久しぶりだったが、変わらずまた素敵な歌声を披露してくれた。
自分で選んだ曲は2曲とも彼女にぴったりで、楽しませてもらったり、感心したりほろりとしたりで、久しぶりの彼女のレッスンは良かった。
良いレッスンかどうかは分からないが、久しぶりに来てもらっても変わらず音楽を歌を好きで続けている人との邂逅は嬉しいものである。

発声練習もやらずに、早速デラックワのVillanelleを。
このベルギーの女流作曲家のことは寡聞にして知らない。
ただ、この曲は耳に馴染みがあった。
明るくて女性らしい、典型的なコロラチューラ系の曲である。

意外と言っては失礼、と言おうかこちらが間抜けと言おうか、彼女はコロラチューラがぴったりだったのだな、と改めて思った。
こちらは受身になって、彼女の中低音の充実、という言に真面目に答えて教えていたが、元々中低音は出しにくい喉である。
もっともっと彼女の喉にピッタリの曲を与えるべきであった。
と半ば反省。

ただ中低音はやはりどうも暗くなる。
なぜだろう?
単に笑い顔で歌えればそれで良いだけなのだが。
笑い顔で悪ければ微笑みでも良い。
要するに口の使い方が哀しい歌を歌うように、中低音域を歌う。

それから、発音がこもること。
どうも低い音を意識するのか、声が奥にこもってしまう。

思ったことはそれだけであり、2点Fから上の領域は、声はまったく文句がない。
本人はうるさいだろう?と聞いてくるがそんなことは微塵も無い。
それほど強い鋭い声というわけでもないのである。

それにもっと重い高音を出していた、と思ったが、今日聴いた高音は、抑制が効いていたし、最高音でも、丁度良い当り具合である。

思ったより良く回るし出るので、オランピアのシャンソンを勧めてみた。
楽しく歌って欲しい。

最後にトスティのAncoraを。

これは確かに音域が低いと思ったが、それ以上に彼女の歌う詩情が溢れていて、思わずほろりとするものであった。
彼女がこういう曲が好きだったとは!
トスティであれば、適切な音域を探して、キーを上げれば済むことであり、簡単な話だ。
最高音をFisにするとちょうど良いので、1度上げることになった。

これも楽しみである。

はやしださん

今日は新たな伴奏者を連れてきての、伴奏あわせ。
のっけからセヴィリヤの理髪師。
出だしで良い声が聞けたが、徐々に喉が硬くなり、力んで高音がスカスカになり、掘ってしまう発声になってしまった。

まずは言葉を音楽のリズムで読むこと。
読む時にはトーンを高くして、頭で響かせるように発音することが喉にとって大切である。
次に、難しいパッセージを母音だけ、あるいはラララなど子音をつけただけで歌ってみる。
その時に、響きの場所、喉のポジションを確実にしておこう。

喉が不安定にならないように、顎を締めておくことと、響きは高く当てるのである。
ただしお腹はしっかり張っておくべきである。
特に高いところはお腹を良く引っ込めで、胸郭を上げるようにして。発声して欲しい。
逆に下に踏ん張ってしまうと、喉が開きすぎて当らないために、スカスカになるし、それを更に出そうと焦るから余計喉に負担がかかるだろう。

上記の2つの点を良く練習すれば、後はフレーズの歌い方を工夫すれば、完了だ。
特に小さく早口言葉で語るところ、あるいは呼びかけ、などの場所があると思うが、そういうところは逆に喉を休められるし
リラックス出来るだろう。
そういう場所を良く確保することである。
そして、朗々と歌うところでこそ、最良の声を披露できるように、声の配分を綿密に計算してほしい。

気分で何となくわーわー歌えるほど、この曲は易しくない。
喉も厳しいはずである。

最後にモーツアルトのAve verum corpus
前半から声をきちっと支えて出すように、と言う点は良くなっている。
後は、後半の長いフレーズの問題。

ここはきちんと声を当てて、先を考えずにしっかりクレッシェンドして欲しい。
最初に、ブレスを考えて、息を使わないでヘロヘロの声を出してしまうと、かえって後が続かないはずである。
きちんと声を当てるべき。
その上で、特にオの母音をもっと明るくアに近くしたほうがラテン語的だし、声にも良いはずである。

ピアノのは、この長いロングトーンの間の伴奏では、歌を引っ張ってあげて欲しい。
一緒に弾いてしまうと、歌手は長く感じて、息切れしてしまうはずである。

でも、伴奏をつけてどうにか目処が付いた印象で、良かった。
これからの頑張りを期待している。