時間が限られていたので、手短に発声、のつもりがやはり30分くらいかかった。
今日は2点Dから下降形で始めて、次に母音イで上向。
次にハミングで上向で上がり、最後にハミングから母音に変えて再度低音から上向。そしてIaIaIaの半母音でもう一度上向、という具合。
ほとんど声慣らし、温めるという意味合いだが、ともかくも地声は影を潜めてチェンジボイスで低音から高音まで回せるようになった。

これは、彼女のような喉にとってはなかなか大変なことで、彼女の努力振りが良く分かる。
それにしても、仕事が忙しくても、はいずってでもレッスンに来る彼女の根性には頭が下がる。むしろこちらがたじたじとするくらいである。
普通よりもハンディがあるからなのだろうか。
レッスンだって、毎週来るわけではないし、それほど練習時間が取れているとも思えないが、良くぞここまで頑張ってくれていると感心する。

とにかく声帯さえ温まればかなり良い線に来るようになった。
後は、喉を下げて声を出す癖を早く取ることである。
言えば、治るようになったし、以前と比べても言って治して出てくる声が違う。
以前は喉を下げる力を取るように、というと、今度はブラブラになって喉が上がるくらいになったが今は程よいところが大分つかめてきた。

喉を下げるのは、彼女の場合ブレスを胸で取って肺にためて、ためた息を一気に出すために喉を下げるのである。
そのため、確かに声帯は開いているが、声のコントロールがまるで効かないし、声帯が綺麗に当らないからこもった野太い声になる。
本人は恐らく一見安定しているように感じるだろうが、実は結構喉には負担なのである。

喉には絶対力を入れないように、舌根に力を入れないようにである。
その分、姿勢を良くすることと、頬を上げて上顎で歌うことである。
発音の際に、常に頭の中に向けて発音する感覚、あるいは響きを入れる感覚である。

この場合の発音というのは、主に子音。
子音の発音の際に、常に下に向けて力むのではなく、上に向けて発音するのである。
NでもLでもKでも舌を使う子音では常に舌が動いた瞬間に響きが上に向くことを意識すること。

これだけで、とても良い声になっている。
Nel cor piu non mi sento もSebben crudeleもこれだけで、ブレスも伸びるくらいである。

こうして良い喉の当り具合が出てきたら、今度はブレスと声の関係における身体の状態に目を向けて欲しい。
声を出すときからお腹の下腹部を少し中に入れておいて、ブレス。
声を出す時には単純にお腹はへこんでいくように。
ブレスのタイミングでお腹を緩めれば自然に息が入る、という具合。
これはなかなか難しいが、練習の価値あり。
ぜひともこれから練習して身に付けてもらいたいと思っている。
いよいよ核心に迫ってきたという感じ。頑張ろう!