TM

発声練習を中心に、カンツォーネを歌いました。
彼に限らず、本格的なオペラ歌手を目指すのではなく、
コンサートで通用する声楽家になるための発声を指導しました。

バリトン、テノールというキャラクターよりも、音域をまず確保するための発声という考え方です。
換声点をそのままの太さで通過しようとすればするほど、彼の場合声がデックング(コペルト)されてしまうことを
忌避することです。

この方が、より音楽的と考えます。
特に彼が歌うカンツォーネなどはその傾向が強いでしょう。

ただし、マイクで歌うのではなく声楽として歌うわけですから、生の声の響きの良さ美しさを持たなければいけません。
歌いだしで喉を緩めて息混じりにするのは良くないです。
力まない声は大事ですが、きちっと当てた声にしましょう。

母音のAに強い癖があります。
これの修正方法は、母音Eを基準にして改めて響きの質を同じように感じて母音のAを発声すること。
母音のEは、舌根が盛り上がるため気道が空くという点と、舌根が盛り上がるため喉頭の引き上げが働くために、対抗する引き下げが働きやすいわけです。

言い換えれば喉を下げ過ぎないようにすることで、喉の柔軟さを取り戻すこと。
上げない、という感じで良いのです。

今回やりませんでしたが、しっかり顎を引いて首の後ろがしっかり立っている状態を保持することが大切です。

WN

年数はかかりましたが、ようやく私の指導が実を結びつつあるなという発声が感じられるまでに成長したと思います。
月1回のペースで、合唱を週3回やっていますので、どうしてもレッスン時は合唱の声になっていますが、しばらく発声練習をすると
見違える声になります。

合唱でも同じことだと思うのですが、なにか喉を意図的に深くする発声をするようで、これが低音発声が出なくなる原因の一つです。
もう一つは、高音への換声点前の発声を、簡単にファルセット的に出してしまうことです。

母音のIで発声を始めると、たとえば口を開けて喉を深くする発声をします。
これは低音域では、かえって声帯が合わない発声になりますので良くないです。
基本的には声帯が良く合う発声を意識してください。

このためには低音域では喉を意図的に下げることをしないのです。
そのために、低音域ほど高い場所で響かせる意識を持つこと。
そのことが出来ているうえで、共鳴効果を持たせるために口を開けることは、意味のあることと言えます。

声帯を合わせることと、共鳴を持たせる行為は、別のこと、と理解してください。

これと同じことですが、換声点から高音域にかけては、本能的に喉が締まりますので、意識的に喉を開けて行きます。
つまり喉を下げていくわけです。
ただ、喉を下げようと考えるより、喉の下の気道を拡げると思った方が、余計な悪い力みが出ないです。

AC

彼女の発声の身に着いた癖の中で、もっとも課題としなければならない点を、今回は徹底して矯正する方向でレッスンをしました。
特に注意した点は、中音域~中高音の換声点前まで。

特に声量を増していく際に、喉に入れる力が独特の働きをして、共鳴のような効果で声がこもります。
管楽器、それもホルンなどのような少しくぐもった声になります。
これが、声の通りも悪いしクリアなイメージがないのです。

恐らく、舌からおとがいにかけて、いわゆる舌根と私が呼ぶ部分に力を入れてしまうのだと思います。
これを避けることで、声に明るさが出て倍音のある響きになります。

これを容易に意識する練習法としては、母音のIで歌ってみることです。
その際に、これも喉を下げようとしないことと、響きを鼻腔に通す意識を持つことです。
これで出てくる響きの質、倍音というものを覚えてください。

そして歌詞発音によるときも、なるべくこの倍音が出るように意識することで、自ずと舌の使い方や、顎の使い方が身についてくるでしょう。

後はクレッシェンドして声量を増すため呼気を吐いていく際に、喉を下げる程度に気をつけましょう。
恐らく喉を下げ過ぎてしまう、というか舌で押し込めることで安定させる感覚が強いのでしょう。
むしろ、喉を口から吐き出すような感覚で発声すると、力強い高音発声になると思います。