OM
コンコーネは4番。
中低音の声を高く上げたのですが、引っ込んでしまいました。
この辺り、難しいですが、ただ後頭部に持って行くのではなく、
例えば母音のIからEそしてAへ、と持って行く方法で、声の響きは前に保ちます。
その上で、特に高音から低音に降りる下降形の際に、響きを頭に保つように歌うこと、が彼女の歌ではもっとも大切なことです。
曲は以下の3曲をざっと通してもらいました。
Je suis Titania
Caro nome
そして椿姫のアリア、Ah forse e luiを練習しました。
これらの曲、いずれも、中低音の声の響きがとても良くなったことと、高音発声に無理がなくなり、楽に聞ける声になったことが
大きな進歩と感じられました。
発声面では、後は高音域で上あごをもう少し上げた発声が出来るようになってほしいです。
要するに上唇を上げたり、頬を上げた発声です。
これを使うと、喉で押さずに音程移動を滑らかに出来るようになるでしょう。
しかし、いずれにしても一段、成長しましたね。
2年ほど頑張って練習してきた甲斐があると思いました。
これからも、気を抜かずに、この調子で頑張って下さい。
TA
発声練習の声は、前回に比べても更に良い意味でコンパクトにまとまって来ました。
余計に息を使わない、或いは息の力で押さない声になって来つつある、と感じています。
気になったのは、中低音の声で、鼻腔の響きを鼻声と混同しているような感じです。
本人の感覚は私には判りませんが、鼻にかけた声は×です。
鼻ではなく、やはり軟口蓋です。
多分、もっと後ろを意識すると良いのだと思います。
軟口蓋を上げる、というのは、一朝一夕では行きません。
フランスでも良くIl faut baillerと言われました。
あくびの状態が、もっとも近いでしょう。
ただ、あくびのフォームは、舌根で力を入れて、低くこもった声になりがちなので注意が必要です。
BelliniのVanne o rosa fortunataから
発声と同様に、鼻にかかった声を少し直してもらいました。
他にも、Luluで、中音域の母音の響きを調整しました。
どうして、Luluか?というと、喉の開きと鼻腔の響きとのバランスが取り易いからです。
しかし、彼女の場合、やはり喉側のバランスが強いため、すこしこもったような響きになってしまいます。
結果的にUよりもIの方が良いようで、Iの響きで母音を作って行きました。
Gavotteは、要点はメリスマです。低音域から3点Dまで出す、広大なフレーズの処理において、
どうしても下の声をチェンジさせないまま、3点C以上の音域を歌ってしまうために、とてつもない胸声のまま
出してしまうこと、何とか治さなくては、というところでした。
これは、少しだけ治ったかな?というレベルですが、良くはなりました。
最高音の発声時に、下顎を降ろす力の抑制を持たせることと、やはり声量の抑制です。
歌っている様子を観察すると、最高音域でも、下に向けて力で抑えつけるように見受けられます。
これを逆にして、上に向けて楽に開放するように出せると良いです。
そのため、万歳するように両手を上に上げて歌ってもらいました。
すると、中低音の声から、変わって来ます。
悪い意味で肩に力を入れて歌っていたのが、両手を上げることで矯正されるのだと思います。
この最高音を歌うメリスマのフレーズでは、長いフレーズであることによる勢いで歌わず、部分に切り分けて歌うことを練習に取り入れることで、
力で押さないフレージングを良く身につけて下さい。
Je suis encore tout etourdieも、良い意味で大分声が軽くコントローラブルになりました。
この曲の場合の高音は、メリスマで出す所以外は、ほとんどが演技的な語りのデフォルメ程度の意味なので、
イタリア的に張った声にするのは、少々おかしいのです。
むしろ引くように処理する方が正しいでしょう。
あとは、テンポの緩急を、楽譜の指示に従って、メリハリよく出すことを忘れないでください。
IS
発声練習は、ハミングで始めて母音に変換、という練習をしました。
モーツアルトのBatti batti o bel masetto
声質も音程も声量も、ほどほどに良く歌えているのですが、今一歩、という感がありました。
それで、細かい観点から、指示して見たのが、お腹の使い方の違いです。
声出しの際にお腹を引っ込めるようにする傾向を、なるべく意識してあまり使わないようにすることです。
このことで顕れる声は、微妙な違いですが確かな違いです。
お腹を強く使うため、確かに見掛け上の声量はありますが、声のビブラートが自然な感じにつかず、
微妙に真っすぐな感じになっていることの理由でしょう。
お腹を強く使おうとする意識が、喉、喉頭を硬くさせる一つの原因だと思います。
思い起こして見ると、こちらに来た当初、下顎を良く降ろすことで、声帯を伸ばして呼気で強く当てて出していた、と思います。
これは、確かに声量がありますが、高音のチェンジ以降が解決出来ていませんでした。
チェンジ以降が、ファルセットになって薄く引き延ばされた響きになっていました。
これらの現象を総合して考えてみると、やはり呼気の使い方と、声帯の使い方において、発想の転換をした方が、良いと思います。
これも彼女に確認はしていませんが、もしかするとお腹で歌う、という意識でお腹の力に集中していないかどうか?
そうだとすると、現在の声は想像がつくのです。
すなわち、お腹を必要以上に意識しないことと、その分、声帯の使い方に意識を持って行くこと。
声帯の使い方に意識を持って行くこととして、具体的には響きの場所を意識し、そこに声を当てる、ということに集中することです。
もう一点は、口の使い方に関係する、母音の出し方です。
彼女の場合は、口の横開き度が高いせいもあり、響きが少し浅薄な印象があります。
縦に発音する方法を練習しました。
Il bacioでは、特に低音の響きが難しく、鼻腔に響かせる方法の練習になりました。
もう一点、楽譜を子細に見れば判ることですが、この曲は意外とPやPPで歌う曲なのです。
FFが続くフレーズはせいぜい最後くらいですね。
この点を良く表現として理解して下さい。
表面的な曲の楽しさだけではなく、繊細な表現としてあることに重きを置いた演奏になってほしいところです。