EK

発声練習からビンビンと良く響く声で絶好調であった。
曲はモーツアルトのコンサートアリア集から3曲をざっと通した。
ほとんど譜読み状態なので、コメントすることもないが、今後の課題を感じるのは、
やはり5点A以上の高音で喉を締めてしまうこと。
喉奥を拡げた状態でいかに息を通して歌うことが出来るか?というイメージが大事。
更に言い換えれば、息の流れを意識できている歌声ということ。

もう1点は細かいメリスマを歌うリズム感の重要性である。
つまり粒のそろったメリスマの歌声を得るために、大きなしっかりしたリズム感を感じ取れていること。
これはブレスと声の関係がしっかりできているか?
ということなので、音を取るだけ譜面を読んでいるレベルでは難しいだろう。
やはり音楽的に感得したブレスタイミングにで、音楽のリズムを大きく感じて歌いこむ練習を重ねることに尽きるだろう。

この練習は歌わなくても出来る。
つまり楽譜を見ながら歌うためのブレスをしっかり意識して、歌詞を楽譜のリズムで読むのである。
その際に声は、ひそひそ声(ささやき声)にすれば良い。

TNT

14年ぶりくらいにレッスンに来られた。
プーランクの「モンパルナス」をメインにレッスンとなった。

他の先生のところでレッスンを継続されているので、声のことを指摘するのが難しいことがまず第一にあった。
その上で、徐々に声を指導していった。
今日の指導の基本は、歌詞と音楽が表現している世界を、いかにTNTさんの自然な良い声で表現できるかどうか?

それは発声法という生理学的な方法ではなく、感情から沸き起こる自然な表現を探す行為であった。

というのも、彼の歌声がやや作り声的であったこと。
確かにバスバリトン的な歌声の調子であったが、それがこの音楽に相応しい歌声だったか?
彼自身の歌声であったか?という面に疑問を感じたからである。
かといって発声法という側面で指導しようとすると、恐らく本人が迷ってしまうだろうと思った。

声を否定することなく音楽に相応しい歌声を得ること。
読譜面で言えば、強弱の指示は絶対である。同時にその意味を、歌詞と音楽から考えるべきである。
なぜDolceなのか?という意味を理解できているかどうか?
そこから歌声はふさわしい姿を見せるだろうと思った。

それらのことは、結局歌詞の読み込みから得られる脳内に浮かぶ景色や、感情を呼び覚ましてくれるだろう。
そして、その感情やイメージを許に、フランス語の朗読を練習することが、彼の場合は効果的ではないだろうか?