たかはしみかさん
今日は軽く発声練習から始めた。
声がやや軽く頭からしか出ない印象なので、お腹を意識するように。
横隔膜を軽く広げるようにブレスすることで、声もそこから反射的に出る、という至極一般的な腹式呼吸と声の関係をもう一度再確認。
あまり頭とか顔面から声を出すイメージだけになると、声質が平たく浅くなりがちである。
上手く行くと負荷のかかった、適度な重さのある声になって良い。
微細な違いに感じるかもしれないが、声はこの重さがきちっとあることで、良い響きになることを覚えて欲しい。
喉がややもすると緊張して硬くなりがちなので、特に中低音域を発声する時は極力リラックスさせて喉を落とすような意識を持って欲しい。その方が声帯の本来のしなやかさが声に現れて自然だし良く響くはずである。
そういう状態を取り戻して高音に昇れれば、それが良い高音につながるきっかけになるはずである。
曲は試験で歌うというシューベルトのAn die musik
良く勉強されていてドイツ語の発音は前回に比べてもはるかに陰影に富んだドイツ語らしい響きになっていた。
語尾の子音も音楽的に処理され好ましい。
2番のさびの部分は最初ブレスを入れていたが、どうも音楽がそこでぶち切れて興ざめだったので、ブレスなしにしてもらった。
ブレスは充分持つのである。
声のニュアンスを大切に。
さびの所Fだったか、Mfだったか?、声はしっかり当てるが直ぐにディミニュエンドして、優しい終わり方になる。
典型的な歌曲スタイルの声の表現で、張り上げて伸ばすことをしない。
次にSeligkeitを。こちらも綺麗に上手く歌えているが、時々締まった声が気になることがある。
後は1番2番3番をどう意識して歌えるか?これは小細工ではなくて、歌詞の読み込みとイメージの創出にかかっていることだろう。
シンプルで美しい曲だから、自然でありながら確かな表現を目指したい。
最後にイタリア古典からSento nel coreを
非常に綺麗に歌えていた。歌も声も安定していた。
強いて言えば、最初に発声で確認したようにきちんとお腹から出す声が意識されれば更に本格的なものになるだろう。
ちょっとしたブレス時のお腹の意識と出し始めの声の意識だけで、声が良い意味で重くしっかりする。
本格的な声になれる声だから、そのあたりをこれから更に意識してほしい。
いとうさん
低音bから発声。彼女の声の嗜好はメゾソプラノである。
中低音をリラックスして出してもらうと、なかなかゆったりとした大らかな音楽を歌える。
喉は大きい方なのだろう、その大きさを充分生かしても彼女の声の出し方は無理がないので苦しさやきつさが微塵も感じられない。
そういう声のありかたが、音楽を歌うと優雅な雰囲気をかもし出すのが、彼女の声の美点ではないだろうか。
いわゆるクラシック的な美声というようなものではないのだが、雰囲気があるのだ。
ただ音程が良く余裕のある声なので、リラックスして聞ける声である。
ただ、うるさいことを言えば舌や下顎がやはり未だ硬く、そのために舌がこんもりと奥に入って喉を下げるために
響きがややこもった声である。
だが、以前のような神経質な細さがなくなり、リラックスして出せているので音程の良いことにくわえて好ましい演奏になる。
曲はイタリア歌曲のPiacer d’amor Bパターン。
前半の高音域に上がるフレーズで、tuttoだから唇を良く突き出して喉が上がらないポイントで出せるだろう。
そういうことをきっかけにして、音域が上がっても喉が締まらないように声を出す際に準備を意識してほしい。
Caro laccio,Nel cor piu non mi sento,Se tu m’ami,Sebben crudeleいずれも綺麗に落ち着いて歌えている。
声のことは無理が無く音楽的な歌が歌えるので、まずは細かいことは言わずに、積み重ねて行きながら少しずつ改善できれば良いと思う。
たかせさん
彼女は小さくてうさぎちゃんみたいなのだけど、中低音は意外なほど良く響く。
ただし、呼気がしっかり上に昇った発声が出来れば、という条件付。
こういう人が成熟したメゾソプラノの声を出すというのも、意外性の魅力だと思うが、本人はコロラチューラが目標のようである。
それはさておき、今はまずこの中低音で声をリラックスして出せるかどうか?が大切だろう。
高音の練習はそれがある程度定着してからにしたい。
そうでないと、偏った声になりそうだからである。
そのためには、身体を硬くして胸で吸っているブレスを何とか腹式呼吸にして、お腹からの呼気の波動で声を出せるようにしたい。
側腹を広げるように、といって教えたのだが、どうも上手く行かない。
腹式呼吸はむずかしい。
吸う方を意識すると硬くなるのだが、それでも吸う方に色々な意義がある。
まず側腹を使って横隔膜を広げる状態を掴むことで、声をきちんと横隔膜の動きで出す、という流れが出来るからである。
胸だけで吸ってしまうと、ここがなおざりになってしまい、喉を閉めた声になってしまうという理屈。
ともかく横隔膜だけというのは、慣れないと難しいので胸を使っても良い。
使っても良いから胸を上げて吸うのではなく、横に広げるように使ってみて欲しい。
それで入った気がするなら、それに越したことはないだろう。
前回姿勢を教えたが、そのために上半身が硬くなってしまっていたらしい。
それなら一端それは忘れても良いから、身体をリラックスすることを大切に。
ただし、リラックスと言うのはだらけている、ということではなく、身体全体の重心が低くどすんと立てる、と言う意味である。
片足だけで立ってみると、腰が落ちて重心が感じられないだろうか?
要は腰が落ちて、上半身がブランブランと楽な状態である。
コンコーネの7番から復習して9番まで。少し難しくなってきて特にリズムが不完全だった。
復習もある程度は必要だろう。
それにしても、良く勉強している。単に譜読みするだけでも充分勉強になる。
この先難しくなるが、譜面どおり歌えるようになるだけで、自然に声の順応力も上がるから頑張って続けて欲しい。
曲はイタリア古典からCaro mio ben
母音で歌ってみてから、歌詞をつけた。
歌詞の間違いはともかく、英語の発音の癖が強い。
或いは歌を歌うと英語の発音が発声になっている、といえるくらいである。
言葉と言うのはそれくらい最初に覚えたものが発声に関係するのだろう。
ともかくDとTはもっとシンプルに。気息を入れずに。普通の日本語の発音くらいで丁度良い。
後は身体をリラックスして胸だけではないブレスを心がけて、歌うことである。
ソプラノへの道は大変だが、今を大切にしておけば、後々効いてくるから忍耐強くやってほしい。
さわださん
声の方は好調である。
ますます中低音に磨きがかかり、太さのある良い美声になってきた。
紛う方無きメゾソプラノの声である。
ハミング、母音のイなどを経てJajajaで奥を開いて発声。
高音は2点Gくらいまでにした。
発声の声も一時は中音域が開いて散ってしまう声だったが、それも大分改善されてきた。
更に集まった声になると向う所敵なし!となるだろう。
早速フォーレの歌曲4曲を通してみた。
どの曲も声楽的にはほとんど気にならない、声の基本はとても良いものが出せるようになってきた。
後はちょっとした強弱のニュアンスをどのように付けるか?と細かい発音のニュアンスをもっと出せれば良いだろう。
Soirから。
出だしの声がお腹から出ない声だったので、意識してもらった。
Pと指定してあるが、ここは伴奏との和音感を倍増するためもあるから、良く響かせた低音を意識した方が良い。
特にメゾやバリトンの場合はそういう演奏になるだろう。
中間部の始まりは音楽が変わるから、少し軽めに優しさみたいなものを大切に。
再現部のC’est la pitieは、出だしと同様にしっかりと。
最後の盛り上がりの終わり近くにある、Tes yeux leves au cielのCielの2点Eの伸ばしはビブラートのないすっきりした声が欲しい。
そうすると透明なCiel(空)の雰囲気が出てくる。
Arpegeは譜読みが良く出来ていたが、中間部最後のAllez par lesの2点hナチュラルの音程が未だ不安定だったが、良く練習して
万全になったと思う。
後半の出だしから最後まで非常に良い声の表現になっている。
彼女はエンジンがかかると、本当に良いものを出せる人だと思う。
問題はエンジンがかかるかどうか?であるが。笑
後はLes present彼女の声は重いテンポが良いようである。
そしてその基本線が出来たら、その上で、楽譜に指示のあるPなどのニュアンスを大切にしてほしい。
Nellこちらもテンポ指示通りだと、意外なほどゆっくりなのである。4分音符=70くらいと言うのは難しいテンポである。
特にメゾやバリトンの声は、このテンポを遵守すべきなのだろう。
優しい声を出す場所、例えばQue ta perle et douce au ciel en flammeなどは、ただ小さい声を出すと支えのない
痩せた響きになる。
息の混ぜ方が多くなるその分だけ、喉を深くそして息をしっかりする意識を持つと、支えがなくならない。
単に声の色が変わるということを大事にすれば良いし、もっと大切にていねいに歌う、という意識でも良いだろう。
大きな声をしっかり出すだけではない、こういう歌い方を覚えると、曲の表現がぐんと幅が付く。
声の基本が良くなってきたから、こういう声のニュアンスをこれから覚えて行って欲しい。