TA
コンコーネ50番中声用の1番と2番からレッスンを始めました。
1番のように、長い上昇フレーズを最低音域(1点)Cから始めるような場合、最初の声が地声成分が強いと、
1点Fからのチェンジが、上手く行かず、結果的に喉で押した声で通してしまうでしょう。
こういうフレーズの最低音は、極力高く集めた声で、声のアタックを始められるようにしてください。
ピッチを高く取ると、チェンジに即応できる声になるために、高低差の大きいフレーズでも、フレーズ途中で
声の段差が出来ずに、結果的にレガートな歌唱が上手く出来ます。
練習方法は、ハミングで高いピッチの声を出すことです。
このハミングで芯のある、けれどもピッチの高い響きを徹底して、2点F以上のチェンジをまたぐ高音まで出せると、
声帯が良く進展した、アクートした響きが出し易くなるでしょう。
コンコーネ50番の練習では、主に中音域の声を作っていきますが、大切なことは、母音をAでやる場合、ブレス時に喉のあくびの状態を覚えることです。
ここで注意してほしいのは、喉を深く掘り過ぎないことと、軟口蓋を上げることを良く覚えることです。
この発声の目的は、音程感の良い息漏れのない声のアタックです。
曲はプーランクのガルシア・ロルカの3つの詩から、1番と2番。
1番は、全体に静けさを表現していますので、どのフレーズも極力滑らかに、フラットなイメージを大切にしてください。
音程が上に跳躍する場合に、力んで飛び出さない、丁寧な発声が要求されます。
それから、2曲目も含めて、根本的な発声に起因することですが、胸呼吸がまだ強く、そのために、
喉を締める傾向あるために、結果的に口を開けない発声になります。
背中を壁につけ、腰もうなじもなるべく壁に付けるような立ち方で、矯正的に発声をしてみました。
少ない息で、極力コンパクトに高く響かせる発声を、これで覚えてもらいました。
そして、グノー「ファウスト」から、「糸を紡ぐグレートヒェン(マルガリート)」の歌を練習しました。
これはシューベルトも歌曲を作っていますが、素晴らしいアリアだと思います。
フランス語の発音と発声の関係から、思うのは、狭母音が狭すぎるのと、開母音のAとEがこれも狭いです。
狭くなるのは、それなりの意味があって、喉を締めるようにして響きを出すため、どうしても狭母音化するわけです。
発音面から発声を矯正するならば、特にAの母音発声は、極力上あごを上げるように意識することが判り易いでしょう。
あと、最高音の2点hは、上あごを良く上げて、口を縦に開けることをトライして下さい。
下顎がしっかり降りないと、喉が上がってひっくり返るし、上あごの上げ方が足りないと、胸声の強い高音になります。
上あごを良く上げたことで、声の反射音が自分の体の外から聞こえてくるような発声になれば、成功でしょう。
しかし今日はかなり積極的に発声の矯正に参加してくれて、短時間でこれらの癖が直りました。
また元に戻らないようにお願いしたいのは、歌う姿勢の矯正と、正しいピッチのハミング練習、そしてそこから母音に変換することです。
OM
ドニゼッティのMe voglio fa’na casaから始めました。
彼女には少し低めと感じましたが、それが非常に良い声でした。
声が前に飛び出さず、後ろ廻りで空間を広く響かせる発声になっています。
以前に比べると、大分軟口蓋が開くようになってきました。
この曲では、あとは、この発声をもっと低音域になっても、出来るようになることでしょう。
歌い方としては、民謡風のポルタメントを覚えることと、AとEの母音を、もっと上あごで歌えることです。
これが徹底出来ると、いわゆる初期の頃の彼女の歌声の幼さのような面が、劇的に改善されるでしょう。
特に中音域でとても大切なことです。
モーツアルトのコンサートアリアから、Io non chiedo,eterni Deiを練習しました。
ざっと一回通しただけですが、彼女のコロラチューラの才能の萌芽を感じさせる声が聴けました。
中音域も充実して来ましたし、高音域も締まらない声で良く廻るようになって来ています。
彼女の声の将来性としては、こういう傾向の曲が、良くその素質を伸ばせるのではないか?と感じました。
椿姫から、Forse e luiを練習しました。
レシタティーヴォの中音域の声は、非常に良い声に成長してきたことを感じさせる歌声になっていました。
高音のコロラチューラ的なメリスマの歌声は、完ぺきではないとしても、充分歌える音域の響きであることと、
必要十分な転がり方なので、それは今すぐ課題として急ぐことはない、と感じました。
むしろ、このような劇的なヴェルディのアリアは、中音域の歌詞を明瞭に、良く語るように歌うことが必須となります。
本来この曲は、典型的なコロラチューラの曲ではなく、リリコなキャラクターでしょう。
その意味で、歌詞をどれだけリアルに歌い語れるか?と言う点を、これからみっちり勉強してほしいと思いました。
その点は、次に歌ったトマの「ハムレット」のオフェリアのアリアA vos jeux.mes amisも、同じことです。
発声の今までの課題が徐々に理解を進めて来ているようなので、フランス語の発音や、朗読の練習も充分にやってほしいです。
それは、劇的と言う意味でもヴェルディと良く共通性を感じます。