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発声練習では、思わず顔をみてしまうくらい、中低音の声が良く響いていた。
喉が十分にリラックスしているからだろう。

これにヒントを得てレッスンの課題となった。
中低音域、つまりト音記号の5線内の声の扱いのフォームを変えてもらった。
歌う音程感とも関係あるが、声の出しはじめをもっと低く構えること。

具体的には、当該音程を含む和音内の4度ないし5度下の音程を歌ってみて、
その喉の状態を変えないようにして当該音程に跳躍してみる。
こうすると、ピアノの和音感と声との関係が密になって、品の良い落ち着いた声が出てくることに気づくだろう。

品が良いというか、本来彼女の持ち声でクラシックの声楽作品を歌う場合の声のフォームはこれくらいの落ち着いた重さのある声なのではないか?と思った。

順次曲を歌っていったが、まずドナウディのAmorosi miei giorniから。
低音の多いこの曲にちょうど良かったのだが、母音Aの発音で、かなり喉奥から出し始める意識。
そして音程跳躍の際に、喉を上げないように気を付けること。

それから、やや理解が難しいのは、フレーズの最初に喉の当たりを強めにして響かせることで、その後のフレーズを軽やかに息を自然にいていくようにすること。

あたかも、グラスハープで最初の擦りを強めにすると、グラスがビ~ンと響き、その後、自然にグラスは響き続ける感じによく似ている。
弦楽器も同じことであろう。

ルッツィのAve Mariaなど、今回の発声の改善により、あたかもイタリア人女性が歌っている雰囲気を髣髴とさせてくれた。

「春なのに」は、中低音が良い声になると、張った声の浅薄さがかえって気になってしまった。
前回のレッスンで、演劇的な解釈による歌唱を指示したが、これは間違いであったと思う。

これも良い声で歌う路線に方向転換した。
こうなると、音楽が自然に表現してくれることになる。