TM
プーランク「モンパルナス」
元気の良い声で堂々と歌うため、この作品の持つ郷愁とか憂愁のような雰囲気が出せなかった。
本人の弁によると、弱声になると口先で歌いがちとか。
発声の問題、という切り口はそろそろ本番直前になると止めた方が良いだろうと考えた。
声のコントロールは、歌詞の朗読でやってみることにした。
歌詞を読むと、実に簡単に自然な声量、詩の意味に添った声で出来る。
歌う時も同様にして歌ってもらった。
かなり効果的であった。
単に表現云々以前の問題であり、音楽的な歌になった。
「この優しい小さな顔」
中高音で弱声が必須な点が難しい曲。
私からは、発声とか響きがという教条主義的なことではなく、ポップスのように素朴に歌ってと指示した。
軽く歌うと音程感がつかみにくいらしいが、実はその音程を掴もうとすることが、上手く行かない原因でもある。
音程を気にしないで軽く歌うと、聴いているとほとんど音程が気にならないのである。
「ラ・グルヌイェール」
音域が低めなので、コントロール自体は前の曲より容易であるはず。
転調するPetit bateau vous me faite bien de la peineは、声を出す際に喉を下げないように注意を。
「私たちの思い出は歌う」
4点F前後の換声点発声のことに及んだ。
何故か声をかぶせようとするので、かぶせないでストレートに出すようにと指示した。
その方が単純に音程が良いし、聞いていてこの音楽に相応しい声になるからである。
ただ、声が不安定になるのが心配であれば、怖がらずに思い切って出す方が良い、と指示した。