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二年ぶりの自宅を離れて遠隔地、神戸は三宮のスタジオでのレッスンを行いました。
発声練習を歌う様子を観察しながら見ていると、息の吸い方から声出しに至る身体の使い方が気になりました。
息を吸うときに肩が上がることと、息の入る場所が高くいわゆる胸呼吸のような感じです。
それでリラックスしてゆったりと息を吸う練習をしました。
先ずはゆったり深呼吸をしながらお腹が自然に収縮するような呼吸に導きました。
そこから歌い出しになりますが、この時の状態として、今度は出て行く呼気を歌声に相応しいペースと量で吐き出していく必要があります。
これを無意識で歌い出すと、歌い出しで一気に息を吐いてしまうのです。
そして残った息でフレーズの後をやっとこ歌い継ぐという具合です。
声の問題は、この息の状態と密接に関係があるわけで、少なくなった息で歌えば、当然息漏れを防ごうとして喉を締めます。
喉を締めると声帯が強く閉鎖するし、喉頭が押し上げられるので気道が狭くなり、響きのない苦しい声になります。
そして、喉への負担が増すので、声が枯れやすくなります。
リラックスした感覚でゆったり息を吸うことが出来、お腹が自然に膨らんだら、その状態をなるべく保って、息を吐く練習をします。
歯で音をさせると息の吐き具合が感覚的にわかりやすいでしょう。
そうやって、一定の呼気をなるべく長く吐けるかどうか?ということをやってみます。
そのことによって、お腹は自然に呼気の吐出をコントロールする状態になるはずです。
もしそれが出来にくいとすると、それはお腹に無駄な力が入っている証拠です。
とはいっても、漠然としたお腹の力加減の調節で、良く判らないでしょう。
色々な方法がありますが、膨らんだお腹の下腹部を少しずつ中に入れて行く意識によって、呼気は調節しやすいかもしれません。
逆に、息を吸うときにはこの下腹部を少しへこませた状態で吸うことで、腹筋がリラックスして膨らみやすくなるでしょう。
この方法では、下腹部のいわゆる丹田と呼ばれる場所が、呼吸の足場となります。
足場がしっかりしていれば、可動部分は自由で柔軟な動きが出来る、というわけです。
これらの身体の使いかたが出来ていると仮定すれば、後は歌いさえすれば必要なだけの息が使われるようにお腹の筋肉は動くという具合です。
ですから、お腹を積極的に使って息を吐こうとするのではないのです。
お腹は歌えば自然に収縮しますが、大事なことは歌うことに必要なだけの呼気が定量的に使われる状態かどうか?ということになります。
今回、喉のことについてはあまり細かいことは教えませんでした。
ただ1点だけ、声がファルセットに切り替わりやすい領域である、5点Cから上では、なるべく切り替わらないように我慢することです。
そのためには、現状の口が開かない発声ではなく、口を徐々に開けて行く発声をすることで喉が自然に開いて声を素直に吐き出す発声になるでしょう。
そして更に上がって行って、声が切り替わるようであれば、それは自然に任せればよいでしょう。
今回は実際に発声練習でやってみましたが、ほとんど問題なく5点bまできれいに良い発声の声として成立していました。
コンコーネ50から、1番と3番を練習しました。
1番は、呼吸練習を行った方法を見守りながら丁寧に練習しました。
この高音では、ほとんど声を切り替えないで歌えると思います。
3番は、5点CからEにかけての声の扱い方を注意。
ファルセットにならないように、中低音域と切り替えることと、そのタイミングを指導したと思います。
この低音は、明快に地声にならないように注意した方が良いと思います。
イタリア古典歌曲集から、Star vicino
まず、歌詞で歌わずに単母音で歌う練習を始めました。
その流れの中で、歌詞を朗読する練習も行いました。
歌詞の朗読を行うときは、なるべく高いトーンで語る方が、歌うときに良い影響が出そうです。
彼女の場合は、歌声に切り替わった感じの声で朗読すると良いでしょう。
その後、歌詞で歌いますが、子音の発語方法に注意をしました。
開けた口の状態で、舌が良く動かせるように練習します。
つまり下あごをがくがく動かして、子音+母音を発音するのではなく、舌先を良く動かして子音を発音する傾向を会得するのです。
このことによって、喉を開けた状態で発音、発声することになるために、結果的にレガートで良く響く歌声になるのが、声楽発声の特徴ということです。
他の2曲、Nel cor piu non mi sentoと、Ninaもレッスン内容はほぼ同じことをレッスンしました。
つまり呼吸法と発声法に尽きるのです。
以上、休憩を入れましたが、3時間ほどもレッスンしたことをまとめますと、一番大事なことは、ブレスの方法と声を出すときのお腹の状態です。
その次に5点Cから上の声の領域で、簡単にファルセットにしないように、喉を開けて行く、あるいは口を開ける、あるいは何もしなくても良いですが、意識として声を切り替えないで上がって行けるように注意すること。
後は言葉を歌うという点において、喉を開けた状態で発音するためには、舌を良く動かしてあげることと、唇を使ことが大事であること。
口周りの筋肉を柔軟に使うことが求められます。
以上、必要なことをまとめましたが、練習は続けてください。
ただ、判らない事や迷ったことをそのままにしないで、必ず質問連絡、報告などはお願いします。
間違った練習は百害あって一利なしと言いますので。