いそがいさん

時間が短かったので、軽くだけ発声。
ちょっとしたことで素晴らしく良くなるのだけど、そのちょっとしたことが
どれだけ理解出来たか、確実に出来るかだろう。
つまらないことだけど、大切なのは発声では基本的には音符を一つ一つ打たないで息の流れでひとつながりにして発声することを覚えて欲しい。
ドレミファソ~はド・レ・ミ・ファ・ソと意識しないで、最初のド~で出した
声をレミファソ~に繋いでいくこと。

イの母音で発声したのは、彼女も下顎の力みが強いため。
下顎を意識しないで発声できる母音ということ。
後は、上述のドレミファソ~を上に行くほど声を前に通していくこと。
上に上がるほど前に細く集めるように。口の前と言うよりも目と目の間くらいを狙って。

それでも以前に比べるとずいぶんと進歩した。
このように発声練習をすると、響きが鼻腔に通って上顎に乗る響きになる。
後は母音をアにしても、下顎を使わないで出来れば、この母音でも
イと同じように前に響く声になる。

曲はシューマンの「女の愛と生涯」
5曲目~7曲目までを歌う。
5曲目に大分時間をかけた。
テンポの設定と入りのタイミングを微妙に早めに。
晴れやかで明るい気持ちを歌っているから、消極的だったり、おずおずしてしまっては何の意味もない。
低い声を強く出すのは、脳天に当てる感覚で、胸に響かせると地声に落ちてしまうから要注意。

この曲、ブレスが実に取り難いが、少なくとも2小節は繋いで歌おう!
最後のページのAber,,のRitはしっかりと確実に、最後に向けて段々と重く。
元々Ritというのは、徐々に重くするものである。
そしてA tempoは、即座に戻すことで、ここの一瞬の懐疑から我に変える表現が易々と出来るだろう。
ピアニストさんは、3拍目もしっかりと。

6曲目は高い伸ばす音符が大分柔らかく優しい表現になった。
後はブレスポイントを徹底的に守って欲しい。
それだけで音楽的な緊張感がぐっと良くなる。
ピアニストさんは、8分音符の刻みの和音の音色、バランスを充分に大切に。

7曲目は、とてもよく歌えていた。ピアノの右手のアルペジオはきらきらと
良く響かせて欲しい。

後は言葉の発音を徹底的に練習して欲しい。

のうじょうさん

発声練習は大分調子が良かった。
高音もコントロールがずいぶんと効かせられるようになったのが大進歩。
イの母音の上向形で中低音から中高音にかけて、もう少し鼻腔に入れるような発声がもう少し覚えられると、多分飛躍的に良くなるだろうな、とその後、曲を歌うのを聞いても思った。

喉を開くのはとても上手くなったが、鼻腔の開きとか、そこから前に響かせるポイントがまだ不完全ではないだろうか。
それが出来るようになると、中音域から中高音域にかけて、あるいは高音域もだが本当に喉ではない、響きが完成されるのではないか、という印象が残った。
これは、本番が終わってからじっくりやってみたい課題だ。

曲はアリアから。
このグノーの「ロメオとジュリエット」は、やはりリズム感「乗り」が何といっても大切だ。
声楽的なことをいえば、本番を目標とすれば一つの短期的な意味での高いレベルに到達した、と今日は思えた。
特に最高音は、抑制の効いた品の良い声色で完璧に近かった。
メリスマもかなり自由自在に転がるようになっている。

後はピアニストとのアンサンブルで間合いがグッドタイミングになれば
遊びも出来てきて、更に素晴らしい演奏になる可能性がぐっと近づいた。
出だしの笑い声の導入だけは、くれぐれも愉しく笑いを意識して欲しい。
そのために、演技ということではなく、テンポ設定をくれぐれも間違えないように。
勢いが大切になるだろう。

ピアニストさんは、歌手以上にこの楽譜に書いてあるダイナミックをしっかりはっきり出して欲しい。特にクレッシェンドからフォルテにいたるダイナミック。
オーケストラである。
それから、歌手と絶対に合わせなければならないポイントを必ず守ること。

ドビュッシーの歌曲「噴水」は大分有機的な流れとつながり、一体感のある演奏になった。
後は、内容的には前にしっかりと物を言う部分と、自分の中で気持ちよさにひたる部分のメリハリをもっとはっきりつけて欲しい。

後者の場合、特に中低音域は声を出そうと意識すると、暗くこもってしまから高く明るく発声することを大切に。
下顎でアーティキュレーションしないで、鼻腔を良く開いて高く明るく発音発声してほしい。

フランス語の発音はとても良くわかるようになった。ほとんど問題ない。
ピアニストさんは、これも歌手の入りとピアノの入りのタイミングを大切に。
そして、修飾する連符の転がり、流れが重くならないように。
前に前に進める転がり感を大切にして欲しい。

「夕べに」は、とてもダイナミックでまとまりのある演奏で立派なものになりつつある。
前半の町の喧騒や駅の雑踏、汽車の騒音の場面の音楽は素晴らしい。

中間部の静かなところは、特に中低音の響きが暗くこもらないように、
小市民の幸せを自分の境遇とはまったく逆にイメージしてつかの間の幸せを夢見るように歌って欲しい。

最後のprenez pitie des villes prenez pitie le coeurは、声を抑制するよりも祈る心さえあれば、むしろ目を見開いてしっかりと神様に祈る気持ちの方が良い歌になるだろう。
ピアニストさんも歌手さんも大きく感じてゆったりとしかし心底からの祈りをこの場面で実現してほしい。

それにしても、終わったあとは感動を覚えるくらい素晴らしい演奏になった。
思わず感謝の言葉を述べずにはいられなかった。
それは彼女が、真剣に集中して演奏してくれたからに他ならない。
そういうとてつもない集中力が彼女のもっとも素晴らしい財産であると思う。