TA

発声練習では、体験の時と違って口の開きが保てるようになっていました。

ただ、上半身がまだ硬く、肩から首にかけて力が入っている様子が見て取れました。

この肩から首にかけての力は、ブレスに一因があって、ブレス自体も胸式の要素が強いものです。
そして、ブレスをすると、胸を上に上げてお腹全面に力を入れているように見えました。

これらのことが、喉を詰めて声帯を合わせる発声に繋がっていると思います。
多分、かなりの緊張が発声器官に起きていると思われますが、その状態に慣れていることと、
肉体的に若いし、本来的な喉の強さがあるのでしょう。

高音の2点Gを過ぎれば、むしろ輝かしい高音の響きの一因になっている面はある、と思います。

ただ、喉に負担になることは間違いないことと、中低音の声のピッチが低めで締まっている響きの傾向なので、
発声法に言が及びました。

練習したことは・・・・・

1、ブレスで胸を高く作る以前に、立つという姿勢の段階で、おへそくらいからみぞおちにかけてのお腹前面部を
  上下に引き合ったような適度な緊張のある姿勢で立つことを前提にしてください。

その状態で、胸郭は充分開く準備が出来ますので、それ以上胸を開く必要はないです。

2、息を入れる際に、胸よりも横隔膜を全体に自然に拡げるようにブレスを入れてください。

要するにみぞおち辺りだけに意識を集中させて、息を入れればそれで充分です。

3、息を入れる際に喉奥を少しあくびした状態になるようにしてください。

特に軟口蓋を高く上げるように口を開けることは重要です。

中低音の発声で特に大切なのは、この喉奥のあくび状態を作って、軟口蓋を上げた高い場所から
声の出し始めを意識する、ということです。

そうすれば、たとえばドミソ~とか、ドレミファソ~という上向フレーズであっても、低音から
最高音までのピッチが綺麗に合った響きになることが出来るのです。

現在の声は、特に中低音は地声の成分がまだ残っていて、これが音程を少し♭にする要素になっています。
中低音から始まるフレーズの声の出し始めは、なるべく高い音程を意識して始めることがコツになります。

そのことで、低音の声であっても頭声傾向の声になります。
最初は少しスカスカした頼りない声ですが、まずは慣れてください。

低音の頭声発声に慣れたうえで、たとえば母音のIを応用することで、開母音の響きに芯が付けられるようになるでしょう。

ただし、くれぐれも最初からいきなりIでやらないで、開口母音で前述の発声の基本が出来た上でやることを忘れずに覚えておいてください。

4、あとは、フレーズを歌う中で、特に2点Eくらいか始まるチェンジの領域の処理です。

これは単に喉が締まるので、歌いながら喉が締まらないように、喉奥を少し拡げるように発音することです。

5、そのためには、声の出し始めで口を開けすぎないことが肝要です。

彼女は、声の出し始めですでに目いっぱい口を開ける傾向があるため、この時点で顎や喉に力みと構えが入ってしまうと思います。
フレーズの声の出し始めは、なるべく自然な口の開きを大切にし、歌う中で、柔軟に口の開け閉めを出来るように習慣づけてください。

そして、開口母音のOAEの母音は、なるべく頬が少しへこむくらい、縦に口を開ける意識を持ってください。
このことによって、喉が上がらない、気道の開いた発声が可能になります。
横開きにすることで、気道が少し細く締まってしまうのです。

以上が、現在指摘できる発声の要点です。

曲は、グノーのファウストから「宝石の唄」で始めました。
この曲の練習で、先ほどの発声のピッチの問題、頭声の意識を練習してもらいました。

最初の声の出だしの音程感として、5度くらい高い上のチェンジした声をそのままおろした頭声成分の強い声で出だすように練習しました。
これも、慣れないと響きがスカスカして頼りないですが、慣れるまで我慢してください。
自己練習されるなら、同じ方法で母音のIだけで歌ってみることです。その声帯の合った響きを歌詞発音に応用するなり、段階として
Aだけによる練習も良いでしょう。

発音としては、Rは、普通のイタリア式の巻き舌方式に慣れてください。
クラシックとPopの違いなので、今のうちにしっかり身につけておいてください。

あとは、ドビュッシーの「マラルメの3つの詩」2曲目を練習しました。
時間もあまりなかったせいもありますが、こちらはフランス語の発音を丁寧に見ました。

ドビュッシー2曲目は、Fetes galantes1 からFantoche
こちら、なかなか魅力的な声の表現の萌芽が感じられました。ドビュッシーらしい女声の魅力への嗜好が感じられました。

次のフォーレからau bord de l’eauは、多分頭声で歌おうという意識だったと思いますが、レガートがない歌唱になってしまいました。
頭声の強い声であっても、ヴァイオリンの旋律のように、みっちりと綺麗なレガートで歌うことを徹底されてください。

SM

今日は、プーランクの「あたりくじ」を練習しました。
それぞれの曲をかなり綿密に練習を積み上げました。

やはり声のディテールについては、そばに立って聞く方が良く判るので、伴奏なしで
アカペラで歌ってもらいながら、声のことについてを細かく指示するレッスンとなりました。

そばに立って歌う様子を見て改めて気付くことは、中低音発声の際に息の流れが下に向かうイメージで歌っている様子でした。
下顎を下げる勢いで声が出る・・という感じ。

実はこの発声が、後々フランス語の特に狭母音の発声で、邪魔になることが判ります。
すなわち、開いてしまうと狭母音にならない発音になってしまうことと、
鼻腔共鳴が出なくなるために、結果的に暗い声質になること、です。

それから、これは前述のISさんも同じことですが、発音=口を開く=下顎を下げる、という行為を以て、
息を強く吐くことで、発声する傾向になる、ということです。

このために、彼女の場合は低めの共鳴のある声になりますが、これが少しこもった声になることと、
息を使いすぎるために、全般にブレスが足りないフレージングになる原因ではないか?と感じました。

声の出し始めで息を極力無駄に使わないこと。
そのためには、下顎の動きを抑制すること【特に声の出し始め】で、息の流れを上に向けることによって、
響きが明るくなり、音程が良くなり、息の無駄使いがなくなるのではないでしょうか?

これらのことは、現状では「歌いながら軟口蓋を上に上げながら歌っていって・・・」と指示すると、直ぐに良くなります。
あとは、本人の自覚と徹底した練習で直ぐに改善されると思います。

この発声の違いは、とても大きいです。

そして、このことと関係がありますが、フレーズを歌う中で、音程の跳躍の際に、これも息で押さないように、
「非常に滑らかに」フレージングするように歌うことが重要です。

例えば1曲目の冒頭のフレーズです・・・・・Mon sommeil es (t-un-voy) age の中の()で囲みハイフンで結んだ部分に音程跳躍がありますが、
こういう時に無造作に息の力で押していないでしょうか?
こういうフレージングの際に、絶対に息で押さないで、喉奥の開きと締めのバランス、軟口蓋の上げ具合などによるバランスを意識した発声で、低音から滑らかにフレージング出来ることが
とても大切なことです。

このことが分かるようになると、恐らくブレスの持ちがかなり違うことが判るようになると思います。

この曲集は、緩急の組み合わせで、7曲ありますが、速いテンポの曲であっても、まずゆっくりのテンポにして、
上述のようなフレーズの歌い方を徹底して検証して行くことを大切にしてください。

狭母音を意識してほしいのは、Uと狭いe,の二種類は特に大切です。いずれも、唇を突き出すように、良く使って下さい。
最初は響きが決まらなくても、使うことから始めてください。
声の響きよりも、発音の形優先です。
そのことで不具合があっても、そこから発見が得られるからです。