ADY
数年ぶりであったが、変わらぬ歌声で良かった。
15年くらい前から、遠くから通ってくれていたが、当初は本当に声がか細くて
ピアノ伴奏にも不向きなくらいであったが、ようやく声が前に出るようになってきたころに、いろいろ忙しくなり来られなくなった。
そのため、声が元に戻っていないか?心配したが、それは杞憂で終わって良かった。
とはいえ声の基本的な部分として、ある種の合唱の声に特化した発声になっているため、本質的な部分として未だ未開発な面がある。
その一つは声帯自体の使い方にある。
声帯を積極的に振動させるために、いわゆる「喉を合わせる」という方法が未開発な点。
今までもいろいろ試しながらやって、それなりの進展はあった。
タイミングもあるが、今回は多くの方で効果がある、歌詞の朗読がもっとも効果的だった。
歌詞を高いトーンとなるべく声量を上げて読み上げる練習。
彼女の読むスタイルを見ていると、恐らく無意識で顔を上げて、喉そのもので地声を張った声で語る。
この姿勢が、その発声の基本を物語っている。
つまり顏を上げないことで鼻腔を使った発声が出来ることによって、声帯が適正に振動した発声につながりやすいということ。
これがわかれば、実際の歌声においても、声帯のエッジのピンと立った明るい輝かしい響きになるだろう。
以前からも指摘している通り、母音はEやIなどを使って譜読みと歌う練習はしておくべきだろう。
曲はドニゼッティのEterno amore e fe
最初から結論めいて恐縮だが、この曲も後のロッシーニのInvitoも、歌詞の朗読をしっかりやったことによって、かなり声が響く状態に持っていくことが出来た。
もちろん、発声練習をしたことで喉が温まって、彼女が身に着けた発声の努力も大いに貢献していたことが確かだ。
イタリア語の場合、アクセントが長母音化しているわけで、当然そこに長い音符が来ることが多い。
したがって、朗読時にアクセントを高くはっきり語ることを練習しておくことで、自然と響き感が増す声になる。
彼女場合、ファルセット傾向の声を長く使っていたことが、逆に良い意味で胸声の練習をしっかりやっても、相殺されて良い具合にミックスした声になりやすい。
これが、ファルセットも知らない声だと、かえって上記の練習は逆効果になるのかもしれない。
今回の練習はとても効果があるので、日常的に良く練習に利用してほしい。
WN
発声練習時から、中低音の響き感が増したことがはっきりわかる声になっていた。
長年練習を無理なく積み重ねた成果が、ようやく花開いたと喜んだ。
ただ、I母音などで口を開く傾向があり、これが鼻腔発声をつかみにくくしていることもあるが、それでも恐らく本人の感覚がそれを補っている気がする。
また中低音で響きがついてきたことで、高音の換声点近辺の声も良い意味で太さが出て、しっかりと腹の座った声になってきていると思う。
曲は、フィガロの結婚から、伯爵夫人Porgi amor
出だしのPoは母音Oなので、ピッチが落ちやすい点に注意を。
下あごを降ろし過ぎないで対処することがコツ。
他の2曲も指摘した点は、ほぼ同じようなことだった。
注意点は、ドイツ語の語尾の子音処理。
相当意識して発語することと、リズム的にどこで子音の発語をするか?という気配りはし過ぎても困ることはないだろう。
モーツアルトの「スミレ」は、PPでの声。
喉を緩めて気息的な声にならないように。
「クロエに」も中低音域が声量豊かに美しく歌えていたのが印象的だった。
最後に出てくるAber seligの音程の跳躍時に喉の準備をブレスで決めておくことで、喉を締めすぎないように注意を。
最後にベッリーニのマリンコーニアを。
中声要で練習したが、これでも中低音が十分使える声色であったが、やや低めの感もあったので、オリジナルキーでやってみた。
どちらかというと、オリジナルキーの高い方が彼女には向いている、というか、この曲の表現に適っている気がした。