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発声練習のトピックでは、母音を想定した口を開けたハミングの練習が重要であった。
彼女の声はピッチが良く息も良く吐けているが、やや声帯が開き気味の響きで、いわば笛のような響きに似た感じである。
もう少し響きの芯の部分が見えると、響きが明るくなり結果的にピッチが高い響きになるだろうと思われた。
ハミングの練習はそのためである。

管楽器的になる理由はどちらかといえば喉側の意識であるが、軟口蓋側から喉を引き上げる方の意識が弱いのだろう。
そのためのハミング練習なので、感覚的に上あごから上に響きを集める感覚を持つことが大事である。
ただし、お腹の意識、みぞおちから声が出る感覚は忘れないように。

喉の開きは5点b辺りからはもう少し喉を開けるように意識できると良いだろう。
6点Cは確実に発声出来るが、響きが浅くなるのはそのためだと思う。

コンコーネOP9の37番。
譜読みに問題はないが、短い転調の音程感が課題となった。
ニ短調からニ長調に変わった5点C♯がピッチが上がりづらいようでした。

これは本人の発声によるものか?あるいは音程感(スケール感覚としての)の問題かは不明です。
もう一度復習してみて、その自己感覚の理由を明快にしておく方が良いと思う。

ドナウディのAmorosi miei giorni
こちらも譜読みの基本に間違いはなかった。
テンポの変化指示は、その指示を音楽的に自然に感じられて歌えることが大切だ。
特にゆっくりにするのはどうしてか?という感覚が自然にに着けることが出来れば理想的。

あとは声質。これも声がややこもり気味な点を修正した。
この修正はハミングをすることで響きを上顎に集める。
息を流そうとする発声の意識が強いと、どうしても声帯が開き気味になるため、呼気が起こす共鳴のために
響きがこもる傾向になる。
これは、声の大きさとしては結構な声量で歌えるのだが、歌詞が不明瞭になりやすかったりピッチが低めに感じたりという点が残るだろう。

ドビュッシーの「2つのロマンス」から1曲目「ロマンス」曲の特徴を良くつかんで雰囲気の良い歌が出来上がっていた。
練習では低音域で始まるフレーズの歌い出し方として、下あごを良く降ろすことを指示した。
L’ameのA母音である。
狭いeの母音の発音方法、Uの口でeをいう感じ。唇は突き出すように。
DouceなどのU母音も下あごを降ろさないで、唇を少しだけ突き出しつつほとんど先をすぼめるように。
この曲の高音への発声では、ファルセットにしないで当てたままで出すことを教えた。
お腹をしっかり使って、息をほとんど使わないで発声する意識である。

最後のEt de Paixの最後の響きは、音程が上ずらないように。弱声のために息が混ざると音程感が不明瞭になるので、ピアノの和音との和声感が薄れてしまうから。

発声のことを大きな観点でまとめると、喉を開ける(喉が下がる)ということと、軟口蓋方向を引き上げるという2つの上下方向に意識を向けるバランスによって
低音から高音まで声質の深みと倍音のある良い声で広い音域を歌えること、という理解が実感できれば良いと思う。

息で歌うのは合唱も独唱も同じ面はあるのだが、合唱ソプラノは息混じりの歌声の方がパートがまとまりやすいことで、全体のハーモニー感が出しやすい。
一方、独唱の場合はその声質の美しさとか同じ呼気を使っても効率よく響くという観点から、喉を使うという感覚が必要になると思う。
慣れないと、その点が喉で歌っているように思えてしまう点については、忌避しないで慣れてほしい。