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発声練習

高音域に主眼を変えた発声練習を行った。
中低音域では共鳴を考えず、単にピッチを高めにするために上あごで歌う感覚を持たせた。
そのため、下あごを必要以上に降ろさないこと。
音程幅の高めを意識すること。

ドニゼッティ「愛の妙薬」から「なんと可愛い人だ」

高音発声を確実にするため、冒頭8小節に限定して練習したいとの申し出があった。
この冒頭は高音が4点Gになるのだが、このフレーズを歌う声を、これまでの太く共鳴を持たせるバリトンと発想を変えること。
つまり低音はピッチを高く軽く出ることで、換声点の4点Eの声を完全に換声点発声にすること。
これが説明しづらいが、喉を低くしようという意識ではなく、喉頭が上がらないように顎を引いた姿勢を堅持しておいて、口蓋垂で音程を確保するようにする。
口を開けたハミングから半分母音状態にするような感覚である。
この領域で、ハミングから完全に母音にしようとするとアペルトになり、抑制が効かない高音になるため、結果的により高い領域に踏み込みにくくなる。

また、歌う様子を見ていると下あごを降ろす癖が強いことと、歌い出しで呼気を強くアタックする癖がある。
これがバランスの微妙な細い高音発声を阻害する原因になるので、口先を開け過ぎないで喉そのものに注意を向けて少ない呼気と声帯を閉じた発声によって
音程良く出す、という発声を覚えることが、高音発声を伸ばす第一段階と考えるべきだろう。

このような練習によって、実声であるが胸声系の響きが消えた細い音程感の良い高音発声になる。
太く立派な高音を最初から目指すのはとても難しいので、このように軽いが声帯が綺麗に閉じた密度のある声を目指すことを第一段階として、高音発声を覚えてほしい。

信時潔「沙羅」から「丹澤」

彼の声域にピッタリ合っているのと、日本語のためか音楽的情感が自然に表出されて良い歌声になっている。
指摘したことは、レガートに歌うこと。
この意味は、母音の変化によって声の響きが変わらないようにするということである。
例えば「尾根長く」と歌う時、尾根のOとEが気を付けないと舌の変化によって響きが大きく変わってしまうこと。
この場合、現状ではOの響きが基準となる。
「響く澤音」の最後のOは気を付けないと音程が♭になりやすい事も併せて澤のSAWAのAと同じようにOを発声する、という具合である。

畑中良輔「まるめろ」

良い中音~中高音の声でピッチも良い。
更に表現を深めるのであれば、微妙なピッチの高さをを意識することと、フレーズによってはノン・ビブラートを意識すると良いと思った。
ピッチは概ね高めを意識するとピアノの高い音域のアルペジオと混ざり合って美しいと思う。
ノン・ビブラートは感情の虚脱を表現するために有益であると思う。