MMT
今回はドビュッシーを3曲持ってきた。
まずはBeau soirを歌ってもらったのだが、意外な程に中音域の声がとても良い声質を持っていると感じられた。
ポジションを少し低くしているせいで、声の音程が微妙に♭に感じられる。
一概に悪いとは言えず、良い声の響きになるのだが、この状態からサビの部分の5点F♯を出すと♭がもろに目立ってしまう。
喉を締めてはいけないが、音程にはシビアになるべきだろう。
中音域をで歌う場合、小換声点(4点b辺り)を境に、あたかも弦が太い弦に切り替わるため、
意識して弦の擦り方を加減する必要があるのに似ている。
最大限の良い響きを追求すると、かえって♭気味になり易いということである。
2~3曲目は2つのロマンス
こちらの方が中音域の♭傾向は目立たない。
PPの声は、小さくするというよりも声の響きを薄くする,と解釈する方が判りやすいようだった。
2曲目「鐘」は日本的な雰囲気があり、よりPPの声の表現で軽やかに歌うこと。
最後に初期の歌曲Calme dans le demi jour(En sourdine)レッジェロ・ソプラノのために書かれたといって良い作品なので、
彼女の声域と声質には自然であろう。
現状でも十分な歌声のレベルであるが、更に弱声が使えると、より表現が適ったものになると思った。
ST
発声練習に20分ほどか?時間をかけて、高音発声や換声点の発声など難しい発声に備えた。
このところ継続しているモーツアルトの「魔笛」から夜の女王のアリア「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」
最初の通しでは、声が詰まって小さな声で精いっぱい歌っている感じになってしまった。
発声について考えすぎると、基本的な声の解放感がなくなり喉が締まって声が出なくなってくるものだ。
ここは一つ発声を考えずに、開放的に大声で歌うということを指摘してみた。
まずはLalalaで大きな声を出して歌ってもらった。
これが意外な程うまく行く。
喉が自然に開くし、高音は自然に換声してコロラトゥーラの音域も難なく歌えてしまった。
次にドイツ語の歌詞で歌ってもらうと、声が子音のせいで途切れてしまう。
歌詞を歌う方法として、発声のために開けた口をなるべく閉じないように子音発語を対処する方法を教えた。
このためには、なるべく舌を良く動かすことと唇を使うことに尽きるのである。
歌わないでこの歌詞朗読を練習してから、歌う練習という順番が良いだろう。
このようにして、夜の女王のアリアは驚くほど力強い歌声で歌い切ってくれたのである。
もう一曲「ああ、恐れおののかなくてもよいのです、わが子よ!」は、お初なので母音唱法で通して練習をした。
やってみれば判るが、実はこちらの方が難しいのである。
なぜなら怒りのエネルギーで一気に歌い通す、というわけにいかない。
静かな調子と、徐々にテンションを上げてエンディングに向かうという表現の幅が求められるからである。