AS
発表会の3曲をピアノとの合わせレッスンとなりました。
第一印象として、ピアノとの合わせを出来る限り多くしていただきたいと思いました。
合わせを聴いて私が良いか悪いか?と思う判断基準は、ASさんが出来る範囲で、説得力のある演奏が出来ているかどうか?
にあります。楽譜通りのテンポかどうか?ということは気にしません。
思ったよりゆっくりでも、あるいはかなり速いなと思っても、結果的に良い演奏であれば良いのです。
良い演奏とは、声が伸び伸びして歌えていること。息が足りていること。リズム感がしっかりしていること等々です。
レッスンであっても、曲を通す時は細かい発声を気にしないで、上記のことに先ず集中することです。
そして、練習段階では、出来る範囲での、歌いたいテンポや間合いを再確認して下さい。
特にブレスの間合いは、その基準として、息がきちっと入っているか?喉の準備が出来ているか?と云う点を大切にしてください。
その上で、ピアニストとテンポや間合いをすり合わせてください。
以上のことにおいて、演奏する者が充分に納得して安心して演奏すること、が基本的な所で良い演奏につながります。
今回、このようなことを先ず書いたのは、ピアノのテンポ設定が難しい曲があります。
速いか遅いか?という判断もありますが、ピアノはピアノ独りで弾くのではなく、声楽家と演奏すること。
声楽家が持っている技量を120%出せるようにピアノ伴奏を弾く技量が必要です。
声楽家は、ピアノに任せるのではなく、歌う人が自分の意思を以て歌うことが必要ということ。
この2つの要素が混ざって始めて「アンサンブル」という言葉が生まれます。
楽譜に書いてあることは、あくまで基準値であって、実際は演奏家が決めることです。
なぜなら、演奏家はそれぞれ技量に差があります。
技量が低いと演奏出来ないのではなく、技量に応じて出来るだけ良い演奏をする必要があるのです。
発声そのものは、発声練習をした結果良くなりました。
気を付けてほしいのは、高音発声で声を抜かないことです。
確かに力んではいけないですが、抜いても同じようにいけないです。
喉が高くならないようにするには、喉の奥、物を飲み込む時に感ずる辺りを拡げるようにして、発声することです。
特に声のチェンジ近辺の2点F辺りから、このことを意識してください。
意識しないで、喉だけで調整すると、ほとんどファルセットの声になります。
TK
Una voceは、だいぶ歌いこみが進んでこなれて来ました。
高音発声も安定度を増して来ました。
母音の発音も特にUの母音が進歩したと思います。
現時点で更にやれることは、アリア全体の言葉の意味を良く捉えて、そこから音楽の作り方、歌い方を具体的に表現することです。
意味を細かくは出せませんので、例えば2分法的に優しい、怖い、とか柔らかいか硬いか?強いか弱いか?と云う具合に、
フレーズごとの違いを探して、そのように歌って下さい。
最高音域の発声は、前回指摘したことが効果を表していて、潰れない発声になりつつある印象でした。
また、最後の高音3点Fの声も良く伸びていました。
自分で工夫して、良いポイントを探すことはとても大切なことです。
ヘンデルは、声の表現も意識されて、楽節の違いによる変化も感じられれるようになりました。
全体にかなり変わってきました。
他の曲でもそうですが、あとは子音をもっと良く出してください。
理屈以前に、子音を出そうと意識して歌ってみてください。
Rの巻き舌は難しいですが、舌先を息の力で震わせるような練習方法をいろいろとやってみました。
最初は音にしないで無声子音の形で、練習するのが良いです。
日本歌曲は、新たに「6つの子供の歌」から「たあんき・ぽおんき」を練習しました。
跳ねるリズムが真骨頂ですから、このリズム感を自分が思っている以上にはっきり出して下さい。
出す所と、滑らかに歌う所の区別もあります。
SM
発声のポイント、コツがかなり判って来たようで、後は高音域で喉が締まらない状態を維持できれば、相当に良く歌えるレベルにあると実感しました。
口を開けたハミングで芯のある響きを極力上まで維持して発声して、その状態から母音の状態にして、という練習をしました。
口を開ける意味は、母音発声時に喉を開ける意識を持つことと同じです。
喉が適度に下がって、軟口蓋が上がった状態を作るためです。
この意味が大切なのです。特に喉が適度に下がっていることと、軟口蓋を上げる意識です。
この方法で高音発声時に、喉が上がって締まった状態で出すと、喉が疲労して低音発声が出来にくい状態になります。
このことが本人が実感出来れば、低音発声が上手く行かない状態が判るようになると思います。
高音になればなるほど、喉を上げないのですが、それ以上に大切なことは、息で押さないことです。
息で押す高音は、一見出ている感じがしますが、声帯に負担がかかります。
高音で出しにくい状況になったら、むしろ息を使わないように使わないように、と思うと上手く行くでしょう。
声帯だけをきちっと合わせることと、音程が合っている、という意識を持つと、自然と
しかし、この発声をきちっと保持できて歌うと、まず課題であった中低音の声の♭傾向が改善されます。
アーンの歌曲3曲、あるいはアリアの「キジバトは逃げ去った」でも、声が♭になり易い懸案の箇所がすべて改善されたことが発声をつかんだという証拠だと思います。
前述したように、高音発声は一見問題ないようですが、締めている、あるいは息で押している部分があるようで、高音発声が続くと、
比較的に直ぐに低音発声が崩れて来ます。
高音発声は、声を前に持って行こうとすると、しっかり当ってしまうために、声帯が疲れてしまうのかもしれません。
脳天、あるいは後頭部に持って行くようにすることと同時に、顎を出さないように発声する姿勢を保つことで、喉の裏側、後ろ側を抜けて行くようなイメージの声になると、適度に開いた発声で喉の負担がないと思います。
高音発声にも充分に注意を向けて下さい。
MM
風邪気味で喉が完調とは行かなかったようでしたが、良く歌えました。
特に最後に歌ったアーンのValseは、教えたことが良く実行できました。
中低音の喉のポジションは良くなったのですが、チェンジ以降で必要以上に喉を深くし過ぎて太く当ってしまい、結果的に音程が♭な声になることが多いです。
2点Fから上で、喉を少し高めに意識することと、息の力で押し出そうと発声しないことがポイントでしょう。
恐らく喉は、思っているほど下げようとしなくても保持される状態になるでしょう。
ポイントはブレスが正しく出来ているかどうか?ということと、姿勢です。
そして、ブレス時にあくびの状態を少しだけ意識出来れば、ほぼ問題ないです。
あくびの時に喉ではなく、軟口蓋を上げる意識があれば、それだけで喉は自然に下がる状態になりますから。
ベッリーニのVanne o rosa fortunataでは、特徴的なUの母音が、深すぎると感じました。
Uは、確かに深い母音の響き感がありますが、喉を下げて深くすると倍音が出ない結果的にこもった♭傾向の響きになります。
深い、という意味は、奥から聞こえてくる、という意味です。
Uは、鼻腔共鳴を徹底して使って下さい。
下顎は降ろす必要はなく、その代りに唇を徹底的に突き出すように使って下さい。
そして、喉が下がらなくなった分、鼻腔に響きを通す努力をしてください。
改めて確認ですが、声は管楽器のように呼気の通過で声帯が振動する、のではありません。
これをイメージで勘違いすると、例えばUの母音では、下顎を降ろして呼気の力で発声するため、共鳴は出ますが、暗く♭な響きになってしまうのです。
声帯自体を良く合わせて、あたかも弦楽器を弓で擦って響きを出すイメージにしてください。
呼気は関係ないです。
Ma rendi pur contento とても良く歌えていました。跳躍音程の処理が、口を開けないで対処できたのが良かったです。
低音発声で、響きをなるべく鼻腔に入れられるように気を付けて下さい。
Rを始めとした子音の正しくしっかりした発音が、良い母音発声のきっかけになること、改めてよく練習をしておいてください。