発声のこと少し分かった?と聞いたら、一所懸命出す、と答えた。
それでブレスを胸で吸わないで、お腹の動きで軽く吸うことを教えた。
詳しく教えなかったが、吐くことで吸うタイミングを持つことも。
彼女は高音がそれほど得意でもないのだが、練習方法かな?
曲を歌うこともあるので、それほど高い練習が出来ない。
高い声を出すのが特に好き、というようにも見えないので中低音からきちっと
教えている。
後はハミングでピッチを正しくすること。そこから軟口蓋を開けるNga~という発声を
教えた。特に中低音でこの練習はとても大事。
なぜなら、これがきちっと出来ないと地声になってしまう。
コンコーネは4番をさらった。
彼女は階名唱方に慣れていて、階名だとすらすら読めるのに、母音だけだと
途端に怪しくなる。
これも慣れだけど、もっと難しくなって変位記号が多くなると、それも不確かになるので、母音による相対音程感覚も付けたい。
例えば、今日やったプレヴェールの「寓話」も譜読み途上だが、階名だとほぼ合格だが、母音になると途端にちょっとしたことでつまずく。
言葉を付けるとこれはもっと難しくなってしまう。
結果的に言葉を付けて歌詞で歌うわけだから、階名唱法に頼りすぎるのも問題があるのではないだろうか?
手っ取り早く簡単なソルフェージュに対応するには良いが、現実はそうは行かないからである。
学校の勉強と実際の音楽との違いといえば良いだろう。
ところで彼女のフランス語の発音は、素晴らしい。
基本的な音の出方が完全に備わっている。
やはり子供時代から学ぶと、こういうところの違いが如実だ。
理屈抜きの世界だから。
彼女はこの歌を気に入っているらしく嬉々として歌っているので良かった。
また夏休み明けくらいから再開となる。
すぎたさん
今日は全体に非常に安定して、バランス良く歌えていた。
本番で歌うどの曲も安定していた。
全体に音程感が良く、またフレーズ終わりの揺れも極力目立たなくなっている。
彼女の努力が素直に成果に現れていて、こちらも満足。
このところ発声練習の声が安定してきている。
特に中低音は声量こそないが、確実に当ってきているし、喉の開きも適度に伴うようになったので
中低音らしい落ち着いた響きが出せるようになってきた。
また中高音域も、音程が良く息の乗りが良く、びんびんと響いてきている。
サルティのLungi dal caro beneは、最後の再現部からテンポが速くなって、中間部の少しゆったり感からの戻りが足りない。
せっかちな終わり方に聞こえる。
情熱的になるあまりに、ブレスが浅くなるのだろう。
それで持たないために、テンポが速くなってしまう。
ピアノも一緒になってしまわないように、落ち着いて終わるようにしてほしい。
マスカーニのAve mariaは、これもアリアからのテンポが軽いかな。
上手く綺麗に歌えていて、特にどうこうはないが、出来ればもっと重い方が良いし、多分マスカーニだと重くなるのだろう。
特に最後の盛り上がり辺り。
最後は落ち着いて。安心してピアニッシモの高音にアタックして欲しい。
焦るとかえって良くない。
モーツアルトCosi fan tutteは、ドラヴェラのアリア。
こちらはテンポも声もベストだったと思う。
暗譜も大体出来ているし、良く勉強されたと思う。
一番感心したのは言葉の意味が歌に素直に反映されて、声のニュアンスになっていたこと。
良く内容を把握していると思った。
ベストコンディションで臨めると思うので、当日は楽しみにしている。
たかはしさん
発声練習は軽く5分くらい。
イの上向形で始めてから、アに変えて下降形と上向形5度。
JaJaJaで。
調子はとても良い感じである。
今日は伴奏合わせだった。
パーセルのMusic for a whileが最高の出来。
最初の伴奏のテンポが重いかな~と思ったが、案に相違してそれが良かった。
音楽の詩情が現れた演奏だった。
静かで、それでいて内なる情熱と神秘の漂う音楽。
パーセルの真骨頂が現れている。
何も言うことなし。
ラモーのVole Zephyreは、テンポが固まった。
8分音符で回すところも軽快になった。
伴奏の薄い音楽なので、フレーズの入りのタイミングは特に注意。
彼女は遅れる傾向なので、少し早めに準備すること。
フレーズの入りは、音をお気に行くと大体が遅れるもの。
ブレスのタイミングで後は自然に出て気が付いたら出ちゃった、という感覚になれば最高。
そのためにはピアノの伴奏の音楽がきっちり頭に入っていることだろうか。
後は狙わないで自然に入ることである。
後は伸び伸びと歌えている。特に少し遅くなる中間部は彼女の声の真骨頂が現れていた。
強いて言えば、最初のテーマの高音で上ずらないように。気をつけて欲しい。
ドニゼッティは中間部の伴奏の重さがとても良くなったので、表情の変化が出るようになった。
基本的な声のことは良いのだが、後は本番で上がりすぎて、後半の高音で力まないこと。
あるいは、出し過ぎてかえって上ずらないように気をつけて欲しい。
軽めの声なので、高音はどうしてもピッチが高めに行き勝ちなのは仕方がないから、調子に乗って出し過ぎないことである。
程よさが出れば、彼女の綺麗な中高音が聞けるだろう。
今回は地味な選曲だが、彼女の良い声質が堪能できる選曲だと思っている。
そういう意味で、とても楽しみである。
さわださん
今日は本番前最後の合わせ、レッスンということ、暗譜を意識したのか、最初はどうも緊張気味で彼女の悪い癖が出てしまった。
声が消極的になってしまうことだ。
だが、これはちょっとのことで直ぐに解決。
指摘しただけで、直ったので大丈夫だろう。
それよりもフォーレの「秋」歌手が消極的になっているからといって、ピアノが同じようなことをやっていては、マイナス二乗の音楽になってしまう。
この「秋」「捨てられた花」はとてもテンションの高い音楽。
歌手も伴奏者も、どんな時でも、自分を鼓舞してテンションを高めて演奏に臨んでほしい。
歌は乱暴に歌うのではない。テンポ音符の扱いは丁寧に。だが、声はその響きを高く前にしっかりと出すことで、中低音のテンションは自然に高く感じられる演奏になる。
母音、特にアとエが彼女は不用意に開いてしまって、響きが散るので注意。
「捨てられた花」はピアノのリズム感、タッチが良くなったので、後は声だけ、
声さえちゃんと出せれば後は一気に歌いきるだけだから、今回の選曲の中では一番易しい部類だろう。
「祈りながら」は、実はややピッチが高めに行く傾向がある。
前回も思ったが、声が軽く気持ちが良いので敢えて言わなかったが、今日、指摘して微妙にピッチを下げてもらうと
やはり、この曲にはぴったりだった。
いわゆるメゾ的な和音感覚が出るので、やはり高め寄りジャストを狙う発声の方が良さそうである。
「我らの愛」は、最後の高音がとても安定して良い声になった。
これは言うことはない。
出だしのピアノのテンポ。歌が言葉が多いので、本の少し柔らかく落ちついて出て欲しい。
その上で、歌が出たらテンポを進めることが良い結果に繋がるだろう。
とにかく、今回のプログラムは最初にしっかりした声で始めるから、それが出来るかどうか?
で決まるだろう。
くれぐれも怖気づかないで、しっかりと始めることが出来るように。
顎の出ない姿勢で、しっかりと。
もう何度もやっているムジカCの舞台、怖気づいている場合でもないだろう。
堂々とお願いしたい。
きくちさん
今日は最後の伴奏合わせ、ということもあって、ひたすら合わせ。
また、彼女の極高音の調子を最優先ということで、ほとんど口を出さなかった。
自分もやっているから良く分かるが、プレイヤーの神経は繊細。
余計なことを言って、本来の調子も崩してしまうようでは、トレーナーの資格剥奪!だろう。
暗譜か譜面を見て歌うか?だが、超絶技巧を要するシュトラウスのAmorがとても難しいので譜面を見ることにしてもらう。
今回、こちらにきての初挑戦の曲が2曲。
どちらも非常に難しい。
シュトラウスは完全にコロの声の技術を要求されるし、モーツアルトは少し重い選曲となる。
しかしながら、いずれの難曲もピアニストさんの技術で実にそつなくまとまった。
楽々と伴奏を弾く方だ。
難しそうに見えないし、それでいて基本的なリズム、線、和音が全部ちゃんと表現されていて、歌とマッチ。それでいて、歌に勝たない。
強いて言えば、モーツアルトの音楽が歌手と合ってないな、と思えなくもないが、敢えて何も言わなかった。
歌手が特に要求していないからである。
リストOh quand je dorsは、伴奏者のゆったりした音楽つくりで静謐で神秘的な音楽が良く表現されていた。
歌手さんは重くなかっただろうか?
Amorは、絶好調だと思う。
暗譜が厳しいが、あと少し!と印象。
なかなかの曲なので、今後機会があれば歌うべきだろう。
その時は暗譜できると思うので、今回は譜面を立てることにした。
何より技巧にキャパシティ一杯の部分を使うので、そのことに集中してもらいたい。
モーツアルトは、安定している。
こちらも伴奏者の音楽がはっきり出ていて、緩急のテンポ差がはっきり出てメリハリのある音楽になった。
今日は何度も練習したのだが、最後に2点b当りの高音域が少し当り難くなった。
このモーツアルトは高音域の転がりと、中低音の充実と両方要求されるので、無意識に声の転換が出てくるので
喉への負担というか、変化が起こり易いのではないだろうか?
このこと自体は、今回の本番にはあまり関係のないことなので、気にする必要は全然ないだろう。
ただ中音域、特に1点b~2点Eくらいの間は、更に声の追求は必要だろう。
また、もっと下の1点Gから下も今は温まると声が転換し易いが、その方法もまだ改善の余地はあるだろう。
まだやや地声っぽさが残る感じがある。
ともあれ、こちらでは初めての本番だが、内容が素晴らしいので本番は期待している。