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今回は、伴奏付きのレッスンでした。
10月のコンサートのプログラム全曲の合わせを聞かせてもらいました。
結果的には、発声の課題が改善されていることが確認出来たことが、一番の収穫でした。

また、改めて伴奏付きでレッスンをすることで、本人の歌っている様子を詳細に確認できることが大きな収穫でした。

この半年余りの様々なレッスンの結果を集大成して、今確実に出来ることは、結局喉を押さない発声に徹することでした。
特にフレーズの入りで、強く当てないことを充分注意することが大切です。

それから、特に今日、伴奏を付けてもらって歌っている姿から良く判ることは、声の響きを鼻腔前方に集め過ぎていることが、声の辺りの太さに関係することが判りました。
特有の口の開け方も、その発声に依拠することが原因と判りました。

彼女の場合に限定すれば、この響きを前に集め過ぎる発声を修正するためには、頬を上げて口の両端を少し引き気味にする方が良いことが判ります。
その際に、軟口蓋が意識されるため、その軟口蓋から前にではなく、中音域は真上で、更に高音に昇る場合は後ろに向けるような意識を持ちます。
この発声の方法を取り入れたり、最近になって確立出来て来た押さない発声のせいもあって、以前のような、音程が低めに聞こえる中音域の響きが、大分改善されました。

あとは、それぞれの曲の表現の確立となりました。

難しいのがLe violetteです。
伴奏の雰囲気と歌声によって、良い演奏としてのリズム感を醸成しなければなりません。

バロックのアップテンポの曲は、JazzやRockにも通じる「乗りの良さ」がとても大切です。
乗りの良さとは、正確なビートが続いていることによって感じられるようになる、身体が動いて来る感覚にあります。

まず、徹底したIn tempoで良いリズムの基本を作って、それが確立している条件の上で、Ritなどリズムを緩ませる要素を作っていきます。
それが出来たうえで、各自の遊びの要素があっても良いでしょう。
間違っても、無用なレガートのために、テンポに乗り遅れたりしないように、言葉さばきと発声に注意してください。

シューマンの「ミルテ詩集」の4曲でも、テンポ設定に心を砕きましたが、中でも「ズライカ」の場合は、テンポの基が、歌詞を語る意識に依拠しますので、翌朗読をすることを薦めます。
流れるように朗読できることで、そこから楽譜に指示されたテンポ表示と歌をすり合わせて行くことになるわけです。

楽譜のテンポが前提で歌詞の読みがあるのではなく、朗読する調子があってこそ楽譜に指示されているテンポに意味が出る、ということです。

低音発声は、無理に地声発声にする必要はないです。響きは上の響きのままでも、子音を含めて歌詞を明快に発音する意識があれば良いです。

日本歌曲は、2曲ですが、特に「かやの木山」は、難しいです。

何となくある、この曲のイメージだけだと、音楽性が弱くなって、何も伝わらない演奏になり勝ちなのです。
言葉を良く確かめて、言葉を歌うことに注意を向けてください。
そのことで、最初のフレーズのテンポ感が決まるでしょう。

この最初のフレーズのテンポ感を、何となく、ではなく、「かやの木山の、かやの実は~いつかこぼれて拾われて」という言葉の持っている風景、背景を人の心に届くように歌って下さい。
全体に、この問題をきっちり理解し実行しようとする真摯な姿勢が、この曲の表現を良いものにするのだと考えています。

人の心に届く、という意味は、歌う本人が歌詞に歌われている世界とそれを修飾している音楽が表しているものを、良くイメージ出来ている上で、その歌詞を丁寧に歌声に乗せている、ということです。
このことが出来ていれば、聴く人も良くイメージできる音楽になると思います。