TM
発声練習は低音~中低音で良い声が聴かれるようになった。00:10
やはり中高音から換声点越える声域は、喉が高過ぎない範囲でアペルトに出す方が良いと感じた。
発声の用語で書くと何やら無機的な感じがするが、要は男らしい歌声ということをイメージすると良いだろう。
テノールにしてもバリトンにしても、彼の場合の喋り声の男らしさ的な響きを、そのまま歌声に反映できると良い声だ、と感じるのである。
フォーレのAubadeは、発声練習で思った通り男らしい力のある、明るい歌声で通すべきだろう。 09:00
彼の現状としては、何となく絵に描いた餅のような繊細さとか曲想から漠然と感じるやさしさを出そうとして歌うより普通の男が情熱的に歌いこんだ感じが一番ぴたりとはまった印象になる。
シューベルトのMorgenlied 15:18
こちらは発声の技術的な難易度が高い。
発声法的に言うと、最もミックスが進んだ中低音の声質がほしいのである。
現状は、声帯が太く硬く当たってしまう傾向が強いため、柔らかさとか艶やかさにおいて今一歩である。
また音域的にも深みが欲しい。
ドイツリートのバリトン音域なので、余計そう感じるのだろう。
この声質を得るためには、声量のコントロールが出来ていることと、声帯の扱いとしてもう少し声のミックスが必用である。
ブレス時にあくびの状態を作って、スタッカートのA母音でメロディを歌う練習からレガートにという流れで、声質の練習。
案外この音域で声が安定しないのは、このあくび発声による声のミックスを作る点が未熟だからであろう。
歌うときに、声帯を柔らかく柔らかく扱うが、息漏れは起こさない発声をする、ということを追求してほしい。
デュークのAubade 032:05
こちらはほぼテノール音域の曲であり、音域的にも喉のポジションをあまり低く意識しない方が良いだろう。
この発声のことで誤解を招くのは、喉の位置決めの話であって、喉を音域に応じて変えるという意味ではないこと。
換声点でポジションを変える、ということではまったくないこと。
つまり音域が高くなってきたら喉を高くしてしまうという意味ではないのである。
最後の高音ではアペルトに開放的に思い切って出すということだけで良いだろう。
前回教えたように、二重母音的に扱い、最初の子音アタックで音高を出すように扱うと良い。
I母音は、口先を開けるようにして声を押しすぎないように注意すること。
口先さえ開ければ自然に歌声ははまるはずである。
音楽的には独特の転調を明快にするため、声量の違いを意識することで明快になるように指導した。
転調前を抑制して、転調後を強めにした。
レオンカヴァッロのMattinata 46:15
この曲が現状のTMさんの歌声でもっとも自然に歌える作品という印象である。
テノールかバリトンか?というよりも、彼の現状の発声は太い弦を強く弾く発声スタイルになるため、このような曲が歌いやすいはずである。
従って高音も、そのまま開放的にアペルトに歌うスタイルが、聴いていて最も気持ちが良い印象になるのである。
最高音が叫び声ではないですか?と気にしていたが、以前に比べると、アペルトで歌っても声がひっくり返らないことと、喉が締まらなくなったと感じた。
つまり
最後に、シューベルトやフォーレなどの中音域のミックス声は、何と言っても口を開けたハミングでピッチを高くしかし喉は深く、を練習する方法が一番であると感じた。
うっかり忘れていたが、改めて録画を見てその感を深くした。
逆に言えばイタリア系の強く張った輝かしい声だけで歌える曲であれば、現状の発声でも通用する面はあるのだと感じた。