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発声練習

発声練習の声は、中低音から非常にきれいに響いて調子の良さ、健康的な喉の状態がうかがえた。

ンデルのLascia ch’io pianga

レチタティーヴォは、抑揚のついた感情の起伏が表現されていて、上出来である。
アリアは、歌う様子を見ても、感情表現に良く集中した、演劇的な要素のある立派な歌いっぷりであった。
元来が、表現に留意した集中の良さは彼女の得意とするところだが、声の上達と相まって良い表現レベルになってきた。

欲を言えば中低音域の喉が更に脱力して、低いポジションで響く声になると、この曲の良さが際立つと思えた。
音程感のちょっとした違いが判ると、そのことが可能になると思う。

ドナウディのAmorosi miei gironi

これも、良く歌えている。
良く歌えているので敢えてあら捜しではないが、歌のフレーズの違いを感じて、フレーズの形、そのリズムに微妙に変化を与えることで語感のある歌に変化する。
たとえば、Amorosi miei gironiのフレーズはゆっくり歌わないで、さっさと進むが、次のchi vi potra mai piu scordar,を少したっぷりと歌う、という具合。
その他、作曲者がテンポの変化をかなり書き込んでいるので、それはその通りで良いだろう。

つまり、これは語りの口調ということになる。
イタリア語ならイタリア語の朗読の口調が生じるはずだが、それを音楽にも適用できる部分は適用するという考え方。
ただし、それは音楽のフレームを壊さない微妙な範囲でということである。

彼女の歌の集中には一つのスタイルがあって、音楽が彼女の歌唱スタイルとシンクロする時に良い表情を見せる。
だが、現状のスタイルに合わない曲もあるはずである。
合わない曲は恐らく選ばないだろうが、歌の表現幅を広めるという意味で自身に合わないと思う曲にも挑戦をしてほしいと思った。