GH

発声練習

5度スケール上行形、3度5度のアルペジオ、オクターブ跳躍とアルペジオの下降形など一通り行った。
良い声質で声量も程よいが、やや舌根や軟口蓋に力みが感じられる。
声が奥にこもる傾向がある。
良い倍音が出せているが、もう少し浅い喉を意識するくらいが自然で良い気がする、と指摘した。
この声については、特にイタリア語の歌で良い影響を与えると思われたが、実際その通りだと思った。

トスティ 「私に静けさを」

第一印象は、イタリア語の語感が弱い。
類推だが、弱声やレガートを意識することが現状につながっているのではないか?

まずは明快にはっきりと発音してみる。
次に朗読を行ってみる。
最終的には日本語訳の内容と照らし合せて、言葉の奥に見える風景や想いをイタリア語発音に載せられれば理想的。
その上での歌ということになる。

弱声で歌う前半は、弱声ゆえに中低音のピッチが厳しく問われる。
注意すべきは、歌い出しの声の当て具合。
音程を少し浮かせ気味に入るとちょうど良いだろう。
音程そのものを狙うと、概ねピッチの良い弱声の響きが浮き出てくる。
中間部の3連符の伴奏部から、声に厚みを増してフォルテへの充実した声の響きを披露出来れば理想的。

シューベルト 漁師の歌

こちらも前曲と同じ声の問題は残っている。
実際のレッスンで問題にしたのは、音楽の形である。
詩の内容やその表現以前に、シューベルトが音符に残したその音楽の形を明快に歌うこと。
テンポ設定とも関係があるが、2/2拍子の8分音符が滑らないように、きちっと歌えること。
四分音符は四分音符の長さを正しく表現出来るように。
つまり良い意味で音符の長さを正確に表現できると、この曲の音楽の美しさが浮かび上がってくるようである。
中低音の声は、前曲で指摘したように、声の出し始めで音程そのものを狙わないこと。
少し浮いたピッチを想定して歌い出すと、結果的に良いピッチの中低音発声になると思われた。