ADY

今回は発声の課題は深追いしないで、歌い方テンポの問題に特化したレッスンとした。
それは、実際にかなり積極的に声を前に出して歌えるようになってきているせいもある。
声についての課題は持たずに、曲の練習で様子を見ることにした。

ドニゼッティEterno Amor e fe
音楽に表現されている感情の変化を、楽譜上の記述から考えてみた。
テンポ感、レガートの程度の違い、声の強弱という面。
優しさ、強さ、静けさ、優雅さ、悲しさ、怒り、と言った感情の変化が音楽に出ているから、
なるべくそのニュアンスを出せるように。

バッハのカンタータ149番のアリアGottes Engel weichen
細かいニュアンスよりも、この音楽の大枠が掴めるように通した。
テンポは3拍子だが、3拍めを良く感じると次の1拍めとのつながりが出る。
そうすると、全体的には2拍子のマーチ的な感覚が出るだろう。
人の歩みの感覚、その力強さを良く感じることが、この曲の宗教的な意図を表現することにつながるのではないか?

TM

発声では中低音のちょっとした声質について練習。
良い声が出かかっているが、ちょっとの声量の差口の開け方、舌の意識で変わってくる。
特にA母音が響きが抜けて暗くなる傾向。
これは舌を平らに固くするからであろう。

E母音のように丸く盛り上がり気味の方が、喉に硬直を与えないので良い。
言い換えれば、舌が盛り上がり気味の方が喉頭を少し引き上げる傾向になるので、明るい声になりやすいし、声帯も合いやすい。
気道も開くので良いことずくめである。
デメリットはA母音の場合、母音の形があいまいになりやすいことくらいか。

フォーレの「夢の後に」
Rを喉彦での発音が気になった。
フランスの口語で使われる(ドイツやブラジルも)軟口蓋のR発音は、日本人にはとても難しい。
声楽は発音も含めての音楽なので、美しくあるにはどうか?と言う視点を優先させるべきだろう。
慣れたRで統一した方が良いと思う。
かつてフランス留学で喉彦発音を要求されたことは一切なかったが、今はその扱いもあいまいなのか、フランス歌曲専門の先生もいなくなっているのではないか?
オペラはどうだろう?グノーやマスネーのオペラを喉彦で歌うフランス人はいるのだろうか?

彼はブレスが長い。利点であるが、であればもっと弱声で歌う方が効果的ではないか?と思われた。

「9月の森の中で」良い声が中音域で聞こえてきた点が進歩である。
低音域がもう少し柔らかく響くと、この音楽の美しさが倍加すると思った。
後は語尾のあいまい母音や、狭母音が暗くなる点が気になった。
共鳴という意味がこちらが思うことと本人が感じていることとで違うのではないか?
狭母音の共鳴で言うなら、特に中低音域では、もっと高い位置での共鳴すなわち鼻腔共鳴が必要と思うのだが、本人は低い喉に近い場所の共鳴腔を利用しているように感じられた。

「ネル」
これも語尾の狭母音の処理が難しい。
一例を挙げると”Amoureuse”の場合、語尾とその前の母音がOに聞こえてしまう。
共鳴を意識するからだが共鳴の場所が低いから。
この場合の共鳴は軟口蓋より高い場所を意識すべき。