まず高音発声において、初心者の方々が陥りがちな点は、息を大量に吐こうとしてしまうことです。
つまり息を吐き過ぎるということです。
この原因の一つが、高音の歌声のイメージにあるでしょう。
特にオペラアリアなどのサビの部分で披露される良く響き渡る高音は、本能的に息を多く吐き出すイメージがあります。
この結果どうなるか?叫び声になるか出なくなるか?どちらかなのです。
しかし個人差はあります。
たとえば高音の領域になると、自然にファルセットに変化して出せる方がいます。
実はこういう方々は、あまりレッスン経験がない場合が多いのです。
つまり悪い癖がついてない。
しかし、これはこれで問題が出ることもあります。
つまり高音発声をファルセットだけで覚えて行くと歌えるようになるのですが、中低音の声とのつながりが未熟なままになってしまう。
中低音の声は声楽家としての音楽性に重要な役割を果たしますので、高音だけに偏らないように指導していかなければなりません。
このような発声上の問題が生じる理由の一つとして、基礎が確立していないうちから難しいアリアを歌わせてしまう指導があるのではないか?思われます。
この結果、高音発声で息を使った大声による発声を覚えてしまうったりファルセットだけの発声で歌い通してしまうことになり、綜合的にコントロールの効かない声を身体で覚えてしまうのです。
他所の声楽指導者の問題をあげつらう意図はありませんが、自分のレパートリーしか教えない方がいらっしゃいます。
プロのオペラ歌手に教えるならともかく、アマチュアでやって来る生徒に、自分のレパートリーだけを教えるというのは考え物です。
一子相伝の邦楽と違い、西洋近代の音楽は楽譜による譜読みと基礎技術のマニュアルがある程度確立しています。
ただ楽器と違って声楽というものが、抽象的な指導が歴史的に通ってきたせいもあり、恐らく指導方法が良く判らないままに教えているのでしょう。
判らないから教えてはいけない、とは思いません。
私も草創期は本当に判らず、暗中模索を続けました。
その経験で得たことは、声楽発声に関する情報は収集してなるべく勉強すること。
そしてそれを自分の歌声で実践してみることしかありません。
何ごともそうですが、楽しみでやるからといって基本をおざなりにしてしまうと、後で大変なことになるのです。
次回は初心者の方が覚えるべき高音発声の入り口、と題して書きたいと思います。