すぎたさん

今度の23日のコンサートの3曲は、いずれも暗譜はほぼ大丈夫。
音楽もとても安定して、安心して聞けるレベルに到達した。
まずは大丈夫だろう。自信を持って歌って欲しい。

常にとまでは行かないが、時折極上の良い声が聞こえてくる。
HandelのLascia ch’io pianga,MozartのVedrai carinoは音楽が
導いてくれるのか、時折彼女の素晴らしく良い響きが聞こえてくる。
2点C~Fくらいの間で、その声は聞こえてくる。

課題は高音域の響きがもう少し音程が綺麗にはまることと、中低音の響き。
中低音もずいぶんと聞こえる響く声になってきたが、まだ少し不安定。
特に下降形で降りると、最後の低音域がひっくり返りそうになったり
当たったりという不安定さが残る。それから揺れること。

いつもやるように、イの母音はとても良く響く。
みなさんそうだが、アになるとどうも喉を変えてしまうのだが、同じで良いのだ。
どうもイでは出せても、アになると喉で出している気がするのだろうか?
イ~エ~アと変えて同じ響きになることを練習すれば必ず出来ると思う。

高音域は、ハミングで音程だけを狙うと薄くなる。胸の響きを混ぜて下のチェンジの声のままで、かつ音程を良く、というポイントのハミングで
昇っていけば、当たっていてかつ音程の良い高音域が手に入るだろう。

ドナウディの高音だけが、すこしなめてしまって、♭になるのが惜しい。
ヘンデルのアリアは、レシタティーボ、落ち着いてせかせかしないで
声を当てて出して欲しい。中低音域は、上歯に当てると良いだろう。
アリア部は、再現部で戻るときに、伸ばして繋げるのは良いが、それであれば伸ばす所はきちんとディミニュエンドしてほしい。

モーツアルトは間奏の細かい音符が入るところから少しテンポアップ。
歌の表情は大分付いてきて、良く分かる歌になってきた。
Sentilo battereのbattereの言葉を大切に。
最後のtoccami quaはあまりリタルダンドし過ぎない方が洒落ていて良いと思った。

まあ、しかし良く勉強して良く歌えるようになった。声も明らかに良い声だなと思える部分が出てきたのが大収穫だ。本番を楽しみにしている。

まなべさん

彼は勉強家で、良く勉強してくる。
声楽的にこのフォーレの「優しき歌」を聴いていて、特にどうという問題はないが声の技術に少しむらがあるように思った。
あるいは集中力の問題かもしれないが。。。

軽く出す部分でも、最低限の響き、当て具合は忘れないように。
その辺はアンサンブルとかなり違う部分だと思う。
また、高音域も音程が良いし、綺麗に当たっているが、持ち声そのままでエイヤ!と出している印象がある。

力に任せて、というのでもないが、喉の負担はあるだろう。
また、本当のクラシック的響き声質のまろやかさ、という意味でも、鼻腔共鳴は覚えて行くと良いだろう。

特に低音になると、そのまま合わせてしまうので喉がちょっと心配な時がある。
また、今は若いから良いけど、もっと歳を経てからも楽に歌えるようになるはずだ。。。
それに声質、という面ももっと良い声になる可能性が増すだろう。

声でダイナミックを良く出すよりも、音楽的なダイナミックはピアニストさんに任せて、声は今のまなべさんの状態であれば、メゾフォルテを基準にしておいた方が良いだろう。
あまり無理なピアノやフォルテにしない方が良いと思う。

アンサンブルとしては、リズムの一定(ビート感)ということは大切だ。
自分は一定のつもりでも、結構流れていくことがあるもの。
この曲集はあまり流れないでかっちりと歌うほうが良い。

先に進みたくなっても、一歩我慢して縦のリズム感を大事にすることも大切。
器楽的だし、品の良い演奏になる。

しかしながら、好きな曲を気持ちよく歌う原点が充分に理解できるのが良いところ。
本番も思い切り良く、歌って欲しい。

ピアニストさんは、とても難曲で大変だと思うが、今日決めたリズムのテンポはくれぐれも守って欲しい。出演者が多いので、その辺の整理整頓、本番時にどうやって瞬時にイメージング
出来るか?良く準備しておいて欲しい。

さわださん

今日は暗譜ということで、譜面を外して歌い出したら途端に自信がなくなって、以前の悪い時の彼女に戻ってしまった。

人それぞれで、事情というものがあるのだから、暗譜は絶対ではないのだ。
ということで暗譜はなしに、譜面台を立てて歌うことに。
暗譜が目標で本番をやるわけではないのだ。
お客さんが安心して聞ける歌の方が良い。

もちろん暗譜でなければ出来ない演奏もある。
それは表現、声による演技的な要素。
しかし特にクラシックの演奏というのは、声を聴くこと音楽の抽象的な外見を良く分かることが大切になる。
そういう意味でも今回はしっかり譜面を見て、安心して集中して演奏できれば大成功と言いたい。

「河のほとりで」は付点4分音符が40近くくらい、かなり重くした。
それは彼女の声の特質を良く出せるからである。
ただ、ブレスがきついから、長いフレーズを無理しないこと。

「月の光」は歌手さんの声のコントロールは一切問わない。
良い声だけ出して歌えれば良い。
それよりも、ピアノの伴奏の左手の押さえ傾向と、右手の歌う加減を良く出して欲しい。
そして、テンポも設定したテンポをくれぐれも守って。
Au calme claie de luneの特に左手の低音部のアルペジオの響きを充分響かせて。

「リディア」は本当に素晴らしい。
こちらもテンポの重さが練習通り出せれば大成功である。
本当に良い声が出ているので、くれぐれも譜面を見て集中して歌って欲しい。

メンデルスゾーンの二重唱

最後にあめくさんとのメンデルスゾーンの二重唱を練習した。
ドイツ語の語尾のTやDの子音の処理だが、アンサンブルなのできちっと合わせて欲しい。
譜面の音符の長さよりも外に出して子音を処理するので、その場所を確認にしてタイミングを合わせる様に。

ただ、掛け合いでそれぞれのパートがブレスが足りないのに、無理して外に子音を出すことはない。
ブレスの余裕にあわせてで良い。あくまで二人で合わせて歌う語尾の処理の話である。
これも音楽のうちなのである。

「我が願いはこの愛すべてを」は、軽快なテンポ感を大切に。
「夕べの歌」は、くれぐれもゆったりとした大らかさを大切に。
バランス的には、あめくさんのソプラノがもう少し声が出ると良いかもしれない。
さわださんはドイツ語の読みをもう一度良く練習しておいて欲しい。

あめくさん

しかし彼女の歌を聴くたびに、未完の大器という言葉を思いだす。
初めてここに来た時からそう思っていた。
なかなかマイペースな人なので、飛躍的に良くなるのでもないが
時折見せる声には、ただならぬものを感じることしばしばであった。

このところ中低音域の響きを改善するために、思い切って一段低いチェンジの声を勧めてみた。
それで、改めて確信したのは彼女はその一段下の声区の響きを使うことが正しいだろう、ということ。

そのまま出してしまうと、いわゆる地声状態で喉にも悪いし響きが少し悪いし上の声区との繋がりも悪くなる。

ここでもハミングが大切で、下の声区でもハミングで音程をきっちり高く合わせてそこから母音に換えると、あたかも上の声区とミックスしたような響きになる。
中音域の1点Aくらいでこの声を作って降りていった低音が最高の低音の響き、ということになる。これをやらないと、少し声が太すぎてしまう。

逆に高音域もまったく同じである。同様にして最適な響きが決まれば
恐らくそのまま上がって行っても、自然に上の声区につながるだろう。

今回はそこまでは望めないが、積極的に下の声区を使ってもらう方向にしてもらった。
アーンの「我が詩に翼ありせば」でも、中低音の響きが実に魅力的である。
また、特に出だしの低音を出す際、声区を意識する必要はあるが、響かせ方は上に響かせる意識を持つことである。Mesと発声する際に発音のMも声の方向も頭を意識した方が良いだろう。後はとても良い。

プッチーニの「私の愛しいお父様」も同じである。
こちらは、アンサンブルでピアニストさん彼女の高音を出しやすくするようにピアノのちょっとした間合い、リタルダンドを充分に意識してほしい。
最後のO Dioは軽く入っておいて、クレッシェンド。
クレッシェンドする際には、口もよく開けてやることである。

今回は曲数が少ない分、音楽、発声に良く集中して落ち着いて歌ってほしい。
夜のコンサートだから声の調子も良く出しておいて欲しい!
未完の大器!今度のコンサートも期待している。

ふかやさん

本番前最後のレッスンになったが、今回もアリアの最高音であれやこれや、となった。
なかなか成功率が高くならないのだ。
これは、一にも二にも発声である。
発声と言うのは、細かい技術もあるが、声の使い方の配分、配慮というちょっと意識すればすぐ実現できる要素もある。

高音は抑えれば良いというものでもないから、一概にそうとは言えない
部分もあるが、それにしても一番大切な高音に入る前に、あるいは
その前の曲でも、喉を大切にするよりも、気持ちで歌い過ぎてしまう部分がなきにしもあらず。

気持ち良く出せることは大切だが、その気持ち良さの中にも、わずかな冷静さを。

低音は喉で鳴らし過ぎないこと、フレーズの最初の声のアタックは大切に。
喉でえいやっと押さないこと。
高音に入る直前の響きを正確に良い発声で入っておくこと。
そこから間合いを取って一気に上ること。
間合いは取るけども上がる時は一気に。

今回はトスティの「夢」を先に歌うが、こちらで充分気をつけて。
最初の入りの声、途中で気持ちよくなるところで、出しすぎないこと。
この曲は軽快さが命だから、テンポ遅くならないで、軽く爽やかに歌えば良い。
必要以上に入れ込みすぎないこと。
そうやって喉を少しでも労わって(労わり過ぎずに!?)最後の大切なアリアに望んで欲しい。

アリアは、何度も言うように響かせるけど、最初のレシタティーボの低音はちゃんと軟口蓋を上げた響きを意識して。
アリア部からは、最初から飛ばしすぎないで、最後の最高音に取っておく。

最高音の前の響きを喉で押さないで、高く入っておいて最高音は下に踏ん張るポイントを加味すること。
TantoのtoのTはあまり発音しないほうが良い。
それから、レッスンで言わなかったけど、この最高音はオの母音だが、そのせいで喉が下がり過ぎるかもしれない。
オよりもアと意識するくいらで発声してみるのも良いだろう。
ただ、ひっくり返り易いから重心は低く押さえ込むこととのバランスを見つけることだろう。

しかしながら、本番は集中力できっと良い結果が出るだろう、と心配していない。
伸び伸びと歌って欲しい。