NS
伴奏合わせのレッスンとなりました。
5つのヴェニスの歌曲
5曲通して見ましたが、全体に危なげない演奏ですが、小作りになった感じでした。
声質に集中するあまり、歌詞を歌うイメージが足りないように思います。
それも、歌詞の意味以前に、言葉に存在する母音の形や立体感みたいな要素、発音する意味が消えてしまっているように感じました。
ヴェルレーヌの詩は、意味以上に言葉を発音することで出て来る母音の形による音楽性が、詩の成立に大きな関わりを持ちます。
仮に幼稚な発音であったとしても、歌う行為の中に、言葉を発音する面白さや母音の変化を楽しむことを充分に持ってほしいと思います。
そのことが、これらの歌曲の演奏を活き活きとしたものにするでしょう。
声楽的に言えば、発音を明快にしよう、とすることで、息が活発に関与する歌になるでしょう。
逆に言えば、歌詞発音が阻害されてしまうことで、息の良い意味での関与が少ない歌になるために、響きそのものが停滞してしまったように感じられるのではないでしょうか?
非常にシンプルなことですが、フランス語の場合、開母音と狭母音の違いを良く出して下さい。
開母音はAEO。あるいは発音記号で書けば、oe です。
狭母音は、Uや狭いoです。また、eも狭いです。
この、アクサンテギューのEは、決して横に口を引いてはいけません。
唇と突き出すようにUを発音する口で、Eを云う感じです。
あとは、これらの発音を正確に、明快にすることを基本としたテンポのあり方も考えました。
多少指示テンポより重くなったとしても、発音を明瞭にしようとする意志があるのであれば、それも音楽性の成立には良い意味が付加されるでしょう。
ピアノも、ただ柔らかさだけを出さないで、しっかりメロディを弾くようにすることが大切です。
特に、4曲目の「クリメーヌに」は、冒頭のモチーフ、右手のメロディの最初の一打がとても大切です。
運指法のセオリーにそぐわなくても、強く弾くために人差し指から始めることも、一つの合理でしょう。
音楽は響きの豊かさが、ライブ演奏の命です。
何となく小奇麗な形だけを指向しないで、響きの豊かさとは?ということを追求してほしいものです。