6月14日

今日のレッスンは、発声練習では、改めて喉を良く開けることと声の出し始めを低く意識することを主眼にしました。
というのは、声の出し始めでややもすると喉が高く、それが原因で高音で喉を絞めてしまったり、声門閉鎖が怖くなり無意識に息漏れが出て
結果的に喉っぽい声になってしまったり、喉を痛くしてしまうからです。
また、中低音の声の場合、いわゆる腹から出る声にならないので、軽く浅い響きになる傾向もあるでしょう。
このことは間接的に音程感を悪くする原因になると思います。

対処としては、今回はみぞおち辺りを意識して、声を出し始めるということをやりました。
口がみぞおちに付いていて、そこから声が出始める、ということです。

恐らく、軟口蓋を上げることを中心に注意が行ってたのではないでしょうか？
声を高いところで響かせる、という発声の原則は確かに大切ですが、そのことが喉の高さを誘発して、喉自体を安定させない原因ではないか？と見ています。

この原因は、音程を意識し過ぎることにあります。
音程が下がらないようにという意識が強いと、声質が犠牲になってしまいます。
音程だけを意識すると、ある音域から声帯が開いて来ます。
恐らく男性の場合は1点Cの短3度下のA辺りから始まるのではないかと思います。
喉を高くしないことで、声帯伸展を促すことによって良い声質を得ることと、落ち着いた音程感での声を目指したいということです。

フォーレのIci basを練習しましたが、今回は1音下げてみました。
この1音下げただけで、現在の彼にはぴったりでした。
母音のIがまだ喉を締める傾向にあります。
Iは、口を丸く使う発音を覚えて下さい。丸くすることで喉が適度に下がって良いフォームになれるのです。
なれない、とすると、それは母音発音、あるいは声の響きを出す意識が強過ぎるのです。

ここでも、喉を締めない、押さない、という点を大切にしないと上手く行かない理由があることが判ります。

次にLe secretを練習しました。
これは初めてなので、一通り通すだけでしたが、彼の声にとても似あった曲、という印象でした。

シューベルトは「冬の旅」から「白髪の頭」を練習しました。
前回感じたリズムの不安定はかなり改善され、安定して来ました。
これからこの安定したリズム感の下で、更に喉の開いたリラックスした良い声を聞かせてください。

彼女の歌唱は、音程、声質、そして歌声の安定度、いずれもレベルは高いです。
ただ、もっと響く声になるだろう、そして歌い方ももっとリラックス出来るはず、と思っていました。
このところは、その点を主眼にレッスンをして来ました。

今日の発声練習はIで始めました。
声の出し始めが強いアタックで、もう少し柔らかく当てることを覚えてほしい、とレッスンの冒頭で思いました。
アタックが強すぎると響きが硬くなり、結果的に響きは近鳴りの傾向になると思います。

原因は、ブレスのやり方による上半身の硬さか、本質的に上半身を硬くしてしまっていると見ました。
胸を開くか、胸を高くすることに意識が行っているのかもしれません。
試みに、歌っている肩に手を触れてみると、明らかに肩を上げて力んでいるのが判ります。

身体が緊張している状態です。
良い声なのに、どことなくよそいきな感じや、少し怒ったような印象が時としてあるのは、この緊張した発声が原因だと思います。

ブレスの現状を直すためには、胸を高く開くハイ・チェストにしないで、横隔膜の場所だけに自然に入る範囲に留める意識が良いです。
その分リラックスできますので、喉を良く開くことに意識を費やしてください。
逆に言えば、喉を開けば息は入るので、それだけで息は充分と思って頂いても良いくらいです。

また、声のアタック(出始め)を、高い場所に持たないで、低い場所、みぞおち辺り、横隔膜の始まる所に
持って行くことで、喉のアタックも柔らかくなり、同時に喉も高すぎないポイントになるでしょう。

それと上向フレーズでは、音程を探らないで自然に線を紡ぐように歌う、ということを大切にしてもらいました。
音程を気にし過ぎると、結果的に響きのレガートが壊れる傾向があるのです。

このような観点で、フォーレのSoirから始めました。
声の出し始めの意識の違いが、声の響きの質の大きな違いにつながります。
フレーズの始まりが微妙に太さのある良い響きになり、一段大人の声になります。
そして、上向形のレガート歌唱を徹底することで、フレーズ感がぐっと滑らかで落ち着いた印象を与えてくれます。
高音も喉が開いている深いポイントが維持できるから、楽である、と良いことが多いと思います。

ドビュッシーのNuit d’etoileは、特に高音発声に注意を払いましたが、ここでも喉が締まらずに高音発声が上手く対処できていたと思いました。今回出来たことに慣れて身につけてください。そのことで高音のMezza voceがもっと楽に出来るようになると思います。