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発声練習の声を聴くと、大分中低音の声に良い厚みがついてきて、バリトンらしい声になったと感じた。
特に低音は、以前に比べて下に向けて声の響きが付いてきたと思う。

実際の歌唱で話題になった、声の共鳴。
共鳴と言うのは、感覚的に言えば口腔内の反響というようなものだが、
これは喉で生じた声帯が出す響きを、口腔内の容積の大きさとの関係で、あたかも反響して響きが倍加するような効果を意味している。

声帯そのものの振動に集中すると、耳は耳骨経由で聞こえる振動が強く聞こえてしまうことになる。
共鳴を起こした声の響きは、口の前方で響きの感覚が生まれるので、声帯そのものの響きから離れた感覚が生まれる。

これが、喉に負担なく良く響く歌声を産み出す大きな理由になるだろう。

共鳴を起こすコツの第一は口の開け具合で、声がどのように変化するか?ということに敏感になること。
それと、もう一点は、高めの換声点直前くらいで大きな影響が出るのが、声帯そのものを強く合わせよううとしないで、少し開き気味の意識で呼気を使う感覚をイメージすること。
この感覚は、歌声をフルート系の管楽器的を扱うイメージが近いだろう。

実際は声帯が響いているのだが、感覚的には口腔内の大きさの加減で共鳴が生じたり減じたりするのがわかるはずである。
ホーミーにも近いかもしれない。

このように共鳴を利用するのは、特に歌曲においては声の響きと母音の美しさを際立たせる大きな効果が得られるので、興味がある人はぜひトライしてほしい。

フォーレのAu bord de l’eauは、歌いこみがまだ足りないのか、母音の共鳴感がもう一つである。
特に中高音と低音の声質に工夫が必要と感じられた。
とはいえ、良く歌えて入る。歌曲歌唱における、高度な芸術的な方法論のレベルである。
対して、En priereは、全体に良い声質で滑らかに歌い通している。
強いて言えば、最後に長く伸ばすEのあいまい母音が、やや暗くOに聞こえること。
正にこの発声で必要なのが共鳴と言う概念になるだろう。