と結果は非常に良いレベルになったと感じました。

今回の課題は、喉を開けるということ。
喉を開けることの意味が=喉を下げるの意味で、輪状甲状筋の働きを促す意味という点を説明しました。

声帯をより大きく、そして気道も拡げて高音を発声することで、広がりのある高音の響きが出ます。
この発声で勘違いしてほしくないのは、重い声を作っているのではなく、声楽発声の基本であるということです。

コンコーネの15番から9番は、この点を修正して上がりにしました。
良く歌えていました。

他に、「連隊の娘」の「さようなら」そして「トゥーランドット」リューのアリアを練習しました。
いずれも換声点から高音にかけての発声において、喉を開けることを主眼としました。

喉を開けるための輪状甲状筋の働きは、母音のIで練習すると働きやすいですから、なるべく母音のIからEそしてAという移行練習をすることが必要です。
特に彼女の場合は、譜面を見ながら歌うせいもありますが、顔が前に出過ぎていることとに注意することでしょうか。

今回の発声の指示で、全曲がほぼ思い通りに良く出来ていたと思います。

FT

喉をかばうあまり、声帯を開いてしまう傾向が中低音の発声になって、声質に影響しているようでした。
特に中音域が多用されている、「椰子の実」は、声の響きが出ないため、フレーズ感のない音符をなぞっているだけ、のような状態になってしまいました。

中低音域は、胸声そのものが悪いのではなく、その使いかたの問題なのです。
声帯を合わせて良く振動させるが、その程度の問題ということです。

今までも、何度も練習していますが、ハミングで音程を合わせつつ、声帯の合った響きを作ること。
その練習から母音発声に導くこと、という手順です。

中低音で、この練習を徹底してあれば、問題なく響きのある中低音発声は出来るでしょう。

トスカ「妙なる調和」は、換声点近辺の発声が多いので、前述の中低音発声の問題は表面化しませんが、まだ高音発声は苦しい所です。
高音に昇るフレーズとして、柔軟に喉を開けて高音に至る、というところを、練習してください。

中音域から普通に歌いながら、喉を開けて行き、高音発声のタイミングでは完全に喉が開いている、という流れがあるかどうか?という点です。
いきなり高音発声で喉を開けるのは、タイミングが遅く無理なのです。

AC

今回のレッスンの課題は、高音発声で喉を開けることと、中低音の発声の違いをフレーズ中で意識して切り替えるという点の2点でした。

曲は、ドビュッシーのAriettes oublieesから1番、2番、4番を練習しました。

まず1番は、中低音の響きがピアノ和音に良く溶け込み、かつ和音の上に乗る音色が必要です。
このため、地声を混ぜた低音発声に留意してもらいました。
以前から地声とその上の声の違いについて、レッスンしてきましたので、あまり大きな段差を感じませんが、意識して利用しても美的に問題は有りません。
また、利用したほうが音楽的にも良い効果が、彼女の場合はあります。

高音発声は、喉を詰めてしまう傾向が強いので、とにかく開放的に出すことでした。
そのためには、喉を無意識に下げようとせず、むしろ上げようとして出すこと。
具体的には、顔を上に上げて声を吐き出すように出す、ということです。

この時、喉奥を拡げるような意識を持たないと、ただの叫び声になります。
すこし喉奥を拡げる意識は持ってください。

このような観点で3曲目を除く3曲を練習しました。
1曲目は、冒頭の低音発声に注意。そして中間部の高音発声は、ぎりぎりの小さな声で当ててからクレッシェンドすること。
これが、喉が開いているか開いていないか?で実声と裏声の差が出ます。裏声ではクレッシェンド出来ないでしょう。
そして、最後の高音発声をよく喉を開けること。
この最後の高音は、良く喉の開いた発声が出来ると、本当に実感のこもった感動の声になります。

2曲目も高音が頻発しますが、気を付けるのは弱く当ててクレッシェンドすることと、喉を開けて解放的に出すことです。
低音は、しっかり低音発声に戻してください。

3曲目「木馬」は、意外と弱声が表現されていることと、レガートではなくマルカートやスタッカートで、言葉を明快にだすことを大事にしてください。

WN

発声に対する勘が鋭くなり、修正が非常に速くなった点が大きな進歩です。
適正な発声練習を行えば、響きの質も声量も充分な歌唱力を発揮できると思います。

発声練習で留意してほしい一番大きなポイントは、母音のIで初めて、中低音はなるべく喉を合わせるように意識することです。
喉を深く、と常日ごろから言われているのか?下顎を降ろして発声するため、喉の合わない響きになっています。

これが、声の通りを悪くし、結果的に高音発声で喉を締める発声に繋がる、と思っています。

MやNなど、鼻腔を意識しやすい子音を付けて母音のIで練習します。
そして、下あごを絶対に降ろさないことです。
唇は使うと良いでしょう。
上唇は音程、下唇は喉を上げない事に寄与します。

これで中低音の響きが密で息漏れがないように出来れば、それだけで他のことは解決すると言っても過言ではありません。

ただ、彼女自身が言っている通り、本番、特に練習時間の少ない発表会で、いかに練習時の調子を本番で発揮できるか?ということがあります。
喉の暖まりは、練習が直前に出来なければどうしようもないですが、本番の歌い出しで、練習時のように声が響かないとしても、焦らないでじっくり待つことです。
これは、プロでも同じことなので、悩む必要はありません。

この点に関しては、恐らく、普段からの喋るときの意識された発声によって、変わって来ると考えています。
ですから、普段の喋りでも響く声を意識することは必要でしょう。