くまみさん

今日は発声をいじりすぎてちょっとのどの調子が悪くなってしまった。
声が出ない人なので、今までとにかく声を出す方向でやっていたのだが
それが災いしたか、今度は高音がとても難しくなってしまった。
今の発声のままで勿論声は出る方向に行くが、そのままだと今度は高音が本当には伸びないかもしれない。

久しぶりに喉を触ってから気づいたのが遅かったが、声を出そうとするあまりに、今度は喉をぎゅーっと下げること
ばかりに行ってしまっていた。
そのために、実際に高音に行くと喉が下がっても出る範囲は何とかなるが、ある音以上になると突然出なくなってしまう。
喉を下げようとするばかりで、軟口蓋が上がらないので、

結論から言うと、どうしたらもっと体がリラックス出来るか?喉がリラックス出来るか?
ということをまず主眼にするべきで、結果的に声が出れば良いのであり、声さえ出ればそれで良しという考え方は総合的にはあまり良くないのだ。

声と言うのは本当に人それぞれで、彼女の場合は、どのような声であっても、まずリラックスさせることが大切なのだ。それは舌や顎や、もちろん喉頭もである。

あまり来られない人なので、なおのこと難しいが、次回は発声練習を完全に変えてみたい。
ドレミファソなどの音階の発声ではなく、低音域から一音だけでロングトーンなどでやってみたい。

ともあれ、今日は今まで通りの出し方でともかくコンコーネの8番と9番を歌った。
中声用でも、高声用でもこの練習曲の音域であれば、今のままでも表面的には何とかなるが、恐らく歌っている本人はあまり愉しくないのではないか?
声量があまりなくても、綺麗な響きでもっと楽に気持ちよく声を出せることをこれから考えて行きたい。

フランス18世紀のベルジュレットからJeunes filletesも発声で練習した、喉に力を入れないことが災いして、今度は喉が上がりすぎる歌になってしまった。
これでちょっと調子を崩したようだ。
喉を使わない、下げないでハミングをするのは高音のある特化した練習方法なので何でもかんでもやってしまうと、今度は喉を痛めかねないのが注意事項。
今更ながら教えることの難しさを感じたレッスンだった。

はらさん

発声は上向形でイの母音から始めた。
その後下降形をやり、再度上向形で母音アで。
下降形では何と3点Cまで出した。
今までの彼女は高音をあまり出したがらない、出すとすぐに疲れてしまう感じが見えていたが、今日などはずいぶんと積極的に声が出すようになってきた。

下降形だと良くはまるようになった。
後は上向形の音形でも、最高音がきれいにはまることを目指したい。
未だ少しなめてしまう、はまらない傾向がある。

曲はヴィヴァルディの”Io son quel gelsomino””
一度通してみたが、どうも流れてしまうので8分音符3つをきっちり守って伴奏を弾いてもらった。
それからフレーズの終わりが8分音符で切れる音形の8分音符を長く伸ばしてしまうのでそれを音符どおりに気って歌ってもらったら、見違えるほど綺麗にかっちりとなった。

この音楽はやはり強さが身上だから、本当は5線の上の響きがもっと前に通った声になれば更に完璧だと思う。
例えば、Io son quel “”gel”” sominoのように””で囲ったところは、高くなるがこういう響きを後ろに引いてしまわないで、前に持っていくことである。
この発声は、これからアリアなどやるうちに、少しずつ少しずつ覚えてもらいたい。

Pupilletteは、音楽の工夫が良く出ていて、前回書いた落ち着いたリラックス感が良く出てとても良くなった。
出だしのアドリブの前奏は、8分音符のラインをかっちりと出して、歌に入るに従い少しリタルダンドするだけで、落ちついた感じになる。

出だしのPuが出しにくそうだったが、ピアノの音が切れてからブレスをしていたせいだろう。
ピアノの前奏が響いているうちにブレスをゆったりして、切れ目なく出れば、出しやすくなる。

モンテヴェルディの方は、これも工夫があってとても良かった。
後は伴奏のアドリブ、特に4番目のアルペジオははっきりとさせ、あまりペダルを踏まない方が良い。
歌は、これも低音をしっかり出す方が劇的である。
高音は明るく歌って欲しい。悲痛な歌だが、明るく歌う方が逆に悲痛な表現が目だって良いのである。

演奏自体は今日の合わせでほぼ確立した。かなり良いアンサンブルになった。
後は、本番の集中力次第である。
歌手さんの方はもう心配がない。
むしろピアニストさんたくさんの人の曲をやるので、切り替えが大変だと思う。
それが上手く行けばこのプログラムはとても素晴らしいプログラムになると思う。
楽しみにしている。

たかはしさん

今回も無理をしない選曲もあったが、ヘンデルのVadoro pupilleは、ほとんど言うことがなかった。
ピアノの伴奏もリズムがゆったり、歌も優雅に大らかに、このアリアの美しさが存分に発揮出来る演奏になっていた。
本番が実に楽しみである。

モーツアルトのドン・ジョヴァンニのエルヴィラのアリアも、レシタティーヴォは表現力が良く顕れるようになった。
アリアだけは、やはりテンポがどうも緩いので、少し巻いてもらった。
実はこのアリア、モーツアルトらしくとてもとてもシンプルなので、その分歌手の声質の洗練度や劇的な表現力のあらが良く目立つ。

そういう意味では譜面づらの難しいものや音域の広いものの方が、何となく歌いやすいものである。
良く勉強して、高音が良く決まって、アア良く出来ました、で終える面があるが、モーツアルトのアリアというのは、なかなかそうは行かない面がある。

モーツアルトというのは、恐らく声楽作品のなかでももっとも純粋に「西洋的」な趣味、要素が要求されるのではないかな。そういう意味で日本人にはもっとも難しいものだと思う。

今の時点では彼女の精一杯が良くあるので、これ以上言うべきことはない。
テンポが緩まないように、一気呵成に歌いきってほしい。

わきくろまるさん

前回のレッスンでは声がへろへろになり勝ちで、どうなるか?と心配したが彼女はこの1週間でそれを見事にくつがえしてくれた。
良く勉強してくれた。
なかなか負けず嫌いで頑張りやさんだ!

姿勢のぐらつきによる喉の浮き上がりを見事に押さえ込んで、当たった声がうまく使えるようになった。
また、Piacer d’amorも以前に比べて、ブレスが頑張れるようになったのが成長の証。

トスティ「アヴェ・マリア」は、これもブレスが持つためにリズム感がぐっと安定した。
最後のリタルダンドだけは、はっきり出して欲しい。

ロッシーニ「約束」も少しテンポを落としたせいか、声がヘロへろしないし
高音も綺麗に当たっている。彼女の申告でテンポを速めたが、これもOKだった。

この人は発声練習では目の覚めるような良い声を出す。
素晴らしい持ち声の主だ。
惜しむらくは、歌詞がついて歌になるとそれが60%くらいしか発揮されなくなること。

これからも課題はあるが、特にイタリア語の発音と良い発声の声をどうやって折り合いをつけるか?
理屈で言えば、要するに母音が変わっても響きが変わらないような、歌に特化したアーティキュレーションを考えることである。

声自体は、やはり中低音は大切にすべきだろう。
彼女の声の美点の原点は中低音だと改めて思った。
豊かで明るい響き、艶々とした何か高価なシノワズリーのようである。

高音は今の時点では、あれこれ考えて練習しすぎない方が良い。
下から上がっていって、自然に出せればその範囲でそれ以上高望みすべきではないだろう。
後は、機が熟してアリアを歌う日には嫌でも必要な声が出るはずである。
私は楽観視している。

みねむらさん

風邪の余波がまだ抜けないようだったが、声は調子が良かった。
温まるのに時間がかかる傾向はあるが、温まれば良い状態である。

発声で一番効果があるのが、イの母音からエそしてアに応用させる方法。
これをやると、アなどの開母音の響きが集まる。
私もこれは口が酸っぱくなるくらい言っているが、くれぐれもこの響きを覚えて欲しい。
口を大きく開けてお腹から力強くだしても、声帯の響き自体すかすかしてしまっては意味がない。

さて、アーンのQuand la nuit n’est pas etoilee はピアノのテンポが少し遅いので、滑らかに流れて欲しい。
声は低音は良くなった。
まだ中音部~中高音にかけて、響きが喉を開いて出す傾向が強い。
もっともっと鼻腔に通すことを心がけて欲しい。

特に狭母音は、発声で良い響きが出る、イの母音の応用を忘れないように。
全体に狭母音が開く傾向にあるのは、上記の彼女特有の発声のせいである。
もっともっと狭く、締めた狭母音を研究して欲しい。
特に口の横側の締りをもっと締める意識。
特にウの母音が甘い。

これは母音の形と言う意味もあるが、鼻腔への響きを出す意味でも
有効である。
狭母音に限らず開母音も同じことだが。

フォーレのLes roses d’Ispahnも同じである。
狭母音の響き、響きを集めることである。
後は、言葉の発音をはっきりすること。
例えば、ただづらづら繋げて歌うだけではなく、ブレスではなく切れ目のあるフレーズも必要である。
Oh Leila depuis que de leur vol legerなどのLeilaとDepuisの間などは、切れ目を入れる典型である。
そういう箇所がほかにも何箇所かあると思う。

この曲はとてもシンプルでフラットなので、言葉の扱いと音楽的な声の処理とのバランスそして、ピアノ伴奏部の音楽の柔軟さなどがからみあって、ようやく立体的な音楽になる。
何となく、ぶんちゃかぶんちゃか弾いて歌うだけではまったく何の面白みもないのである。
その辺が難しいところ。

ヴェルディのトロヴァトーレは伴奏さえ重いい3拍子が上手く出せれば、成功だろう。
彼女はこの段階では声がよく出ていて力強い。
余計な小技なしで歌えるので、歌いやすいと思う。
トレモロはあまり無理に出さなくても良いと思う。
全体の力強さ、流れないで激しい思いを内に秘めて歌う
我慢のようなものが、レガートと言う方法に出せれば成功だろう。
ただ、くれぐれも声を引いてしまわないように。”