風邪気味で最初は響きが落ち、かさかさしていたが、歌うに連れて調子を上げていた。
意外と丈夫な喉の持ち主である。
発声は、下降形で始めて1点Asくらいまで、その後上向形でやはり1点Asくらいまで。
前回、ずり上げる癖があったのが消えて綺麗にアタック出来るようになっていた。
彼の場合、喉が意外と強いので当てても時間が経つと開いて丁度良いひびきになるという具合である。
発声もそこそこに今日は伴奏合わせとなった。
ドビュッシーの4曲。
「噴水」から。
これが一番難しい。

譜読みのレベルの話ではなく、長い曲をどうまとめるか?あるいは聞かせるか?という点。
散々合わせて見て結局基本テンポをかさ上げして、少し今までより速めにしてみること。
その上で、テンポの緩急はきっちり付けること。
そしてそれらの変化のあるテンポの音楽的な区分の中にも更に音楽に応じて緩急はあること。
テンポが変わりました、はい!その通り守りました、ではなく。
それからピアニストさんリタルダンドははっきりと、確実に出して欲しい。
この曲はもうひたすらこれらの点で熟成出来れば良いと思う。

「忘れられし小唄」の「我が心に雨が降る」は、テンポ少し速めに変更。
歌はほぼ良い。
「それは物憂い心地」も声の扱いはも良い。特に最後のフレーズのブレスの長さは感心。
ピアノの出だしは、相当遅く感じるべきだろう。
Piu mossoからは早過ぎないように。

最後に「マンドリン」これもピアノの出だし、もっさり確実な弾き方にならないように、勢いを大切に。
歌は半音階で長イフレーズで下降する所はポルタメントが付くくらいに、滑らかに。
この曲もテンポ感で決まるだろう。

喉さえ充分に温めておけば良いステージが期待出来そうで楽しみである。

たかはしさん

咳に悩まされていたようだが、ようやく落ち着いたようである。
声の調子も良かった。
今日は発声で特にどうこういう練習はなく、7月24日の曲選びとなった。

ラモーの「エベの祭り」から「飛べそよ風」
譜読みはほぼ出来ていて、後は歌いこみを待つばかり。
非常にシンプルな曲なので、逆に処理が難しい。
それから、やはり2点E~Gくらいにかけての音程が上ずる傾向。
上に上げ過ぎないで、前でも後ろでも良いから真っ直ぐに出るイメージを持つと良いと思う。
声そのものの魅力、あるいは修飾音符の扱い方、ピアノ伴奏部の聞かせ方、などなど逆に難しさを感じた。
ともかく選んだのだからやり通してみたい。

声のテクニックとして困るようなフレーズは何一つないだろう。
トライして欲しいのは、小さな修飾と、トレモロである。
喉が楽になっていれば、出来るはずである。
逆に回らないのは、喉に力が入っている良い証拠である。

一押しはパーセルのMusic for a while
はらさんの持ってきた伴奏のアレンジが秀逸なので、これなら演奏会に使える、と言うことで使わせてもらった。
この曲の中高音域の声はとても伸び伸びしていて気持ちが良い。
中低音域は声をこもらせないように。暗くではなく高く明るく処理して欲しい。
後はドニゼッティだがこれは後半の高音で引かないように積極的に歌えればまずは成功だろう。期待したい。

わきくろまるさん

相変わらず声の調子が良い。
この人は調子が悪いという時がほとんどない。

彼女の歌う口元を見ていたら、偶然舌の使い方が見えた。
舌の両脇が少し盛り上がって、中央部がへこんだような面白い形になっていたが、これは舌先に緊張感を持たせているのだろう。
舌全体が奥に引っ込まずに、舌を引き入れようとする喉頭と拮抗するような運動を自然にしているのだろう。

いつもながら上手く出来てるな~と思うのが、中音域の上向フレーズの発声をすると響きの谷間が出てきて、響きが出にくかったり、
あるいはそのために音程が♭になったりするものだが、そういう所がほとんどない。非常に滑らかで綺麗である。
課題は高音とはいっても、2点hくらいまで確実に出せるようになってきている。
まだ多少締まるが、この程度は仕方ないだろうという程度である。
出しながら少しずつ締まらない響き、あるいはMezzaVoceでも、喉の上がらない締まらない高音を目指して欲しい。

というわけで、今のところ発声そのものをいじる必要を感じない。
ちょっとした間違い、あるいは方向を指し示せば良い方向に自然に行ってくれる健康的な喉を持つ人だ。
強いて言えば2点Cくらいで声が変わるので、そこ辺りが足場になったフレーズで上に行く時の高音の支えだ。

ベッリーニのMa rendi pur contentoは、とても美しい歌唱であり、この曲にピッタリの声の表現。
最後のVivoの降りた時の音程に気を付けて。それから、フェルマータの後の間合いは、急がないで落ち着いて。
ManonのSola perduta abbandonataは、これも細かいことは言いたくない。
ともかく良い感触だけを大切に、ひたすら集中して歌ってもらえれば良いだろう。任せたい。
Think of meをやってみた。
良く歌えているけど、練習はゆっくりと確実に。
中低音の響きは押さないで、高く明るく発声してほしい。
最後のカデンツは、高音の声そのものというよりも、フレーズの流れ方、テンポ感、間合いを大切に。

みねむらさん

今日こそは良い感触が。。と言いたい結果が出たと思う。
鼻腔で歌う感覚。
彼女の苦手な1点Aくらいから2点Fくらいにかけての音域。
開きすぎてスカスカになるか、分厚く当った喉声になってしまうかのどちからだった音域である。

恐らくこれはこの音域だけに限らず、やはりスカスカして細くなり過ぎる2点G以上の高音域にも有効になるだろう。
特に変わった練習法ではなく、以前にもやったことがあるもの。
最初にハミングで上向5度形で、徹底して上に行くほど鼻腔に入れるように練習。
その後、Nyuを利用して、鼻腔への響きを導くNの子音と、Uという狭母音で喉側の適度な開きと口を開かないことで喉が開きすぎないことを利用してみた。
ちょっとでも喉で押すと、すぐに響きが落ちて音程が♭になるのが、彼女自身が分かるようになったのだろう。
注意すれば直るまでになったので、感覚は残っていると思う。

声質や声量と言う面で見れば、この鼻腔共鳴だけで良いのではないが、定着するのに時間がかかり難しいし、音程を出すところに関わるも基礎的な声楽のテクニックだから確実にものにしてから声質、声量の問題としてリファインしていきたい。
一遍に全てはつかめないのである。

曲はNostalgiaから。
歌になると、直ぐには前述の発声が反映出来なかったが、少し他の方法で応用してすぐに出来るようになった。
中音域のスカスカして痩せた響きが集まって、音程が全体に良くなったのが明瞭に出てきた。
この曲では、やや高音域でフォルテがあるが、同じように持って行ってほしい。

アーンのVile potabisやTyndarisなどは、全編MezzaVoceだから、まさに今日の発声が大切だろう。
ほぼ上手く処理できるようになって、音程がとてもよいので安心して聴けるまでになっている。
Tyndarisは、CroissentとViensに注意。下顎で降ろさないことと、ブレスの息が上手く配分できていれば大丈夫だろう。
Derniere Valseも同じだが、こちらは非常に音程感と声の質が良く感じられる。後はコーラスを入れて完成だ。楽しみである!