はなむらさん

発声練習に力を入れた。
低音からエの母音でも良い感じで2点Gくらいまですんなり入れてチェンジも上手く行ったので、気を良くしてどんどんと高音の練習をした。
彼女は基本的に良く高音が出る喉だ、と思う。
今日は3点Fまでしっかり出せていた。
コロラチューラを目指せる喉だ。

ただ、高音を練習すると喉が上がってその下の領域との整合が難しいこと。
今はコロラチューラの曲をやるわけではないので、まずは2点bくらいまでの
声のポジションをきちっとしておくことだろう。

イタリア歌曲集の高声用をやること自体はどちらかといえば、高音に慣れておくことが一番。
一方で、声の出し始めはいつもきちっとお腹から出すことを忘れないようにすることと、口を横開きにする癖をなるべくなくしたい。
あるいは、口を突き出すように使って発音することも覚えて欲しいところ。

イタリア歌曲集は、Aria di chiesa,Sebben crudele,Caro mio ben3曲を練習。
どの曲もきれいに良く歌えている。
前述のように、特に高音域のイの母音などは、丸く突き出すように発音することで喉が上がらないで開くことを覚えて欲しい。
それから、気づいているか分からないが、高音域で喉が上がるような状態ではアの母音を発音する際にも、下あごを降ろして
極力喉が上がらないように注意することでもかなり違うだろう。

それから2点E以上の高音域になったら、特に発音には注意。
言葉を喋るように発音してしまうと、喉が締まってしまうので、常に口先が開いたまま発音できるような舌や唇を柔軟に使った
発音、発声を心がけて欲しい。

大別すれば高音はお腹、低い位置を意識して、低音は頭、高い位置を意識する事で、喉の状態は一定になる。
そのコツが分かるとかなり広い音域を縦横に使い分けられるようになると思う。

多分これからが難しくなると思うが、そこを辛抱で乗り切って欲しい。
きっと素晴らしいソプラノの声の世界が待っているだろう。

よださん

発声練習の声はリラックスして良い中低音。
1点C以上の声も、無理には出さないのだが、やはり喉が締まってしまう癖がなかなか抜けないようである。
ただ、下降形だと比較的きれいに当って出来るようになった。
下から昇る上向形の場合に、どうやったら上の高い響きをうまく対処できるか?課題だろう。
大きい声を出すのではなく、良く喉を開くことと、軟口蓋を高く上げることの両方を一まとめに出来るような
発音の仕方を覚えて欲しい。

曲は中田喜直の歌曲。
三井ふたばこさんの詩による「むこうむこう」
詩がシンプルで純粋なもので、彼の淡々とした衒いのない歌いっぷりがとてもよかった。
音域も丁度良い。
「鳩笛の唄」は旋律がロマンティックな分、歌いすぎに注意。
高音1点Gはやや発声に難があるので、3度落とした方を歌う方が良いだろう。
「霧と話した」は、出だしの有名なモティーブは、きちんと声を響かせてその響きをレガートに歌うこと。
さびの部分の「わたしはやっぱりなきました」は最上のMpの響きで、落ち着いてゆったり歌って欲しい。

総合的には、言葉の意味にイメージをきちっと持たせて歌うこと。
日本語のせいで、ついつい何も考えないがそれだと、聞いている人は何を言っているのか分からないことがあるものだ。
言葉を母音の連なりだけで歌うのは、歌として純粋なのかもしれないが逆に何を言っているか理解できないこともある。
自分の言っていることを、自分が理解して人に伝えるように歌うこと。
日本語の歌できちっと歌つくりをすれば、逆に外国語の歌でも同じ事をしなければ歌えないことが分かるもの。
やはり国語の歌は原点だと思う。

たかはしさん

発声の声は相変わらずの良い声で調子が良かった。
中低音はもう少し厚みのある声が出るようになるのではないかな、と思った。
無理がない、といえば無理がないが、もう少し声をしっかり厚みを付ける意識があると、その分高音の出し方にも違いが出てくるかもしれないと思った。
ただ、今日は特に何もやらなかった。

曲が決まっていないので、曲選びと譜読み。
パーセルを持ってきた。

I attempt love’s scickness
良く訳してないので分からないが、舞曲の軽い優雅なテンポ感と言葉のエスプリを良く生かして欲しい。

Hark ! how all things
こちらはひたすら付点のリズム感が延々と続くリズム感のあるメリスマだ。
長いフレーズなのでブレスポイントを確実に。

Farest isleは高い方のキーで歌う。
こちらは平易な旋律だが、テンポが流れないように優雅な雰囲気が大切。
ピアノの和音に音程が引きずられないように。

彼女らしい女性的な柔らかさ優しさの横溢した響きが垣間見られて非常に好ましいパーセルになりそうである。
英語は分かる人なので、充分に意味を調べて旋律との関係を見極めて欲しい。
言葉のニュアンスが旋律の扱いにはっきり出ると、非常に面白いしエスプリの効いた音楽になるだろう。

後は譜読みである。
確実に読んで欲しい。
ピアノの和音に引きずられそうなところは、和音を叩いて声と合わせて確実に。
また、特にリズムを読むことをしっかりやってから、音程を取って歌うようにした方が良いだろう。

まなべさん

発声は一通り声を温めて、早速本番のラヴェル「ギリシャ民謡」を聞かせてもらった。
1曲目「起きなさいぼくの可愛い人よ」
声が妙に鼻に響く声だった。
テノールらしいといえばらしいがやや癖が強い。
この曲はもう少し喉の開いた息の交じりのある声が望ましい。
その方がフランス語には相応しい、ともいえる。
声のふんわり感が必要なのだ。
その上で最後の盛り上がりは男らしく堂々と歌い終わると良いだろう。
ピアノは弱拍を大切にしたリズム感を。

2曲目「向こうの教会の近くに」
こちらはテンポをじっくり落ち着いて。
軽く流れないことが大切。
16部音符や、3連符が流れてしまい勝ち。
その上で前半はモルトレガートを大切に。
後半は、声に胸の響きをくわえて少しずつ重くすると、この曲の持っている実は重いテーマが良く出てくる。
最後のtouse les plus braveを大切に、Ritで締めくくって欲しい。

3曲目「何て色男!」こちらは田舎の色男。
かっこつけてるが、実は傍目には泥臭くてもっさり。
それを表すためには、ピアノの伴奏も重く2拍子を刻んで欲しい。
伴奏がないところも、リズムを大切に流れないように。
最後のpistolets et sable aiguをritして次のEt c’est toi que j’aimeを柔らかく夢見るように。
このきっかけを与えるピアノの修飾のある単打音は、そのタイミングと弾き方がとても大切である。

4曲目「ああ、我が魂の喜び」
追分節のようなフレーズ。
そういう意味でも2曲目を敷衍したようなスタイル。
同様に、テンポが軽くならないように、朗々と民謡を歌うイメージを大切に。
こちらはしっかりと重いテンポがある上で、テンポ感を前に出さない滑らかな朗唱が大切になる。
修飾のあるところは、まさにコブシなので、その扱いも生硬くならないように、充分練習して欲しい。
最後のHelas tous nos pauvre coeur soupirはブレスが入っても良いから、急がないでしみじみとゆっくりと終わって欲しい。

5曲目「全く楽しく!」
こちらも「なんて色男」を敷衍した、ギリシャ風アジア的なダンスである。
みなが思わず手拍子をして、一緒に踊り出したくなるテンポがまずとても大切。
ピアノの前奏でそれを完璧に出して欲しい。タンタタタンタンの終わりのタンタンが軽くなってしまうと、いけない。
要するに1,2の弱拍が弱くなると、この踊り出したくなる重さがなくなってしまうのだる。
泥臭いバルカン風ダンスである。

後半のTraralaの件はLの発音をしつこく。
そのことで、ラララのリズム感楽しさを良く表すように。

みねむらさん

今日は前半どうも調子が出なかった。
身体がまるで使えていないし、言葉を読み込む力も欠けていた。
何か集中力に欠ける要素があったのだろうか?

身体に力がみなぎっているはずなのに、それがストレートに歌声に繋がってこない所である。
単に発声、ということだけでくくれない要素もあるかもしれない。

もっと図々しく厚かましく、大げさに、自己主張を強く、という風に自分の中身をさらけ出す勇気を持って欲しい。
それだけでも声は自然に出るし、言葉を歌う場所にも力がみなぎってくるはずである。
要するにもっとアドレナリンを噴出させて欲しい。
自分に自信を持つのは、自分がその歌を選び、良いと思い、歌いたいと思った自分の心にである。
それが結果的にどういうものであるか?というところまで内省的に考える段階ではないだろうし、その必要はないのである。

レッスン後半になると、それも出てきてどうにか帳尻が合ったので好かった。
アーンはどうにも難しいので止めにして、プーランクMetamorphose2曲目のPortraitをやることにした。
それから、マスネのSonnetを。
これは実に興味深い面白いそして美しい曲である。
トスティとヴェルディと足してフランスのワインでカクテルを作るとこんな曲、という雰囲気。笑
イタリアの影響が強く出ているのだが、その語り口はどこをどう切ってもフランスのそれである。
ちょっとぐれているけども、実は格調が高い。
そんなところは、もちろんアーンのお師匠さんの面目躍如たるものがあるが、他のフランスの作家達にも伝統的に受け継がれている。
良いなと思う。やっぱりぼくはフランスの作家が好きだなと思う瞬間である。

今日は私も一緒に所々歌いながら、発音と発声の一致したしっかりした歌い方を出してもらった。
良く発音することで、身体が良く反応してくれるのを自然に待ちたい。

後はプーランクの「カルメル派修道女の対話」から修道会司祭のアリアをやってもらうことにした。
本来はテノールだが、彼女が歌うとその声がはまる可能性がある、と想像した。
合唱もあるし、実現は難しいがやるだけやってみたい。
期待している。